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低迷する経済環境の中で、ビジネスの成長を目指して奮闘を続ける中堅企業の方々を応援するため、IBMでは、各界のオピニオン・リーダーの方々に取材した経営に役立つ情報を、「ガンバレ中堅企業 応援コラム」として定期的に提供させていただきます。
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今回は、環境に配慮した社会や企業活動への関心が高まる中で、環境への取り組みを進めながら経営を強化する「環境経営」の考え方や成功手法について、「カーボン・オフセット」※1のリーディング・カンパニーであるジーコンシャス株式会社の代表取締役で環境コンサルタントとして著名な井手敏和氏に、その要点を伺いました。
環境への取り組みをビジネスの好機としてとらえる
地球環境問題への関心の高まりを背景に、今、社会的責任や貢献といった面から環境経営への取り組みを進める大企業が増えています。一方、中堅企業では「自社には関係ない」、「取り組みたくてもそんな余裕はない」と考える経営者も多いようです。確かに厳しいコスト削減を図りながら、懸命にビジネスを展開している中堅企業にとって、費用と労力を掛けて環境経営に取り組むことは決してやさしいことではありません。したがって、中堅企業の環境経営には、発想の転換と工夫が必要になってきます。
環境を考えない企業は10年後に生き残れないと言われ、そういう時代だからこそ、一歩踏み込んだ環境対応が必要になるのです。たとえば全社的に環境意識を高め、環境関係のISO認証を取得することで差別化を図り競争力を高め、収益につなげる。変化する市場やお客様を見つめ、製品やサービスの対応力を高める。環境への取り組みを負担と考えず、逆に好機ととらえ、「儲かる環境経営」を目指すのです。環境への取り組みを収益アップやビジョンと直結させて考えることこそが、中堅企業が環境経営に軸足を移す、1つのきっかけになると思います。
経営者に求められる環境経営の考え方と姿勢
中堅企業では経営者の考え方が直接経営に反映されることが多いと思います。そこで経営者層の方々がどのような環境経営への考え方やビジョンを持つかが重要になります。
東京都では国に先駆けて温暖化ガスの 「キャップ・アンド・トレード」※2制度を2010年4月からスタートさせ、企業の環境への取り組みがいよいよ本格化してきました。自社の「カーボン・フットプリント」※3の数値を理解した上での対策、「フェアトレード」※4や「グリーン調達」※5といった具体的な手法の導入も必要になってきます。また、商品価格の安さだけでなく、付加価値を理解、支持してもらえるお客様との関係を強化する戦略なども必要になってくると考えられます。
環境経営は企業活動にプラスになるという判断ができるかどうか、あるいは環境問題に対応しなければ将来的に失うものが大きいという想像力が働くかどうかも、今、経営者に求められている資質だと思います。
自社のCO2削減分を売却することも可能
環境への取り組みは経営にとって、その対応しだいでピンチにもチャンスにもなりますが、中堅企業にとっては、大きなビジネス機会が訪れていると考えられます。それは、日本における温室効果ガス削減への取り組みが契機となっています。日本は京都議定書の第一実行期間である2012年までに、温室効果ガス排出量の1990年比の6%削減を目標とすることを世界に表明しました。しかし、現状は遅れ気味で、その達成には、中堅企業の取り組みが鍵を握っていると言われています。
大企業のCO2削減は、先進的な省エネ設備等の導入などにより、これ以上は「乾いたゾウキン」を絞るようなものだと言われていますが、中堅企業には削減余地があると考えられています。その余地を生かそうというのが「国内クレジット制度 (国内排出削減量認証制度) 」です。これは大企業が中堅企業のCO2削減を支援することで、その削減分を自社の削減量に算入できるシステムです。中堅企業にとってCO2削減に取り組むメリットは、省エネ化によるコスト削減効果が挙げられますが、この「国内クレジット制度」を利用することで、さらに削減したCO2を大企業に売ることができ、設備投資の早期回収などが可能になってきます。環境対策に取り組みたくてもコスト負担が足かせになっている中堅企業が多いことを考えると、これは積極的に利用していただきたい制度だと思います。
新しい制度への取り組みは、早い方が注目を集める
私の会社がカーボン・オフセット・プロバイダー※6としての事業を始めたのは、京都議定書の第一実行期間に入った時期とほぼ重なります。この2007年から2008年頃には環境サミットと呼ばれた洞爺湖サミットの開催も控え、さまざまな分野で国内初とか業界初としてカーボン・オフセットに取り組みたいという企業が多く現れました。環境への関心が高まったこの期を逃さずに話題を集め、支持を得ようとする狙いもあったかと思います。翌年には、追従する競合企業が次々とカーボン・オフセットの取り組みを始めるようになりました。どの業界においても、ある先駆的な企業が新しいビジネス・モデルの構築や市場の開拓に成功すると、それを追う企業が次々に現れて市場が活性化していくというステップがあります。パイオニアは注目されますが、しかし2番手3番手には工夫が必要になります。現在の「国内クレジット制度」について思うのは、カーボン・オフセットの黎明期と似たような状況であり、導入が早いほど注目度も増し、メリットは大きくなるだろうということです。
※1「カーボン・オフセット」: 日常生活や経済活動によって排出される二酸化炭素などの温室効果ガスを、植林や森林保護、クリーン・エネルギーの開発などを進めることで相殺しようという考え方や活動。
※2「キャップ・アンド・トレード」:温室効果ガスの排出権取引における取引手法の1つ。政府や自治体などが企業に対してCO2排出量の上限 (キャップ) を割り当て、排出枠の過不足分を事業所間で取引 (トレード) することを認める仕組み。
※3「カーボン・フットプリント」:温室効果ガスの排出量を「見える化」する仕組み、および制度。日本では経済産業省が、商品やサービスのライフ・サイクル全体における温室効果ガス排出量をCO2量に換算して算定し、マークを使ってわかりやすく表示する「カーボン・フットプリント制度」の取り組みを進めている。
※4「フェアトレード」:発展途上国の生産者に公正な賃金や労働条件を保証した価格で商品を購入することで、発展途上国の自立や環境保全を支援する国際協力の形態。
※5「グリーン調達」: 事業活動に必要な資材やサービスなどを、サプライヤーから調達するとき、環境への負担が少ないものから優先的に購入すること。ISO14001の認証を取得した企業から優先して調達することを指すこともある。
※6「カーボン・オフセット・プロバイダー」:カーボン・オフセットの実施を支援・代行する事業者。
