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環境コンサルタント 井手敏和氏が語る 中堅企業の環境経営

環境経営のスムーズな導入と浸透の方法

環境経営に移行していく際にも、最初から社員全員の意識を変えることは難しいものです。社員が内容を理解して行動するためには、経営者が本気で取り組む姿勢が必要です。
私がおすすめしているのは、環境経営を始めるに当たり全社横断的に各部署からリーダーを募り、そのリーダーたちで編成する選任チームをつくることです。そこで経営者が環境経営の目的を伝えると同時に、リーダーたちの意見をくみ上げながら、目指す環境経営の在り方を一緒に考えていきます。そうすることで、リーダーたちは経営者からの指示(トップダウン)ではなく、当事者意識を持った自発的な行動として、共有目的に向かって積極的に動き始めていくことができます。500人規模の企業なら10人のリーダーがいれば、環境経営の考え方や、意識的な行動を全社的に広げていくことができると思います。
たとえば、グリーンITという取り組みがありますが、環境経営に取り掛かる上で消費電力の大きいITの見直しはわかりやすいし効果的です。社内のIT機器のCO2排出量を一度棚卸して、省エネのためにムダなプリントをしない活動を展開したり、サーバーやデータ・センターの移行計画を立てることをおすすめします。
また環境経営を全社員に浸透させるためにインセンティブも有効です。それは金銭である必要はなく、部門ごとの表彰制度でもいいでしょう。また自転車通勤者に手当を出すといった直接的なエコ活動への支援も社員の環境意識を向上、定着させていくことに役立つと思います。

大切なのは共感でつながる顧客関係

最近では、環境への独自な取り組みをしている企業の求人に、多くの応募があるという現象が起きており、グリーンでクールな企業で仕事をしたいという傾向が強くなっているのかと思います。それはまた、顧客との関係においても同様のことが言えるようです。グリーンな(環境にやさしい)企業の商品の支持率は上がっています。世界各国でグリーン・コンシューマー(環境にやさしい消費者)が増えているように、日本でもその市場は成長し、現在約30兆円規模、10年後には倍になると予想されています。グリーン・コンシューマーはソーラー・パネルを設置したり、省エネ型の家電を購入したり、ハイブリッド・カーなどを求める傾向にあります。
消費者が商品を購入することは、その商品を支持する一種の投票だと考えることもできます。1人の1票は小さくても、多くの人から支持されれば、その商品は売れる商品として成長します。企業側からの視点で見れば、多くの人に選ばれるためにどうすれば良いか、ということになりますが、それは企業の一方的な情報発信ではなく、消費者に「共感」される商品を提供し、「共感」される企業へと成長していくことだと思います。これは会社の規模を問わず大切なことで、広報予算がなければゲリラ・マーケティングでもいいし、口コミでも可能だと思います。自分たちが大切にしている思いや、環境に配慮した商品・サービスを工夫しながら上手に伝えて、「共感」を得、応援してもらえる企業になることがポイントです。

お客様から愛され続けることが、成功のポイント 

そうしたグリーン・コンシューマーに支持されている例を紹介しましょう。埼玉県にある住宅リフォーム会社の株式会社OKUTA(オクタ)は、環境問題の権威レスター・ブラウン博士の考えに共鳴し、1990年代後半に「脱塩ビ宣言」をして自然素材の採用と省エネをテーマにしたリフォームに事業を転換しました。いわゆるロハス・リフォームを展開したわけですが、以前と比べ現在は客単価が10倍になったと聞いています。またアロマ・テラピーの老舗で全国に店舗展開する株式会社生活の木という企業は、年間30万kwhのグリーン電力を使用したり、ガーナ、チュニジア、スリランカなど世界各国、地域とのコミュニティートレードを積極的に進めて支持を集めています。
ほかにも多くの企業が環境経営で成功を収めていますが、中堅企業で環境経営を収益につなげているところが数多くあります。グリーン・コンシューマーの支持は「共感」から生まれるもので、価格で判断されるものではありません。良質な製品、サービスであり続ける限り、お客様はいつまでもその商品や企業を愛し続けてくれるものです。これは事業分野、規模にかかわらず言えることだと思います。

環境への関心の高まりが、ビジネスにチャンスをもたらす

グリーン・コンシューマーに限らず、環境負荷の少ない商品やサービスが支持される傾向はあらゆる場面で見られるようになりました。カーボン・オフセット商品は現在900種類以上登場しています。たとえばIT関連では、あるデータ・センターでは、サーバーのCO2排出量をオフセットしたカーボン・ゼロ・サーバーを活用しています。携帯電話用のダウンロード・コンテンツにカーボン・オフセットを付加した例もあります。日本ネクタイ組合連合会では、今年の父の日のプレゼント用のネクタイにカーボン・オフセットを付けた、「おしゃれなエコ・パパ」をテーマにしたキャンペーンを展開するそうです。
地球温暖化の大きな要因であるCO2排出やそのオフセットは、ここ2年ほどで社会的に認知され着実に取り組みが進んできましたが、今後、個別の商品やサービスだけでなく、インターネットや電子マネー、携帯電話、広告など既存の仕組みの中でカーボン・オフセットやカーボン・フットプリントが広まり「見える化」が進んでいくことが期待されます。そして、そこにはまた、さまざまな工夫の仕方があるでしょうし、多くの中堅企業にビジネスのチャンスが訪れるのではないかと思っています。


井手敏和氏の写真

井手敏和氏プロフィール

ジーコンシャス株式会社代表取締役 カーボンオフセット協会会長
ロハス・ビジネス・アライアンス(LBA)共同代表 オルタナ取締役
環境コンサルタント、環境/LOHASプロデューサー

1987年に渡米、シリコンバレーで音楽制作ソフトを開発、世界的大ヒットとなる。日本に帰国後は、“喜多郎”など音楽系、自然映像など映像系の「癒し系コンテンツ」事業にかかわる。
2002年9月には、喜多郎の北京公演に、中国で初めての「カーボン・ニュートラル」化(二酸化炭素排出量をオフセットし植林)を実施。
2007年、環境、健康配慮型企業が集結した「ロハス・ビジネス・アライアンス」を発足。同年、カーボン・オフセットや、健康と環境配慮の意識の高い生活者(グリーン・コンシューマー)層を顧客とする企業のマーケティング活動支援を行うジーコンシャス株式会社設立。
グローバルかつ俯瞰的、また枠を超えた新しい視点でグリーン・ビジネス、グリーンIT、グリーン経営、グリーン・マーケティングなどを解説し、多くの講演を行っている。
主な著書:「いきいきロハスライフ」、「いきいきロハスライフのすごし方」など。

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