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日本経済の成長とイノベーション

「企業の成長を支える事例研究フォーラム」基調講演抄録(2007年11月2日開催) 日本アイ・ビー・エム株式会社 最高顧問 北城 恪太郎
 

グローバルな競争環境の中にある日本経済の課題を整理し、それを乗り越え持続可能な成長を実現するイノベーションの重要性についてお話しします。また、イノベーションを実現するために情報通信技術(ICT)をどう活用するか、そして、そのICT活用を通して企業経営に貢献する今後のIT部門に寄せられる期待についてもお話しさせていただきます。

日本経済の課題と国際競争力

人口減少社会の到来
日本の出生率は1.32ときわめて低く、急速な人口減少が問題になっています。現在の日本の人口は約1億2700万人ですが、2100年頃には、現在の約半分の6400万人、あるいは4700万人くらいまで減少すると予測されています。 人口が半分になると、過疎地では過疎化がさらに進み、国内の需要だけに依存する産業や企業は成長ができなくなります。

巨額な国と地方の長期債務残高
また、日本は773兆円という巨額の財政赤字を抱えています。そして、この借金を返す私たちの子供や孫の世代の人口が、私たちよりも少ないということが問題になります。今も私たちは一生懸命働いて借金や利息を払う努力をしていますが、しかしこれから30年後、50年後を考えると、より少ない人口で借金を返していかなければならないということになるわけです。

低い労働生産性
少ない人口で、豊かな暮らしを維持し、借金を返していくためには、労働生産性を上げて競争力を高めなければなりませんが、日本の労働生産性は残念ながら高いものではありません。製造業においてはアメリカと同程度の生産性の高さがあるのですが、第3次産業といわれるサービス産業の労働生産性が低いのです。日本の労働人口の6割は、いまサービス産業で働いていますので、流通、運輸、金融、レジャー/観光など人々の生活を豊かにするこのサービス産業の労働生産性が低いということは大きな問題となります。

国際競争力の将来予測
2050年までに、アメリカ、日本、ドイツ、中国、インド各国の経済規模がどのように発展していくかということを予測した資料によれば、日本やドイツの経済規模は年率1~2%程度であまり大きく伸びないと予測されています。日本もドイツも人口が増えず、生産性の向上も1~2%といった状況ですので、2050年まで見てもGDPの規模が倍になるかどうかという程度の伸びにとどまっています。

アメリカは先進国の中では唯一伸びることが予測されています。アメリカは出生率が2%と高く、その上移民などもあり年率1%で人口が増えています。また、生産性も国全体として年率2%くらい向上しています。これは、生産性の低い産業から高い産業へと働く人が移動するということが影響しています。人々はIT、ナノ、バイオなどの伸びる産業、生産性の高い、競争力のある産業に移動して、衰退産業から人が減っていくという労働力の移動があり、国全体としては生産性が上がるということになります。

中国、インドの台頭
しかし、なんといっても伸びる可能性があるのは中国とインドです。中国の人口13億、インド11億の人々が豊かな暮らしを求めて必死に努力していることが非常に大きな力になっています。このままいくと2010年を待たずに、中国の経済規模が日本を上回るかもしれないと言われ、そして2040年には、アメリカをも上回るかもしれないと言われています。インドも2030年には日本を上回るだろうと言われています。もちろん両国が問題を抱えていないわけではありません。中国では、たとえば温暖化ガスの排出などの環境問題、エネルギー、水資源、不良債権、少子高齢化(一人っ子政策)による社会保障、通貨「元」の切り上げ、汚職などの問題が成長を妨げるのではないかとする見方もあります。しかし、人々が豊かな生活を求めて必死に努力をするということが大きな力になり、中国もインドもそれぞれ問題を抱えながらも成長を続けて行くだろうと言われています。

私たち日本人としては、そうした国と同じ事を行っていたのでは、今の豊かな暮らしを維持できなくなってしまいますので、そうした国々にできないような新たなイノベーションに挑戦していかなければならないのです。

パルミサーノ・レポート
アメリカでも同様の問題認識がなされています。アメリカの競争力をどのように維持したら良いのかということで、2004年の12月に「イノベート・アメリカ」という提言が出されました。そこでは、『イノベーションこそアメリカの競争力を維持するための原動力である』と言っています。イノベーションを実現するために人材を育てなければならない。投資をしなければならない。インフラを整備しなければならない。といった提言が出され、アメリカの競争力強化の政策がとられました。 このレポートは、学者と経済人が一緒になってまとめたのですが、経済人側の代表が米国IBMの会長であるパルミサーノであるため、「パルミサーノ・レポート」と呼ばれています。

このようにアメリカもイノベーションに取り組もうとしていますが、ヨーロッパでもイノベーションに取り組み、アジアの各国もイノベーションで成長をさせたいと考えています。このように各国がいま、イノベーションに向かって競争をしている状況なのです。

Innovate America「パルミサーノ・レポート」の図

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