設計・加工から各種試験までの一貫生産体制で成長

代表取締役社長兼CEO
加治康正氏

常務執行役員
製造技術担当ゼネラルマネージャー
小川竜一氏
上空一万メートルや宇宙空間を飛行するという、過酷な条件のなか、絶対の高品質と安全性を求められる航空・宇宙産業。栃木県宇都宮にある加治金属工業様は、そんな航空・宇宙産業の中で信頼性を勝ち得ている航空機部品メーカーです。日本では数少ない、米ボーイング社の認定工場となり、その技術力は国内外で高い評価を得ています。
加工なら加工だけ、メッキならメッキだけといった中堅の部品メーカーが多いなか、設計・機械加工・表面処理・組立・各種試験までの一貫生産体制をとっているのが同社の特徴。技術ノウハウを自社内に確立し、信頼性の高い完成品をスピーディーに顧客企業に届けることができています。
今回は、加治金属工業株式会社代表取締役社長兼CEO 加治康正氏と、常務執行役員 製造技術担当ゼネラルマネージャー 小川竜一氏に、同社成長の背景についてうかがいました。
加治金属工業株式会社
1932年、電気メッキの専門メーカーとして設立された加治金属工業。その後、機械精密加工や治工具の設計製作を開始し、現在では治具の設計から、航空機部品の機械加工・表面処理・組立までの一貫生産体制を確立している。防衛庁取引資格の承認を得ただけでなく、89年には国内では数少ない米ボーイング社の特殊行程認定を取得。高品質・短納期を実現する技術力で、航空・宇宙産業だけでなく、他業種開発にも進出の計画あり。

これまでの設計では、複雑な形状の部品は製造できない
「航空機メーカーの当社への要求はますます厳しくなっています。コスト面だけでなく、より高度な技術力が求められている。部品の形状はより複雑になっており、これまでと同じ設計方法では、そうした要求には応えられません」
と語る加治社長。
これまで複数に分かれていた部品が組立て不要な1つの部品になれば、強度が高まると同時に、接着面がなくなることで軽量化も実現します。さらに、組立てのコストと手間が少なくなり、納期も短縮。航空機メーカーにとっては、いいことづくめですが、部品メーカーである同社は、一層の高い技術力を追い求めなくてはなりません。同社が手がける航空機部品は、砂型や金型を使った鋳造やダイキャストによる量産ではなく、アルミニウム合金のブロック材から部品1点1点を削り出して製造するという手間のかかるもの。さらに、部品の種類とロットが増大し、部品1つあたりにかけられる製造時間も少なくなっています。
CATIA V5で部品加工のシミュレーションがスムーズに
同社の製品設計及び製造に欠かせないのがCADシステム。顧客企業である航空機メーカーから提案される3Dモデルの部品をCADシステムで具現化していきます。
2003年12月、同社はこれまで使用していた3次元CAD/CAMシステムのCATIA V4をバージョンアップし、CATIA V5に移行しました。複雑な曲線の設計を必要とする航空産業用に開発され、航空機、自動車、電機、機械組み立てをはじめ、多くの製造業で利用されているCATIA V5。技術力アップの裏にはCATIA V5の活用がありました。
ボーイング社など、同社の顧客企業がCATIA V5を導入しており、データ連携がスムーズになるというのが導入の大きな理由ですが、その他にも様々な狙いがあります。同社の製造技術を統括する小川氏は以下のように語ります。
「V5になってから、使い勝手がずっとよくなりましたね。例えば、治具と部品をどのように配置するかといったシミュレーションがスムーズにできるようになりました。V4でも、部品の配置イメージはできたのですが、動作が重たく、思うようにすいすい配置というわけにはいきませんでした。紙に書いてイメージしてから、CADに取り込んでいたので、時間がかかっていた。それがすべてCADの中でできるようになりました。高速・高精度な5軸NC加工も実現しています」
マニュアル車のCATIAで柔軟性・拡張性がアップ
「CATIA以外のCAD/CAM製品のNCプログラム作成は、車でいえばオートマ車」と小川氏は言い切ります。同社が手がける加工は、アルミ合金のブロック材の大部分を切削除去し、薄肉・軽量・高剛性の部品を完成させるというもの。
「こうした高度で繊細な部品は、システムに任せていてはできません。オートマ車なら自動である程度まではできるが、自社のこだわりやテクニックは反映できない。それに対してCATIAは、いわばマニュアル車。プログラマーには高いスキルが要求されますが、1つ1つのパーツに使う人の意志が込められ、工夫すればするほど加工機の能力を引き出すことができます」(小川氏)
こうしたCATIAの柔軟性や拡張性が、複雑化が進む部品構造や加工形状に思い通りに対応できるといいます。スピードの面ではどうでしょうか。
「従来は1つの面を削るのに1パス1パスをオペレーションに組み込まなければなりませんでした。V5だと、1つのオペレーションの中に10回削るという指令を組み込むことができます。プログラミングの時間がぐっと短くなりましたね」(小川氏)
また、設計図面自体も見やすくわかりやすくなったことで、他のプログラマーとの共有や引継ぎもスムーズにできるようになったといいます。
他の技術製品分野にも進出計画
航空機業界では絶対の信頼を持つ加治金属工業。今後はその部品製造ノウハウ、少量多品種生産と設計から各種試験までができる一貫生産体制を生かし、他の技術製品分野にも進出したいとのこと。
今年7月に代表取締役社長に就任した加治社長は、以下のように語ります。
「これまでは安定していた航空機業界ですが、今後どうなるかはわかりません。近い将来、半導体関連製品やロボット、高速鉄道など、他の分野にも挑戦したいですね。部品だけでなく、当社独自の最終製品も手がけたい。当社が誇る技術力を磨きながら、変革とスピードに対応できる企業でありたいですね」
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