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IT経営百選に学ぶ

第4回:ポイントその3 - IT経営で経営の自立化を図る

ITで大手の下請けから脱却する

タブの始まり

 

『ITで受身のビジネスから脱却を図り、積極的に市場や顧客と関わり経営の自立化を図った企業』を、「IT経営百選」委員が紹介します。

これまでの顧客との取引を一切絶った、試作金型メーカー

まず、委員長の上村孝樹氏(ジャーナリスト/金沢工業大学大学院客員教授/事業創造大学院大学客員教授)が挙げるのは、埼玉県吉川市に実質的な本社がある(登記上は東京都)株式会社フルイチです。

上村 孝樹 氏の写真 「フルイチは試作金型の製作を手がける技術力の高い小企業です。10年ほど前までは限られた大手メーカーからの下請け受注を事業の中心にしていました。ところが、発注コストの大幅な低下を一方的に飲まされ続け、どんなに高度な製品を作っても利益を出すのは不可能という状況に。当然経営は行き詰まり、倒産寸前なのに、発注元から『社員を遊ばせているよりマシだろう』とさらにコストダウンを求められ、廃業は避けられないという事態に陥りました」

そこで同社の古市社長は思い切り、普通では考えられない決断をしました。
「『今日からいままでの顧客とは一切取引をしない』と社内で宣言したのです。これまで通りにやっていたら未来はないとして、自分たちの力で自分たちの技術力を買ってくれる顧客を新規に探すことにしました。そして、社長の息子さんが新卒で入社してIT担当となってWebサイトを立ち上げ、インターネットを通じて新規の顧客を開拓することに挑んだのです」

ネットで技術力を発信して、高付加価値の新規受注を得る

「これまでの顧客との取引をすべて断ったのですから、受注が入るまで売上はゼロです。社長は自分の給料をすべて返上、社員にも『軌道に乗るまで給料を半分にさせてほしい。その代わり、絶対に復活していままで以上の給料を支払うから』と説明しました。結果、半年間で社員が半分に減ってしまったのですが、古市社長は諦めませんでした」と上村氏は続けます。

「もともと技術力のある会社でしたから、ネットを通じてその技術力を丁寧に情報発信し、難度の高い案件にも緊急対応できるとアピールしました。さらにフルイチの社長の凄いところは、過去と同じ轍は踏むまいと、顧客に対して『3つの約束』を訴えたことです」
その3つの約束とは、「合い見積もりには応じない」「打ち合わせにこちらからは出向かず、要件のやり取りはインターネットと電話とFAXで行う」「緊急の案件には応じる。その分、相応の単価をいただく」というものです。従来の下請けの受身事業では考え難い要求ですが、社長はあえて貫きました。

「しかし、そうした条件でも、受注が次々と舞い込んできました。スピードと品質を要求される試作金型において、大手メーカーが最後に頼る『駆け込み寺』的な存在として、同社の評判は徐々に広がっていったのです」
現在は、売上が大きく回復したことはもちろん、利益が出る会社となりました。特定の大企業からの下請け受注に頼るのではなく、自力で開拓した顧客から頼られる対等なパートナーとしてのポジションを確立し、こだわりの付加価値経営を続けています。



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