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M&A戦略と企業価値向上

日本のM&A業界を牽引する佐山展生氏ご講演

成長のチャンスは企業価値を知ることから
 

日本のM&A業界の第一人者、佐山 展生 氏が語る

ここに掲載したのは、2006年5月30日開催「IBM 中堅企業イノベーション・フォーラム 2006」でのGCA株式会社 代表取締役・佐山 展生 氏の講演です。ニュース番組のコメンテーターとしてもおなじみ、日本のM&Aアドバイザーの第一人者として活躍する佐山氏に「M&A戦略と企業価値向上」について、お話しいただきました。

顔写真 佐山 展生(さやま・のぶお)
一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授
GCA株式会社 代表取締役 パートナー

M&Aアドバイザーとして、さくら銀行(現・三井住友銀行)、ユニゾン・キャピタル等で数々のM&A実績を残すほか、一橋大学大学院教授を兼務(現任)。東工大博士。

GCA株式会社
「M&Aアドバイザリーファームは、クライアントのためにあるべき」
100%クライアントへのサービスに徹するため、独立資本でかつ、系列の制約なしに純粋にM&Aアドバイザリーサービスのみを業務として提供する。これがGCAの経営理念です。本物のM&Aサービスを追及するために、2005年11月GCAクラブを設立、M&Aを深く理解したいと考える方々が集い、知識を広く習得する場を提供しております。

会社の経済的所有者は株主だが、価値共有者を忘れるな

ライブドアのニッポン放送株取得の問題以来、“企業価値”に注目が集まっています。M&Aの世界では、株式の価値=企業価値となりますが、株主・従業員・取引先・債権者・顧客など、立場によって企業価値の意味は変化します。
会社は誰のものなのか。会社の経済的所有権は株主にありますが、会社の価値は経営者、従業員、顧客、地域などが共有しています。従業員、取引先、債権者などの利害関係者は、その会社が存在することによって恩恵を受けることができる。株主は会社の恩恵を受けている多くの人がいることを忘れてはいけません。会社の価値を高めようとする経営陣、価値を高めるために投資する株主がいてこそ、会社の価値は長期的に高めることができるのです。
会社のことを思う株主、経営者が増えることは、日本経済全体を活性化させる。投資ファンドは、一円でも高く投資家に儲けさせるのを第一にするのではなく、投資した先の会社をよくすることを最重要視すべきです。大株主になったら、その会社の社会的責任も負うべきだと思います。

純資産=企業価値ではない

PBR(株価純資産倍率)で企業価値を判断する人がいますが、PBR=1ならみな価値は同じなのかというとそうではない。余剰資金のあるなしでも違うし、可能性でも大きく変わってきます。企業が将来どれだけキャッシュを生むかがポイントです。企業価値の評価は、誰がその企業のオーナーになるかでも異なる。オーナーの経営力・実行力によって、生み出すキャッシュの額が変わるのだから当然です。生み出すキャッシュの額と企業価値、そのバランスをどこで取るかでしょう。
M&Aの世界では、1990年代末まで、バランスシート(貸借対照表)の純資産で企業価値を評価するのが一般的でした。純資産が30億円なら、清算すれば30億円の価値になるとされていた。資産100億円で負債70億円なら、その差額の30億円が企業価値というわけです。利益を生んだら営業権を足しますが、単純に経常利益の3~5年分を足すだけ。そこには将来の可能性はまったく反映されません。これでは正しい企業価値の評価はできない。そこで、最近使用されるのが以下のような評価方法です。

DCF(Discounted Cash Flow)…
将来のキャッシュフロー(予測)から現在価値を算出する方法。ただし、割引率や将来の営業利益率などの前提条件をセットにしなくては予測や計算に時間がかかるので、初期的なM&Aの評価には使えません。

EBIT(Earning Before Interest & Tax)…
金利・税金差し引き前の営業利益。

EBITDA(EBIT Depreciation & Amortization)倍率方式…
営業利益(EBIT)に減価償却費を足したEBITDAを何倍かにするという方式です。業種ごとに収益モデルの特徴があり倍率は異なりますが、簡単に企業価値を計る場合は、この倍率を5年分つまり5倍とします。もちろん利益の増減はありますが、5倍にするとだいたいの事業価値がみえてきます。

企業が保有している純資産は、事業価値ではありません。例えば、10億円の設備投資をしても、生産した製品が売れないのではその価値はない。時価総額も、株式の価値や本来の企業の価値をまったくあらわしていないと思います。

コラム1:健全な投資とは
阪神電気鉄道と経営統合した阪急ホールディングスの財務アドバイザーを担当する佐山氏。講演のあった5月30日は、村上ファンドに阪神株の取得交渉をしている最中ということもあり、たびたび村上世彰氏の名前があげられた。
「一円でも多く投資家に返すのが使命と公言している村上氏は、投資家からみると非常にありがたい存在でしょう。株主の存在を経営者に意識させたことでは、村上ファンドの存在は評価に値する」
と言いながら、村上氏の強引なやり方に釘をさす。
「一番大切なのは投資した会社がよくなること。投資家が儲けることより、そちらのほうが大切なのです。会社がよくなれば株価が上がる。そして、投資家はキャピタルゲインを得る。それが健全な投資です。会社のことを思う株主、経営者が増えることが、日本経済全体を活性化させる。村上氏はとにかく株式を高く売ることしか考えてない。一円でも高く投資家に儲けさせたいという気持ちはわかるが、売った先の会社がどんなところであっても知らないというのは無責任。大株主になったら、その会社の社会的責任も負うべきだと思います」



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