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企業変革の最後の砦 “人”を生かす経営のこつ

-Express Advantage-

WEB連載 第1回

成果主義は成功したか?

司会:

まずは、日本企業の成果主義への移行は成功したか否かということについてお伺いいたします。


有田氏
(以下有):

ODSは独立系のコンサルタント会社で、社員が唯一の資産ですから、どのような「人事」を行うかは、設立当初から重要な経営課題でした。

徹底した成果主義ですとか、昨今流行りのコンピテンシーですとか、ODSでは30年も前から同じようなことをやってたんですね。例えば、今注目されている360度評価にしても、社長以下全社員の給与を公開にして、何日も全社の業務を停止しながらみんなで評価をし合うなど、本当にドラスティックな試行錯誤を繰り返してきました。

それで、それぞれの良いところもわかったんですが、問題点もはっきりわかってきました。今の成果主義のブームについても、ほとんどが目標管理に過度に依存した結果主義人事であり、すぐに挫折する企業があらわれることは10年以上も前からわかっていました。事実、多くの企業の現場をみていてもほとんど成功例がないんですね。


林氏
(以下林):

ほとんどの現場では、成果の評価をするということが、結果の評価だけをして終わっているんじゃないかと危惧しているんです。結果の評価は、たまたまの結果の数字を評価しているにすぎないのです。

成果主義において、プロセスに対する評価も必要であることは周知のことではありますが、その重要性を理解して実際に行っているケースがあまりにも少ないのではないでしょうか。

私の会社は人事パッケージを売っていますが、10年ほど前には、自社の人事管理にどのような評価システムが最適であるか、試行錯誤した時期がありました。

96年ぐらいになると、あちこちの会社が評価制度をはじめましたので、私達はそれを参考にし、いいと思うものを自社に適用しました。

プロセス重視で、プロセスの節目に発生する数値情報、すなわち仕掛情報を数値化し管理することが、成功のヒントとなりました。また、有田さんのお話にも出た360度評価もやってるんですがこれは大変なワークロードがかかります。ワークロードバランスで悩んでいます。


司会:

以前お客様から、成果主義移行へふみきれない理由のひとつに、評価項目や方法の複雑化があるというお話を聞いたことがあります。

また、最近ではプロジェクト型で組織を柔軟に形成したりということがありますので、本当にその人がやっている仕事のすべてを評価できるのか。さらに仕事の内容がランダムに変わりますので、管理職が全てを把握し正しい評価をすることが非常に難しい。

そんななかで中途半端なかたちで成果主義に移行すると、成果を正しくみられない「正しく評価できない結果主義」になってしまって逆効果になるのではないか、と危惧される中堅中小企業のお客様が結構いらっしゃいます。


有:

たとえばODSでもプロジェクト型の組織運営が中心で、ひとりの社員に対してプロジェクト・リーダーとして複数の上司がいるわけです。そのなかでは、それぞれのプロジェクト・リーダーから仕事がアサインされていて大変複雑な構造となっています。

ODSにはマンスリーレポートというのがあって、月に1度「私はこの1ヶ月こんな仕事をしていました」と部門でレビューしてもらいます。そうすると、これはAというプロジェクトリーダーからアサインされたもの、これはBというリーダーからアサインされたもので、マンスリーレポートには、それぞれのプロジェクト・リーダーからの評価情報が入っているわけですね。このプロジェクトのなかのこの仕事は、何点でしたと。

そうすることで複数のプロジェクトに関わっていても、評価がちゃんとできる。もちろん、このようなプロセスだけでなく、年間を通した結果、すなわち利益貢献度も見るようにしてインセンティブに反映させます。

個人の全人的な能力評価をオープンな場で360度からやるとしたらけっこう抵抗感がありますでしょう。
ところが1個1個の仕事について評価するのは意外と受け入れられるんです。「あの仕事はもうちょっとこうしたほうがよかったよね。5点満点でいうと2点だったかな。」という具合に。そのようにしてレビューされた事実情報を、毎月とか四半期といった一定の期間毎に取りまとめて評価する。

私はそういう過程を通して、学習する風土みたいなものが形成され、結果として企業に活力をもたらしていくものだと思うんです。せっかく組織として集まっているんですから毎月のレビューとか四半期ごとのレビューでみんなで影響を与えあっていくことが重要です。

別の言い方をすると、人事にも、B/S(貸借対照表)とP/L(損益計算書)の2つの視点が必要だと思うのです。結果主義というのはP/Lの世界。人件費を投入して、本人が稼いで、稼いだ分から人件費を差し引いたものが会社の利益です。しかし、これだけではマネジメントできない。結果には運・不運もありますし、たまたまいいお客さんの担当になったとか、たまたま予期しない事故が起きちゃったとか、本人がどれだけ努力してもどうにもならないときもあれば、さほど努力しなくても達成できてしまうときもあるわけです。

それに対して、プロセスを通して、本人の実力値を見るのがB/Sだと思います。財務的に表現しますと、人の採用が資本調達。すなわち人的資本の調達です。そして、その人を育成して「XXシステムの開発」という仕事ができるようになれば、その仕事は会社にとっても個人にとっても資産になるんです。つまり人的資本を人的資産に置き換えていくのが育成ですね。そのような人的資産を有効活用する事で、会社に利益をもたらしていきます。人的資産の活用が必ずしも企業業績に直結するわけではないんですが、その関連性を考え続けることこそが経営です。

私は社員ひとりひとりに、自分自身が会社だと思って、自分の資本からどういう資産を開発していくのか、どういう仕事ができるようにならなければいけないのか、それをどうやって売上につなげていくのかを考えなさいと言っています。

これからの人事システムも、単に賃金管理や要員管理を行うだけでなく、このような経営の現場をサポートできるものでなければなりません。


林:

現状の人事システム作りの目的が、単に人事部門の作業効率化向上のためが中心になってしまっている傾向があるのも事実です。 目標管理シートや業績成果の評価等、なんでも人事部門で抱え込む発想はもう時代遅れです。これからの人事管理システムは、現場管理者の日々の仕事効率を高めることにウエイトを置く発想に切り替えていく必要があります。

そうすれば各部門の管理職が中心になって利用するでしょうから、部門間での人事情報管理ができ、企業に必要とされる「社員のキャリア管理」、及び「プロフェショナル人材の育成」を支援する生きたシステムが可能になると考えます。

現場に近いところで日常的に推進することで、はじめてそれぞれの部門やビジネス形態に的確に対応した人事管理が可能になるのではないでしょうか。幸い、今はネットワーク技術の発達で、これらのことが簡単に、経済的に可能になるようになりましたし。


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