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SOAのビジネス効果とビジネスモデル・イノベーション

IBM 中堅企業イノベーション・フォーラム 2007 東京会場(2007年5月29日開催)で行われました、SOAに関する講演内容ダイジェストをお届けいたします。

講演タイトル:SOAのビジネス効果とビジネスモデル・イノベーション

日本アイ・ビー・エム株式会社
グローバル・ビジネス・サービス事業
SOA事業推進 部長 高橋 和子
高橋 和子氏の写真

ビジネスの要求に柔軟に対応できるITとして、SOA(サービス指向アーキテクチャー)が注目されています。最初は主に大規模システムをSOA対応にし、柔軟なITに変えていくことに関心が集まっていました。一方、SOA化することで社内外のシステム間の連携も容易になります。そのため、現在では中堅・中小企業で活用されているパッケージ・アプリケーションとの連携や取引先とのデータや処理の連携にも話題が移ってきています。このセッションではSOAによるソリューションの組み立て、投資対効果の考え方、SOAの始め方など、SOAについて最新の話題をご紹介します。

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業界に変化をもたらすサービス指向アーキテクチャ(SOA)の影響

私が担当しているSOA事業推進は2006年の1月にできた組織で、IBM社内の部門をまたがってSOAをビジネスとして推進していくのが役割です。具体的には、お客様に対してSOAの価値やマーケットの状況を説明し、かつIBMがどういったお手伝いができるかをお話ししています。SOA事業を推進するからには、もちろん社内の方もきちんと製品やサービスを提供できる体制を整えなければいけないということで、SOAのプロフェッショナル教育環境も整備しています。

SOAの価値を一言でいえば、IT部門とビジネス部門が同じ目的に立ってきちんと会話しながら仕事していくことではないかと思います。SOAのそもそもの始まりはテクニカルな視点であり、正式名称はサービス・オリエンテッド・アーキテクチャ(Service Oriented Architecture)です。つまりこれはアーキテクチャの話になります。そのため、SOAに投資をすることはITへの投資であると捉えている方もいらっしゃいますが、実はそうではありません。SOA 投資の核心は、情報技術の購入ではなく、ビジネスの柔軟性への投資なのです。SOAによって、企業はプロセスやビジネスモデルを非常に容易かつ迅速に設計、あるいは設計変更することが可能になります。

さて本日、説明したいのは次の3点です。1点目が「SOAにはビジネスモデルをイノベーションできる可能性があるか」。そもそもなぜビジネスモデルのイノベーションかというところから入りたいと思います。2点目は「SOAにおける投資対効果について」。投資対効果の考え方が難しいことが、SOAが進まない一番の課題という調査結果もありますので、実際はどうなのかというあたりのヒントになればいいなと思います。最後はまとめですが、実際に「SOAをどのように始めていくか」というポイントを、例をふまえてお話しします。

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ビジネスモデル・イノベーションを可能にする柔軟なIT基盤

IBMでは2年に1度、「Global CEO Study」というレポートを発行しております。その中で我々のコンサルタントが世界中のCEO、765人に直接お会いして経営の課題などをうかがいました。その結果、ビジネスモデル・イノベーションはCEOの最優先課題であることが浮き彫りとなりました。

CEOの方々は、イノベーションを実現するにあたり、大事なことを3つ挙げています。まずは、インベンションにあたるところで、「製品、サービス、市場などにおいて、差別化できる製品」が1番目。2番目はオペレーション、つまり経営企画上でコストの無駄を省くこと。この2点については目新しいものではありません。そして3番目、去年の「Global CEO Study」で新たに登場したのが、「ビジネスモデル」です。CEOの方々は、製品サービスのインベンションによる成功よりも、ビジネスモデルが重要だと感じていることがわかります。これについては、業績が上向いている企業はビジネスモデルに注力している割合が多いという結果が裏付けています。

ところが2つ問題があります。ひとつは、画期的なビジネスモデルは急に思いつけるものではないこと。そしてもうひとつは、たとえ思いついてすぐに展開しようとしても、ITがついていかないことです。従来型のガチガチなシステムですと、スピード重視の変更が難しいというのが現状なのです。

ちなみに具体的にどのようなことがビジネスモデルとして考えられているのかといえば、まずは最近急増しているM&Aなどもそのひとつです。また新サービスを提供するための多角的な販路ネットワークや、新規顧客を獲得する業界横断的なサービスもビジネスモデルの変革であると捉えられています。

営業利益が高い企業は
低い企業と比べ、よりビジネスモデル・イノベーションに重点を置いている

企業業績から見た、イノベーションの実現を最も優先する領域(営業利益率の伸び(過去5年間)の同業他社比較をもとに企業グループを分類) のグラフ

では、なぜビジネスモデルの変革とSOAが関係あるのでしょうか。SOAにおけるサービスとは、繰り返し行われるビジネス・プロセスの単位です。従来のITのコンポーネント単位でものを考えるのではなく、ビジネス・プロセスの単位でものを考え、これを統合していくという方法がサービス指向です。その結果としてできたITシステムをコンポーネント化し、ひいては、ビジネスサービス、業務の単位で、実際にコンポーネント化されたものをどう組み合わせていくかによって新しいビジネスモデルが出てきたり、さらなるビジネス・プロセスを作っていくということもSOAとなります。

わかりやすく、サービスを洋服に、SOAを洋服ダンスにたとえてみます。何かイベントに行くときには新しい服が欲しくなりますが、買うにはお金がかかりますし、高価なものは手入れが大変です。そのため、洋服ダンスの中にあるものを組み合わせて着ることになるのが常です。そこで、よく着る服を入れておくだけでなく、何がどこにあるのかをすぐわかるよう1つの洋服ダンスにまとめて整理してあれば、着回しもしやすくなります。これはSOAでも非常に重要な要素です。たとえば、どこか一箇所に変更を加える場合、個別に組み上げているシステムでは、それぞれ全てに手を加えなければなりませんが、1つのものを組み合わせて再利用している場合は、その一箇所を確認して直せば済むというメリットがあります。

SOAを活用した例を挙げますと、たとえばある通販会社では、カタログ・受注・発送といった業務プロセスを、SOAを活用して再構成したことで、新製品を顧客に提供するための新POSシステムや、新POSシステムと同じ機能を利用するオンライン・ストアなどの、新しい機能を作り出すことを可能としました。また別の例では、旅行関連各社がレンタカーや航空会社や宿泊施設など、それぞれの企業の業務をサービスとして公開し協業するためにSOAを活用しています。そうすることにより、企業の壁を取り払うコンポジット・ビジネス・サービスを実現し、仮想的なバリュー・チェーンに基づいた、新規のビジネスモデルが可能となりました。このように、SOAはより柔軟で簡素化されたビジネス・プロセスを実現できるのです。

先の例を段階的に見ると、まずは通販会社がウェブのショッピングを始めたのがSOAの第一歩と考えられます。通販で使っているシステムをサービス化していくことを決め、これはウェブショップでも使えるだろうと、段階を踏んで考えていく。さらにこれらのサービスを核として新たなビジネスを作り上げてゆき、段階的に企業とビジネスの発展を実現していきます。

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SOAのビジネス効果--ROI(投資対効果)の考え方

次にROI「投資対効果」の話をさせていただきます。SOAがなぜ進まないかといえば、SOAに対する投資対効果が求めにくいからであるといわれています。そもそもSOAに限った話でなく、明確なROIを出すことは困難ともいわれていますし、実際にROIを把握するまでに貴重な時間を無駄にしてしまうことすらあります。

まず、SOAはITへの投資ではなく、ビジネスの柔軟性を補うものであるという点を強調しましょう。そこで、予算を確保するためには、SOAに特化した効果フレームワークを確立することを提案します。まずは予想される改善項目を効果フレームワークから選択し、該当するコスト・シナリオを特定します。そこから最初の単純収益を計算し、2回目以降の実装にあてはまるコスト・シナリオを選択します。最後に利益を一定として、2回目以降の実装の収益を計算してみます。大事なのはこの2回目以降の部分です。これは再利用によりコストが削減できるという話です。基本的には、柔軟性の向上が収益性の向上につながるということが明確に見えます。最初の実装ではコストがかかるものの、長期的な視点で見ればSOAの実装を重ねるほど実装コストは低く、収益は増大してゆくということがわかるのではないかと思います。柔軟性に始まり、収益性の向上へとつながる。それがSOAの期待される効果です。

SOAを2サイクル以上終えられた会社のプロジェクトマネージャーの方に、実際どのような効果があったかを調べた結果、「SOA は互いに高めあい補完しあう、相互補強的な効果を創出」することがわかりました。

2回目以降の実装にあてはまるコスト・シナリオを選択
以降の実装では必要な構築費用と支出が減少

SOA実装によるビジネス効果の図

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SOAはどこから始める?--最もSOAの恩恵を受ける企業とは

最後になりますが、では一体どうやってSOAを始めるべきでしょうか。まずは何を解決したいか、会社にとってどれが重要で、どうしたいかを考えましょう。その際、IT部門だけでなく、実際の業務の担当者と一緒に判断することが大切です。とはいえ新しいやり方ですし、それぞれの部門が手を取り合って進めていかなければいけないので難しいわけです。うまくいかない可能性もありますので、できれば最初は小規模なプロジェクトから始める方がよいというのが我々の意見です。また1回目のSOA構築のコストだけを考えるのではなく、長期的な目で考えることが大切なポイントです。

ズバリ「SOAの恩恵を最も受ける企業は?」といいますと、具体的には「大規模、または活発に取引をする相手がいる」「独自開発のITアプリケーションとインターフェース構築に大きな投資をしている」「ITアプリケーション構成が非常に大きいか、多岐にわたっている」「ITコンポーネントを含む新商品やサービスを定期的に開発している」「ITアプリケーションの頻繁な変更を必要とするビジネス・プロセスがある」「卓越したITを持っているかどうかが参入障壁に関係する業界」「ITが過度に複雑な業界」「大企業によるビジネス・エコシステムに組み入れられている」などが挙げられます。これのどれにもあたらない会社はないかと思います。

SOAサービス・オファリングとして、我々はSOA化に至る一連の作業や管理をサービスとしてご提供しています。また、私どもは「IBM SOAポータル」というWebサイトを運営しています。このサイトでは本日ご紹介したIBMビジネス・バリュー・インスティテュートのホワイトペーパーの掲載や、さまざまな事例などのご紹介をしています。

SOAを始めるに当たって調査結果から得た、経験則
現実のビジネス課題を重視
1. 調査したプロジェクトはビジネス課題の解決を目指していた
  顧客向けの情報統合、取引先とのプロセス改善、顧客サービスの改善、による収益増
  ITパフォーマンスに焦点を当てていたプロジェクトはほとんどない
2. 収入増加に貢献するアプリケーションの場合は、SOAにより得られるものがより具体的で明らか
  収入増加が見込まれるものを選ぶことにより、懐疑的な人を説得しやすくなり、SOAの追加投資も得やすくなる

小規模かつ迅速に始める
1. ほとんどの企業は、SOAで何が可能かの論証モデルとして使える、小規模で自己完結的なプロジェクトから開始した
  「サービス」は出来るだけ単純に作成することを推奨。 SOA構築に習熟することにより、複雑なプロジェクトもこなすことが可能に
2. すぐに始めることが重要
  他の新しい考え方と同様に、SOAとしてのビジネスとITのスキルが必要だが、早急に身につけるのは難しい
  競合他社のSOA化に遅れを取らない

投資効果は長期的に考える
1. 調査した多くの企業では、詳細なビジネス・ケースよりも、概念的な利点に基づいて「とにかくやってみる」を実行
2. しかし、SOAの投資効果につては、初期のSOA構築以降を見据えることが重要
  最初のアプリケーションにはインフラへの先行投資が含まれ、通常はSOAの投資効果はそれ以降の構築で顕著

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