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クラウドの波を乗りこなす! 特別版

クラウドは、中堅企業にこそ向いている

経済ジャーナリスト伊藤洋一氏に聞く クラウド活用と生き残り戦略

シリーズでお届けしている「クラウドの波を乗りこなす!」、今回は特別版として、TVなど多くのメディアで活躍されている経済ジャーナリストの伊藤洋一氏に、中堅企業にとってのクラウド活用のメリットなどについてお話をうかがい、そのインタビューの内容をお届けします。
クラウドを活用することで、中堅企業が限りある資源を有効に生かし、変化する環境を乗り越えて成長を果たしていくための方法などについてお話しいただきました。

生き残るために固定観念を捨てる

現在のように、マーケットの成長が鈍化しているとき、企業経営は決して楽なものではありません。何もしなければチャンスは訪れません。しかし、アイデアと工夫次第で新しいマーケットを開拓することもできます。たとえば昔からおなじみのお菓子などが、ちょっとした工夫で新しい購買層を開拓しよみがえっています。

かりん糖が抹茶やチョコや野菜など色々な味になって登場し人気を集めたり、カステラも生カステラとして大ヒットしています。お菓子に限らず日用品でも家電でも「これは変わりようがない」と思っているものほどおもしろい変わり方をしますし、「進歩が止まった」と思うものほど、化けるとヒットにつながります。そうした、変わることで価値を生み出しそうなものを見つけることが大切な時代なのかもしれません。

景気の低迷を少子高齢化などといわれる人口構成に原因を求めることもありますが、過去にも日本で、人口が増えなかった時代はありました。1720年から1860年あたりまでの江戸時代の後期です。その時代に何が起きたのかというと、現在にも伝えられている地方のさまざまな名産品が生まれたのです。どういうことかというと、人口が増えずマーケットが限られ、それまで売れていたものがなかなか売れなくなった。

そこで、地元の人ではなく、よそから来た人に何とかお土産として買っていってもらおうと、商品に工夫を加えたのです。こうした工夫を加えて魅力的なものを生み出そうとする試みは、いまの日本にもあてはめることができます。戦後から半世紀以上、人口が増え続け、物が足りない時代の中では、作れば売れるという状態でしたが、現在の人口は横ばいですから、なんでも作れば売れるというわけにはいきません。

欲しい、買いたいと思わせるものを作ることが重要で、そのためには知恵を絞り、アイデアを出さなければなりません。そこでは「こうでなければいけない」という固定観念を捨てること。それが新しいものを生み出す鍵なのではないかと思います。

コンピューター・システムのコスト削減に、クラウド

固定観念を捨てて従来のスタイルを変えることで、それまでよりも多くの価値を提供する可能性をもつものに情報システムがあります。企業として生き残るための商品開発を、素早くできるだけ低コストで行うために、情報システムの新しい利用の仕方が登場しています。
従来、情報システムによる合理化や効率化は「我が社のコンピューター・システムは云々」といったように、インフラの設備的な充実にこだわり、相当の投資をしてきました。そうして構築された独自のコンピューター・システムは、果たしてどうなったでしょうか。

たとえば、新しい機能を提供するために大きな追加投資が必要だったり、企業の合併などの際には、異なるシステムの統合がうまくいかずに苦しんだりという状況に陥ることも少なくありません。
商品には他にはない特長やこだわりがなければ生き残れませんが、ビジネス基盤としてのインフラは汎用志向をもったほうが良いと私は思います。特に、中堅企業においては、限られた資金を独自システムの構築に使うよりも、本格的なサービスが登場してきた「クラウド」を活用すべきではないかと思います。

開発期間も先行投資も必要なく、使いやすいシステムがすぐに利用できるわけですから、合理化ができ、企業としての競争力も上がります。コスト削減のために人件費の削減を真っ先に考える企業が多いようですが、私はコンピューターにかかるコストを見直し、クラウドなどの新しい効率化の方法を検討することを一番に優先すべきではないかと思います。

テクノロジーの変化と進化に対応する

企業がコンピューターのコスト削減に踏み切れない理由の1つに、私は変化に追いついていけないIT部門の存在があるのではないかと思っています。現在の会社の中心にいるのは、いわゆるメイン・フレームによってコンピューターを活用してきた世代です。集中型のシステムで育ってきた人と、現在の分散型システムで育ってきた人との間にはやはり違いがあると思います。

ブラウザ・ベースのテクノロジーとか、分散型のテクノロジーとか、かつての発想にはなかった、ある意味でかつての理解の範疇を超えるテクノロジーが出現しています。新しく、便利で、低コストのテクノロジーが登場するたびに、従来の考え方にとらわれたIT責任者が社長に対して「まだうちには必要ないでしょう」と提言する姿が目に浮かぶようです。

IT部門においては、特に責任を担う人にあっては、固定観念を捨てて、柔軟に考えることを意識して行わなければならないと思います。汎用で済ますことができるのは汎用で済ませていくことが大切で、コンピューター・システムは軽くしていくことで、より大きな経営効果をもたらすのではないでしょうか。テクノロジーはどんどん変わっていきます。それを活用していくことが生き残りのうえで必要不可欠であることを中堅企業の経営者は、あらためて留意すべきではないかと思います。

基幹部分のクラウド活用

「クラウド?うちはもう導入しているよ」という企業もあるかも知れませんが、多くの場合、日本の企業においてはマージナルな部分でのクラウド活用に終わっています。アメリカの企業の場合は、ビジネスの根幹の部分でクラウドを活用しています。

日本の企業の多くは、基幹部分をクラウドに預けて、何かあったら困る、と言います。しかし独自のシステムを作ったら、独自のセキュリティーやメンテナンスが必要になります。それが完全にできるかというと、私は難しいと思います。どちらも中途半端なものになってしまう懸念があります。
特に中堅企業では、体力的にもシステムを立ち上げるので精一杯で、その後の安全な運用や障害時のことまで手が回らないといったことも少なくないのではないかと思うのです。

自前のシステムにしても、クラウドにしても、リスクはあります。両方リスクがあるなら、私ならクラウドを選びますし、勧めたいとも思います。これからはどのようなクラウド・サービスを選ぶかに企業の知恵とアイデアを働かせるべきなのではないかと思います。

伊藤洋一氏プロフィール

伊藤洋一氏の写真
経済ジャーナリスト/住信基礎研究所主席研究員

1950年 長野県生まれ。
1973年 早稲田大学政治経済学部卒業。

時事通信社に入社、外国経済部、ニューヨーク特派員、外国経済部デスクなどを歴任。
1986年 住友信託銀行に入社。資金為替部為替カスタマー調査役、市場金融部調査役、為替営業室長を経て、95年に資金証券部審議役を兼務、のち総合資金部審議役。
1998年 住信基礎研究所主席研究員。現在に至る。

主な著書
『日本力(にっぽんりょく) - アジアを引っぱる経済・欧米が憧れる文化』(講談社)
『ITとカースト - インド・成長の秘密と苦悩』(日本経済新聞出版社)
『カウンターから日本が見える - 板前文化論の冒険』(新潮社)
『上品で美しい国家 - 日本人の伝統と美意識』(ビジネス社) など多数

出演番組
関西テレビ「スーパーニュースアンカー」、日経CNBC「日経ヴェリタストーク」、BSジャパン「世の中進歩堂」、ABCテレビ「おはようコール」、NHK地球特派員、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」等

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