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各界のオピニオン・リーダーの方々に登場いただきシリーズでお送りする「ガンバレ中堅企業 応援コラム」。第9回目となる今回は、TVなど多くのメディアで活躍されている経済ジャーナリストの伊藤洋一氏に、昨今の海外進出事情についてお話をうかがいました。
ビジネスの新たな活路として海外進出を選択した中堅企業が、できるだけ少ないリスクでその展開を成功させるための心得などについてお話しいただきました。
増加する中堅企業の海外進出
進展するグローバル化の中で、海外進出を図る中堅企業が増えてきました。かつては、中堅および中小企業の海外進出は、関連する大企業の海外進出に伴って従属的に進出するケースがほとんどでした。そうしたケースを第1段階だとすれば、第2段階は、大企業との関係が希薄になっていく中で、日本国内に工場を残しつつ、新たな取引を求めて海外へも進出を図るというケースです。
こうした時期がしばらく続きました。
そして、現在は第3段階にきているのではないかと思います。それは、急成長する新興国などの海外市場をターゲットとするものです。成長が鈍化した日本のマーケットに比べ、海外の急拡大するマーケットは魅力的です。しかし海外で競争するには、生産コストなどの問題から、日本でモノづくりを続けることが難しくなっています。そこで、海外に主要拠点を移すなどして、いわば、退路を断って海外に進出する中堅企業が増えているというのが、いまの状況ではないかと思います。
日本経済の成長や大企業の牽引力が、かつての力強さを失ってしまったいま、中堅企業は自ら厳しい経営判断を迫られており、その一つが海外進出という選択肢なのだと思います。
海外進出には国民性の相性も大切
これまで、海外への進出先として検討されることが多いのは中国やインドでしたが、最近、ボリューム・ゾーンの新たなマーケットとして期待され、企業の進出が増えているのが、タイやベトナムなどの新興国です。自動車部品メーカー、工作機械メーカー、繊維メーカーをはじめ、さまざまな製造業が進出しています。
タイやベトナムを進出先として選択する理由には、低賃金の労働力が確保できること、マーケットが大きいことなどが挙げられますが、それだけではありません。中国やインドと比べ、政治の混乱も懸念されるタイヤベトナムをあえて進出先として選ぶ経営者が、いま増えているのはなぜでしょうか。その大きな理由の1つには、国民性があると思います。中国では、何かあるとその都度不満をぶつけてくる人が多い傾向がありますが、そうした習慣は日本人とはなかなか合いません。
ベトナムやタイの人たちは、付き合っていくと心が通じると感じる日本人が多いようです。特にタイの人たちは柔和で優しい人が多いようで、日本人との相性がいいようです。タイは、新興国の中ではインフラの整備が進んでいるようで、進出先としても好感されています。ベトナムは社会主義時代の法律が残っていて、その点で厄介な面もあるようでが、ともあれ、海外の人たちと一緒に仕事をしていく上で、その人たちが持っている国民性との相性は大切だと思います。
慎重な対応と判断が求められる中国のリスク
中国は市場としては相変わらず魅力的ですが、リスクの面から進出先に選ばない企業も少なくありません。いま中国は労働賃金の上昇プロセスに入っています。いつ賃上げを要求されるか分からないという懸念があります。旧正月で田舎に帰省したまま、帰って来ないという人も多いそうで、中国の企業でもそうした状況に困っているようです。労働者のストライキも頻発していますが、外国企業に対する賃上げ要求は一層厳しいように感じられます。
賃金の問題以外でも、中国では、法律や制度が突然変更されるというリスクもつきまといます。
また、政府の市場における中立性の不明瞭さも指摘されています。さらに、インフレや不動産バブルなどの経済問題も抱えて、決してリスクは低いわけではありません。中国の魅力ある市場を狙いながら、中国に工場を持つことのリスクを緩和する手段として注目されているのが「チャイナ・プラス・ワン」です。チャイナ・プラス・ワンは、中国だけに工場などの拠点を置くのではなく、加えてベトナムなどのほかの新興国にも工場を分散する方法です。
しかし、体力のある企業でなければそうした展開はできません。そうでない企業が退路を断って出ていくのであれば、進出先としてリスクが小さい方を選択するのは当然のことです。海外進出においては、こうした事情も踏まえた慎重な判断が求められます。
インドでは人の管理が成功のカギ
4年後、5年後には、中国を抜いて世界一の人口になるといわれるインドは、年齢別人口もピラミッド型を描き、今後のマーケットとして非常に魅力的です。IT関係の従事者が増え、消費者層も育っています。日本製品に対する評価も高く、多くの人がインドのマーケットに関心を寄せています。
インドには、カースト制度という身分制度があります。xxをつくる人はxxクラスの人、というような職業別の3千以上の階級制度が存在しています。IT産業が伸びたのは、カースト制度に属さない職業だったことで、優秀な人材がチャンスをつかみやすかったという点が大きかったようです。
しかし、製造業がインドに進出する際には、このカースト制度と直面しなければなりません。インドでの展開に成功を収めたスズキ自動車でも、雇用したカーストの異なるさまざまな人を、同じ社員食堂で食事をとってもらうのに、最初は非常に苦労したというエピソードがあります。インドでは、中国とは違った人事管理の難しさがあり、このカースト制度を越えて従業員をまとめあげたスズキ自動車は、インドでも非常に高く評価、信頼されています。また、住民運動が激しい点でも知られていて、工場を建てるにしても近隣の住民から支持されないと、建設が困難になることも多いようです。
海外進出に成功する3つのポイント
進出先がどこであっても、共通する成功のポイントはなんでしょうか。 その第1は、現地に溶け込むことです。「俺たちは日本から来た」といった偉そうな態度ではどこでも成功することは望めません。第2は、現地で優秀な従業員を雇うこと。そのためには現地の給料より高めの給料を払えないと、人材は集まらないと思います。
また、従業員が「この会社にいると将来トクをする」と感じられる仕組みがあること。口だけではダメです。ノウハウが身につく、出世の道が拓かれている、といったことを明確に示せる仕組みとして持つことです。第3は、日本からの人の派遣や指揮系統が、現地の従業員にも納得できるものであることです。論理として揺らぎなくはっきりしたものでないといけません。日本的な「あ・うん」は海外では通用しません。
海外で成功するための3つのポイント
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ポイント1:
現地に溶け込む
「日本から来た」と威張らない -
ポイント2:
現地で優秀な従業員を雇う
高い給料、出世が見える仕組み -
ポイント3:
従業員に納得できる指揮系統
日本のように「あ・うん」はダメ
このようにして成功を収めた企業は、現地の従業員との関係も良く、市場のニーズをとらえる感度も上がり、プロダクト・ミックスもマーケットに合ったものになっていくようです。
伊藤洋一氏プロフィール
経済ジャーナリスト/住信基礎研究所主席研究員
1950年 長野県生まれ。
1973年 早稲田大学政治経済学部卒業。
時事通信社に入社、外国経済部、ニューヨーク特派員、外国経済部デスクなどを歴任。
1986年 住友信託銀行に入社。資金為替部為替カスタマー調査役、市場金融部調査役、為替営業室長を経て、95年に資金証券部審議役を兼務、のち総合資金部審議役。
1998年 住信基礎研究所主席研究員。現在に至る。
主な著書
『日本力(にっぽんりょく) - アジアを引っぱる経済・欧米が憧れる文化』(講談社)
『ITとカースト - インド・成長の秘密と苦悩』(日本経済新聞出版社)
『カウンターから日本が見える - 板前文化論の冒険』(新潮社)
『上品で美しい国家 - 日本人の伝統と美意識』(ビジネス社)など多数
出演番組
関西テレビ「スーパーニュースアンカー」、日経CNBC「日経ヴェリタストーク」、BSジャパン「世の中進歩堂」、ABCテレビ「おはようコール」、NHK地球特派員、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」等
