タブの始まり
タブの始まり
- 持続的な成長と変革を実現するための新たな人事戦略に向けて
- 人財マネージメントの課題−組織のパフォーマンス向上に必要なもの
- 変化への適応力の向上
- リーダー不足の解消−将来の成長の危機
- 有能な人財の獲得・保持
- 人財分析を通じた成長の促進
レポート:人財活用の課題
持続的な成長と変革を実現するための新たな人事戦略に向けて
経済のグローバル化などを背景に目まぐるしく変化する経営環境の中、多くの企業が変化に適応できる経営基盤の確立に取り組んでいます。特に、重要な経営資源である人財の確保と育成は、ベテラン社員の退職や人財の流動化が進む現状にあって、最優先課題として浮上してきています。
こうした中、IBMでは全世界40カ国、400人以上の人事最高責任者(CHRO)にインタビューした調査結果を「The Global Human Capital Study 2008」としてまとめ、継続的な成長を実現するために必要な人財マネージメントの課題の解明、分析を行いました。ここでは、その概要を解説し、併せて後半で、人財戦略に精通する早稲田大学ビジネススクール教授の杉浦正和氏と、アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービス(IBCS)のマネージング・コンサルタントである前川浩司による対談「人財マネージメントを取り巻く最近の動向」をご紹介します。企業における今後の人事戦略および人財マネージメント構想を立案される際の参考になれば幸いです。
人財マネージメントの課題−組織のパフォーマンス向上に必要なもの
今日のビジネス環境において、組織のパフォーマンスを向上させるためには何が必要なのか。
「The Global Human Capital Study 2008」の調査結果から、次の4つのテーマが重要であることが明らかになりました。それは、「変化への適応力の向上」、「リーダー不足の解消」、「有能な人財の獲得・保持」、そして「人財分析を通じた成長の促進」です。
変化への適応力の向上
市場の急激な変化、グローバル化、新しいビジネスモデルの台頭など、企業環境が大きく激しく変化する中で、変化に適応できる人財の育成は企業にとって最優先事項です。
変化に対する従業員の適応力が「非常に高い」と答えた企業は14%あり、その企業の多くは財務状態も非常に良好です。そして、適応力の高い人財を育成するためには、組織として次の3つの能力が重要であることが分かりました。「今後3〜5年間に必要なスキルと、それらの将来的な有用性を予測すること」、「専門知識のある人財をよく把握していること」、「社員相互のコラボレーションが効率的に行われていること」です。変化への適応力に「非常に優れている」と回答した企業はこれらの3つの能力に対しても高い値を示しています(図1)。
図1:「ビジネス環境の変化への適応力は非常に高い」と回答した企業の特徴

出典:IBM Global Human Capital Study 2008
そして、人財のスキルを把握するためには、企業として標準化されたスキル管理プロセスを持ち、ソーシャル・ネットワーキングやその他のWeb 2.0テクノロジーなどによる人財を検索できる仕組みが必要になります。
また、コラボレーションがうまくいかない理由の多くは、テクノロジーではなく、縦割りの組織、時間的制約、適切に設定されていない業績目標にあることが分かりました。組織としてコラボレーションを強化するためには、業績評価への組み込みをはじめ、社員の意識を高める仕組みを用意する必要があるようです。
リーダー不足の解消−将来の成長の危機
今回の調査では、人財にかかわる深刻な課題としてリーダーの不足が挙げられています。特に、リーダー不足によって成長を阻害されていると考えている企業は、アジア太平洋(日本以外)地域で事業を展開している企業に多いことが分かりました。日本におけるリーダー不足の数値も低いものではありません(図2)。
図2:地域別に見るリーダー人財の不足

出典:IBM Global Human Capital Study 2008
有能な人財の獲得・保持
今回の調査で人財に関する一番の課題とされたのは、スキル教育が速やかに行われていないということでした。52%の企業が「現在または将来のビジネス・ニーズに応えるためのスキルを持つ従業員の迅速な育成が困難である」と回答し、36%が「従業員のスキルが企業の考える優先事項に適合していない」と答えています。
このギャップを埋めるための手段としては、OJTやインストラクターの指導によるクラスルーム型授業など、従来の教育形式の効果がやはり大きいという結果が出ましたが(図3)、一方では、これらの手段は費用と時間がかかり、迅速なスキルの育成ができていないという結果を招いていると考えられます。
図3:従業員の育成方法と効果

出典:IBM Global Human Capital Study 2008
人財の確保ということでは、今回の参加企業の約半数が過去2年間の離職率が上昇していると回答し、グローバリゼーション、労働人口の変化、新しい世代のライフ・スタイルの変化などが労働の流動化を促していることが分かりました。ところが、人財マネージメントの最優先課題として人財の保持を挙げる企業は18%に過ぎず、全体ではあまり重要視されていません。このことから、多くの企業が、人財の流出に対し危機感を持っていないという状況がうかがえます。
人財分析を通じた成長の促進
人財戦略の立案は、ビジネスの方向性を議論することから始める必要がありますが、今回の調査からは、戦略的な意思決定に必要なデータや情報が不足しているという状況が判明しました。人財が資産として価値を持つものであれば、有能な人財の需要や労働生産性、リソースの利用可能性について、人事担当だけでなく、経営層がその情報にアクセスできるようにする必要があります。
また、ビジネス課題として上位に挙げられた「業務の効率化」、「新製品/新サービスの開発」、「新たな市場/地域への進出」の3つの要素と人財の懸念事項とを関連付けると(図4)のような結果になりました。効率化を優先する企業では、組織のニーズに合わせて従業員のスキルを調整し、新たな採用をせずに業績をさらに伸ばすことが求められ、それとは対照的に新しい製品やサービスの開発を優先する企業では、有望な求職者を採用することに重点が置かれていることが分かりました。
図4:ビジネス上の課題と人財の懸念事項との関係

出典:IBM Global Human Capital Study 2008
こうした中、人事部門の役割も変化し始めています。56%が「ビジネス変革を自ら推し進め、その結果に対して責任を持つ」と回答し、15%は実際にビジネスの改革を主導し、結果に責任を持つ立場に就いているという回答が得られました。ただし、人財に関するデータと情報の利用については、整備が遅れており(図5)、戦略性を強化するには、今後はシステム統合など情報インフラの強化が求められるようになるでしょう。
図5:人財に関する意思決定の障壁要因

出典:IBM Global Human Capital Study 2008
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