本文へジャンプ

科学者が語る科学の楽しみ

加藤 礼三氏

上記リンクをクリックすると、ページ内の該当箇所に移動します

プロフィール

若者へのメッセージ

分子性導体の研究に限らず、科学の研究は、私たちに発見の喜びと驚きを与えてくれます。 これらは、本来は個人的なものですが、多くの人たちと共有できるものです。自分の感じた発見の喜びと驚きをできるだけ多くの人に伝えるということが、科学者という職業だと思います。自然の振る舞いは、いつも私たち人間の思惑を数段上回っています。もちろん、私たちも実験を行うにあたっては、こうやればこんな性質を示す物質ができるだろうなどと予想をたてるのですが、自然はそんな思惑よりもはるかにうまい「からくり」で、私たちが思ってもみなかった結果をしばしば見せてくれます。これが、科学、特に物質科学の魅力だと思います。
この世界には、素晴らしい現象を示す多くの物質が、未だ私たちの目に触れることなく眠っています。 酸化物高温超伝導体やフラ?レンにしても、そんな物質群の一部にすぎません。物質の世界の拡がりは、果てることがありません。 「あなた」もぜひこの新物質の世界に足を踏み入れてみて下さい。

科学のおもしろさについて

分子性導体は、「金属」とは何か、「超伝導体」とは何か、固体の中で電子はどのように振る舞うのか、といった物性科学の最も基本的な、そしてまだ解決されていない諸問題を研究する上で格好の材料といえます。それは、構造上の理由から電子が動ける方向が強く制約されること(低次元性)、電子と電子との相互作用が物質の性質に大きく反映されること(強い電子相関)、結晶が柔らかいために圧力などを加えると電子の状態が容易にしかも 多様に変化することなどが理由となって、分子性導体が興味ある物性現象の宝庫となっているからです。
また、その電子状態の特徴を非常に簡単な計算で把握することができるという、特筆すべき性質を持っています。そして、私たち化学者にとって最も魅力的な点は、化学合成の手法によって分子に様々な修飾を加えることができることにあります。私たちは、分子の骨格、置換基(同位体置換も含めて)などをかえることによって、分子性導体の結晶構造をそして物理的性質を、様々に変化させることができるのです。

研究テーマ

私は、「分子」をもとに、新しい電気伝導体,超伝導体(分子性導体)を創り出す研究を行なっています。「分子」の概念と「電気を流す」こととは、一見すると直接的には結びつきにくいように思えます。 私たちが化学の最初の授業で習った「分子」とは、閉殻の電子構造を持ち単独で安定に存在できる孤立した系でした。一方、結晶中を電気が流れるということは、電子が結晶全体を動き回っているということですから、電子的に孤立した系としての分子の概念とは相反することになります。したがって、電気を流す(金属的な)分子集合体をつくるためには、分子の孤立性を破り、分子間を電子が自由に移動できるような状況をつくらなければなりません。そのためには、電子の中でも比較的動きやすいパイ(π)電子を持つ分子を利用することになります。下に示したような、電子を他に与えやすい分子(ドナ?)、逆に受け入れやすい分子(アクセプタ?)をもとに、多くの分子性導体が合成され、それらの中からすでに約50種類の超伝導体が生まれています。ちなみに、最初の有機超伝導体が発見されたのは、1980年のことです。これらの分子性導体の研究には、日本の研究グル?プが大きな貢献をしています。

分子性導体の構成分子イメージ


お問い合わせはこちら

IBM科学賞に関するご意見・ご質問はこちら


日本IBM科学賞事務局
03-5644-2913