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科学者が語る科学の楽しみ

坂井 修一氏

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プロフィール

若者へのメッセージ

みなさんが、科学を専攻されるのでしたら、ぜひ大きな夢をもって仕事をはじめていただきたいと思います。ここで「夢」という場合、ノーベル賞を取る、ということももちろんよいでしょうが、世間がどう思うかはともかく、自分の一生をかけて悔いのない仕事を早い時期に見つけて、それに向かって努力を惜しまない、ということがもっとも大切かと思います。むしろ自分の反省もこめてですが、科学は官僚的な思考方法からは育たないものです。自分を最大限に認めてくれる安全な場所があれば、日本にかぎらず世界を舞台とし、自分にとっていちばん大切なものを発展させるべきでしょう。つねに自分の才能・能力を冷静に評価する必要はありますが、信念ほど強い味方がないことも間違いないと思います。

科学のおもしろさについて

私は科学の中では、比較的新しいパラダイムをもつ情報科学を専攻しております。もっとも、いくつかの原理を発見し、理解し、新しい体系を作り上げていくことにおいて、情報科学も科学的な方法論の延長上の学問であります。科学の面白さは、ひとつには未知のものにアプローチすることで、知的好奇心をわきたたせることです。次に、生物としての人間を理解し、社会を理解するドライで合理的な道具をもてることです。そして、私の夢は、やはり「人間」(とくに情報処理機関としての「脳」)を深く理解する、ということに尽きると思います。
私は、科学者というにはまだ幼稚な段階の人間かもしれません。 また、研究生活は、失敗の連続の中でごくまれに宝石を発見するといった、地味で苦しいものです。そうした中で、何かしら発見・発明をしたとき(私でいえば、並列型情報処理のひとつの基礎原理を発見したとき)に得られる満足感は、 内容の大小によらず、次の苦労をいとわなくするものです。

研究テーマ

私の研究は、コンピュータの構成法に関するものです。簡単にいえば、コンピュータの建築学(アーキテクチャ)、ということになりましょうか。ここ数年で、マイクロコンピュータの技術が飛躍的に進歩したために、高い性能の計算機が個人的、あるいは趣味的に持てるようになってきました。同時に、インターネットの発達などにより、情報処理のありかたが、分散・並列的になってきています。 私は今、著しい進歩をとげつつある情報処理技術のなかで、とくに並列処理・分散処理のアーキテクチャを専攻しております。これにより、超高速で信頼性の高い情報処理がリアルタイムで実現されるようになります。応用分野は、天気予報・宇宙のシミュレーション・蛋白質の構造予測などの科学技術計算、分散型のデータベース、人工知能など、あらゆるジャンルにわたっており、今後は自然科学や工学のみならず人文系の学問や社会そのものを質的に変革するような大きなフィードバックをかけるものと期待されております。
コンピュータ・アーキテクチャの歴史は1945年ごろに米国で開発されたENIACから始まるといわれていますので、わずか半世紀しかありません。しかし、これはまさに驚異的な半世紀でありました。計算の速度は、この半世紀でだいたい1億倍ぐらいになったといえるでしょう。同時に、われわれコンピュータ科学に携わる者の責任もそれだけ重くなったといえるかもしれません。
現在、米国を中心としてヨーロッパや日本の著名研究機関・大学がこぞってこの分野の研究開発に取り組んでいます。私は、1年間米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)で研究員を勤めておりましたが、MITはじめ、スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレイ校、マンチェスタ大学、東大、京大、電総研などで、刺激的な研究が進行しております。


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