日本IBM科学賞第2回(1988年)受賞者
受賞者紹介
室田 一雄(むろた・かずお)
昭和30年4月10日生まれ
東京大学工学部計数工学科 助教授

昭和 53年
東京大学工学部計数工学科卒業
昭和 55年
東京大学工学部計数工学科・助手
昭和 58年
博士号取得
昭和 58年
筑波大学社会工学系・講師
昭和 61年
東京大学工学部・助教授
専門:
数理工学
著書:
『Systems Analysis by Graphs and Matroid-Structural Solvability and Controllability』
(Springer,1987)
贈賞の理由
大規模離散システムの構造解析手法の研究
大量のパイプや反応炉で構成される化学プラント、VLSIに代表される集積回路、大型コンピュータのソフトウェアなど、現代のシステムはますます複雑で大規模になっています。
こうしたシステムを設計したり解析する場合、個々の構成要素を別々に調べるだけではもはや不十分で、それぞれがどのように結びついているのか、つまり全体的な“構造”をきちんと把握することが、ますます重要になってきました。
1970年代にはグラフ理論をコンピュータで扱う効率的なアルゴリズムが次々に発見され、この分野で大きな役割を果たすようになりました。しかし、このグラフ理論的手法でとらえた「システムの構造」は粗いもので、おおざっぱな解析しかできませんし、問題もいろいろと起こっています。
このような中で、室田助教授は、現実のシステムをより忠実に表現できる数学的モデルを考案し、それを数学的に解析する新しい手法を発見しました。
アイデアのポイントは、単純な保存則で記述できる方程式系と、圧力や温度といった物理法則で決まる方程式系を、はっきりと区分したことです。つまり、2つ層をもつ“混合行列”をモデルとして提案したのです。そして、この行列が、一意的に決まる「正準形」をもつことを証明しました。この数学的な表現である正準形は、現実のシステムでは、その本質的な構造を最も単純な形に表現し直したものに相当します。
もう1つの業績は、次元解析の手法を使って、「構造可制御性」という1970年代中頃から続けられてきた重要な問題に、ほぼ最終的な解答を与えたことです。室田助教授の考案したアルゴリズムは、「そのシステムが、制御できるような構造をもっているのか、それとももっていないのか」を明確に判定し、しかも、もっていないなら「どこが制御できないのかを教えてくれる」という画期的なものです。
このように、室田助教授は、現実のシステムを忠実に表現できる数学モデルの枠組みを考え出し、それを実際に解決する方法を見つけたのです。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
