日本IBM科学賞第2回(1988年)受賞者
受賞者紹介
大津 元一(おおつ・もといち)
昭和25年10月5日生まれ
東京工業大学大学院総合理工学研究科 助教授

昭和 48年
東京工業大学工学部電子工学科卒業
昭和 53年
東京工業大学大学院精密工学研究所
助手昭和 57年
東京工業大学大学院総合理工学研究科助教授
昭和 61年
~62年AT&Tベル研究所研究員
専門:
レーザー周波数制御、光計測
著書:
『レーザーと原子時計』
(オーム社)
『光ファイパセンサ』
(オーム社、共著)
『半導体レーザーの基礎』
(オーム社、共著)
贈賞の理由
半導体レーザーからの超高コヒーレント光発生
レーザーは、誘導放出を利用し、光を増幅させた結果として得られるもので、他の光に比べて単色性が高い、位相がきれいにそろっている(コヒーレントな光)、直進性が高い、といった特徴があります。特に、半導体レーザーは小型、高効率であるため、工業分野で大きな期待がかけられています。
しかし、こうしたレーザーも、発明された1960年代当時は、周波数揺らぎが予想以上に大きく、主流のマイクロ波に取って代わるほどの性能はありませんでした。そこで、NTT基礎研究所などの研究機関が、この揺らぎを抑える研究に取り組み始めたのです。
この結果1984年には、周波数の揺らぎは量子力学的限界値にごく近い値にまで抑えられました。研究機関はこの時点で、限界が近づいたこの研究にメドをつけたのでした。
しかし、大津助教授は、「ここでいう量子力学的限界とはレーザーを単体で使った場合の話であり、工学的な自動制御法(フィードパック)を使ってレーザーを強制的に制御すれば、この限界を打ち破れる」と考え、フィードバック系に組み込む高精度装置を自作して、限界の突破に挑戦し続けたのです。
そして1986年、ついに限界値を下回る発光スペクトル幅:90kHzを得たのでした。さらに、AT&Tベル研究所研究員を終えた1988年6月には、先に得た値の精度を2桁も高めた、0.9kHzという値を実現したのです。この値の意味は、「半導体レーザーの周波数揺らぎを、量子力学的限界値の1/1000以下にまで抑えた超高コヒーレント光を実現した」ということです。
現在、エレクトロニクス分野ではコヒーレント光通信システムの研究が進んでいます。大津助教授の研究成果はこの最先端分野で、特に有望視されています。さらに、
衛星通信用マイクロ波原子発振器、ファイバー・ジャイロスコープなどの高精度化のほか、分光分析や重力波検出といった基礎物理分野の発展にも大きく
寄与する成果と考えられます。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
