日本IBM科学賞第2回(1988年)受賞者
受賞者紹介
辻井 潤一(つじい・じゅんいち)
昭和24年2月7日生まれ
京都大学工学部 助教授

昭和 46年
京都大学工学部電子工学科卒業
昭和 48年
京都大学大学院修士課程修了
昭和 53年
工学博士号(京都大学)
昭和 54年
京都大学工学部・助教授
昭和 56年
フランス グルノープル大学CNRS
客員研究員専門:
機械翻訳、自然言語処理、人工知能一般
著書:
『人工知能』
(岩波書店)
『機械の知 人間の知』
(東京大学出版会)
贈賞の理由
機械翻訳システムにおける文法・辞書方式の研究
機械翻訳システムの研究は1950年代に始まりましたが、研究が進んでいくと、非常に難しいことがわかって一時中断しました。しかし、1980年代になると、1970年代に蓄積された言語処理に関するノウハウをうまく組み合わせれぱ、工学的なシステムとして機械翻訳ができることがわかり、研究が盛んになりました。
機械翻訳システムで重要なのは、機械が翻訳作業をするときに利用する文法と辞書です。機械が利用しやすい形の文法・辞書を作らなければ良い翻訳はできません。この機械翻訳の中心となる文法・辞書の作成において独創的な方式を提案したのが辻井助教授です。
機械翻訳システムには、少なくとも文法規則が3000~4000、辞書は20万~30万語ほど必要です。これだけの数のものを適確に利用していくのはたいへんなことです。
そこで辻井助教授は、文法規則をいくつかのパッケージに分割して作り、パッケージ単位で順次利用する方法を考えました。こうすれぱ、内容の修正や変更があった場合も、パッケージ単位で処理できるわけです。また、同じ内容を表わす翻訳はいくつもできますが、適用する文法に優先順位をつけて、最良の翻訳が最初に選ぴ出されてくるようにしました。
さらに、日本語と英語ではその構造に大きな違いがあります。この性質の異なった言語の構造の差を調整して、英語らしい表現、日本語らしい表現にする方法を示しました。
一方、辞書については、誰が作っても均質な記述が得られるように定形的なフォーマットを設計しました。そしてそのチェックシステムも考案しました。とくに動詞については、その本来の意味に着目して翻訳に有効に役立てることを実現しました。
こうした文法・辞書に関する独創的な方式は、機械翻訳の効率を高めるととも
に品質を高め、日本の機械翻訳を世界最高のレペルまで押し上げる原動力となりました。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
