日本IBM科学賞第4回(1990年)受賞者
受賞者紹介
石原 宏(いしはら・ひろし)
昭和20年11月 6日生まれ
東京工業大学精密工学研究所 教授

昭和 43年
東京工業大学理工学部電子工学科卒業
昭和 48年
東京工業大学大学院博士課程修了
昭和 51年
東京工業大学総合理工学研究科
助教授平成 元年
東京工業大学精密工学研究所・教授
専門:
ヘテロエピタキシー技術、3次元IC技術
著書:
『半導体デバイス工学』
(コロナ社)
贈賞の理由
絶縁物基板上への単結晶半導体薄膜形成に関する研究
情報社会の進展に伴って集積回路の高密度化,高機能化への要請は高まる一方ですが、シリコン基板の表面にトランジスタなどを平面的に配置するこれまでの製法では、あと十年もすれば技術的な限界に達すると予想されています。
この問題は、3次元IC、つまり集積回路の内部構造を立体化すれば解決できますが、このためには半導体を何層にも積み重ねなければなりません。半導体の上に形成した絶縁膜(通常は非晶質のSiO2
)の上に、さらにシリコン単結晶の薄い膜をどうやって成長させるかがこの技術のポイントです。
石原教授は、この点について、2つの方法を考案し、きれいな単結晶が成長できることを実証しました。
その1つがラテラル・エピタキシーに関するものです。これは、シリコン基板から成長させた単結晶を横方向へ伸長し、絶縁膜の上まで展開する技術です。石原教授は電気炉でアニールする方法と電子ビームで走査する方法を研究しました。前者は比較的低温で処理する方法で、周囲への影響は小さく、できた単結晶の表面は滑らかです。後者は高温でシリコンを溶かし再結晶させるものですが、走査方法を工夫して単結晶化に成功しています。
もう1つ、ヘテロ・エピタキシーについての考案とは、シリコンの単結晶上に絶縁膜としてフッ化カルシウム(CaF2
)の単結晶を形成し、その上にさらにシリコンやガリウム・ヒ素などの単結晶半導体薄膜をつくる方法です。これらの物質の境目(界面)をうまく処理すれば、結晶構造や結合様式が違ってもうまくくっつき、良質な単結晶ができることがわかりました。
石原教授の研究は、次世代集積回路への道を切り拓きました。超大容量メモリーやイメージプロセッサーなどの高性能素子が登場するのもそれほど先ではないでしょう。同時にこの研究は基礎物性の観点からも多大な注目を集め、成長膜の結晶性と界面の性質を調べる研究が、内外の研究所で始まっています。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
