日本IBM科学賞第4回(1990年)受賞者
受賞者紹介
小宮山 真(こみやま・まこと)
昭和22年 9月生まれ
筑波大学物質工学系 助教授

昭和 45年
東京大学工学部工業化学科卒業
昭和 50年
東京大学大学院博士課程修了
昭和 50年
米国ノースウエスタン大学博士研究員
昭和 55年
東京大学・助手
昭和 62年
筑波大学物質工学系・助教授
専門:
人工触媒
著書:
『Cyclodexitrin Chemistry』
(共著、Springer-Verlag)
『分子認識と生体機能』
(共著、朝倉書店)
贈賞の理由
核酸を切断する人工酵素の発見
小宮山助教授は、自然酵素の性能を上回る「核酸(遺伝子)切断触媒」を開発する足掛かりを作りました。従来の人工触媒では、遺伝子を切断する時に遺伝子自体を傷つけてしまいましたが、シクロデキストリンという環状分子を使い、天然の酵素同様、傷つけることなく遺伝子を切ることに成功したのです。また、この反応を加速する方法も開発しました。
遺伝子を目的の場所で切る触媒は、遺伝子工学で不可欠な道具です。天然には制限酵素という優秀な触媒がありますが、これにも限界があることがはっきりしています。必ずしも狙った場所を切ってくれないのです。具体的には、制限酵素が認識する塩基は4塩基分ですが、人間の遺伝子のように長大な遺伝子を正確に切るには、20塩基を認識する必要があり、人工酵素を開発しなければならないことは明らかでした。
研究が進むなかで、人工の物質で遺伝子を認識すること自体は困難ではないことが分かってきました。問題は、遺伝子を切る触媒機能を作ることです。米国などではラジカルを使った研究が多数進んでいますが、小宮山助教授はこの道を選びませんでした。ラジカルでは切る場所が特定できないうえ、核酸自体を破壊してしまうからです。
小宮山助教授はこうした欠点のない人工酵素を追い求め、シクロデキストリンを発見しました。シクロデキストリンの秘密は環状に並んだ水酸基にあります。この水酸基の列が遺伝子を守り、切断面を保護することが分かったのです。このメカニズムは、天然の酵素と同じでした。
シクロデキストリンを使う上で最も大きな障害だった反応速度も、小宮山助教授の研究で大幅に改善しました。シクロデキストリンにコバルト錯体やポリ
エチレンイミンを結合すると、反応速度が10万倍から100万倍も上がったのです。天然の酵素に比べればそれでも数%のスピードですが、核酸を切断する人
工酵素の発見とその改良法の開拓は、酵素化学の新しいジャンルを開くものとして高く評価されています。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
