日本IBM科学賞第5回(1991年)受賞者
受賞者紹介
北岡 良雄(きたおか・よしお)
昭和26年7月15日生まれ
大阪大学基礎工学部物性物理工学科 助教授

昭和 49年
大阪市立大学理学部物理学科卒業
昭和 51年
大阪大学大学院基礎工学研究科
修士課程修了昭和 51年
東京大学物性研究所
昭和 56年
理学博士(東京大学)
昭和 57年
神戸大学理学部物理学科・助手
昭和 60年
大阪大学基礎工学部物性物理工学科
助手平成 2年
大阪大学基礎工学部物性物理工学科
助教授専門:
低温物理学
贈賞の理由
強相関電子系超伝導体のNMRによる研究
超伝導という性質は、長い間BCS理論によって説明されてきました。
超伝導体ではすべての伝導電子がクーパー対と呼ぷペアをつくって動いていますが、クーパー対の間に働く引力を、BCS理論では、電子と格子の弱い相互作用で説明しています。この格子の振動を量子化したものがフォノンであり、超伝導の発現機構はフォノンによって説明できると考えられていました。
ところが、1979年にCeCu2Si2という重い電子系の超伝導の存在が明らかになり、センセーショナルな発見として注目されました。重い電子系では、本来、電子は動きにくく、電子間の強い反発力をもっており、高温では局在スピンとしてふるまっています。このこと自体、従米の超伝導とは相いれない性質で、なぜ、それほど強い電子間の反発力をもつ系で、電子・格子の相互作用を使ってクーパー対を作り出せるのか、という新たな疑問が起こりました。
北岡助教授らは、CeCu2Si2が発見された直後から、NMR(核磁気共鳴法)を使って局在スピンのふるまいを測定する実験を開始しました。そして核スピン格子緩和時間T1の観測を行った結果、低温で局在スピンが消失すること、T1と温度の関係が、通常のBCS超伝導体とは異なる変化を示すことが明らかになりました。同様の結果は、続いて他の重い電子系の超伝導で、さらにその後発見された高温超伝導でも示され、フォノンではなく、スピンのゆらぎが超伝導を生み出すうえで重要な役割を担っていることが明らかとなってきました。
高温超伝導という特殊な性質を解明するために、現在NMRによる高温超伝導研究は世界的に行われていますが、北岡助教授らは、超伝導一般を普遍的
にとらえ、すでに10年以上前から、NMRを用いて電子相関をミクロ的にとらえる研究に取り組んできました。1K以下の極低温領域という技術的にも難し
い条件下で研究をスタートさせ、超伝導機構の解明に直結する大きな成果を挙げたことは、世界でも高く評価されています。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
