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日本IBM科学賞第7回(1993年)受賞者

受賞者紹介


原田 明(はらだ・あきら)
昭和24年9月8日生まれ
大阪大学理学部高分子学科 助手


原田明氏の顔写真

  1. 昭和 47年

    大阪大学理学部高分子学科卒業

  2. 昭和 49年

    大阪大学大学院理学研究科
    高分子学専攻修士課程修了

  3. 昭和 52年

    大阪大学大学院理学研究科
    高分子学専攻博士課程終了

  4. 昭和 52年

    大阪大学理学部・教務職員

  5. 昭和 54年

    IBM研究所(San Jose)・客員研究員

  6. 昭和 55年

    コロラド州立大学・客員研究員

  7. 昭和 57年

    大阪大学産業科学研究所・助手

  8. 昭和 63年

    大阪大学理学部・助手

  9. 平成 2年

    スクリプス医学研究所・客員研究員

  10. 平成 3年

    帰国

  11. 専門:

    高分子合成、生体高分子に関する研究、生体機能関連化学

  12. 著書:

    『新生化学実験講座 Vol.1、タンパク質 VII、タンパク質工学』
    (共著)
    『Stereochemistry of Organometallic and Inorganic Compounds』
    (共著)

贈賞の理由


高分子の分子認識による超分子構造の構築

シクロデキストリンは数個のグルコースがドーナツ状に結合して生じた空洞を有する化合物で、空洞内は疎水性であるため、その中に多くの有機化合物をとりこみ、包接化合物をつくることが知られています。原田助手は数年前、当時誰もが予測し得なかった高分子化合物のシクロデキストリンによる包接現象を見いだしました。ポリマー鎖がシクロデキストリン分子を次々と定量的に貫き、ビーズに糸を通すように包接化合物ができあがるのです。

その際、シクロデキストリンはその環の大きさに応じてポリマー鎖の構造を認識します。例えば最も小さな空洞を有するα–シクロデキストリンは細いポリマーであるポリエチレングリコールを、β–シクロデキストリンはポリプロピレングリコールを、γ–シクロデキストリンはポリメチルビニルエーテルをそれぞれ特異的にとりこむなど、異なった高分子鎖がシクロデキストリンの種類により厳密に認識されるのです。

これらの化合物の両端をかさ高い置換基で置換すると、1本のポリマー鎖に多数のシクロデキストリンがネックレス状にとりかこまれた新しい型の分子化合物が誕生したのです。
原田助手は、この際、同じ面が向き合うかたちで隣あったシクロデキストリンの間で水素結合が形成されていることも明らかにしました。

シクロデキストリンが高分子鎖の長さに応じて定量的に導入されることがわかったので、とりこまれたシクロデキストリン間に分子架橋をほどこした後、塩基性条件下で両端のかさ高い置換基をはずして、高分子鎖を抜き取り、内径0.45nmの分子チューブの合成に成功しました。当然この分子チューブは現在知られている中で最も細いチューブであり、しかも原理的には長さや内径が自由に制御できるので、世界的な注目を集めています。

原田助手のこれらの研究成果は高分子合成化学の分野は言うまでもなく、高分子の分子認識、さらには複数の分子が特異的に形成する超分子の合成などナノオーダーの化学の発展に大きなインパクトを与えています。また、分子チューブの研究は分子レベルでの新しい諸現象への足がかりとなるもので、多分野への波及効果も大きいものがあります。

※所属名および役職は、受賞時のものです。