日本IBM科学賞第7回(1993年)受賞者
受賞者紹介
家 泰弘(いえ・やすひろ)
昭和26年11月9日生まれ
東京大学物性研究所 助教授

昭和 49年
東京大学理学部物理学科卒業
昭和 54年
東京大学大学院理学系研究科
物理学専攻博士課程修了(理学博士)昭和 54年
東京大学物性研究所・助手
昭和 57年
米国AT&Tベル研究所・研究員
昭和 59年
米国IBMトーマス・ワトソン研究所
客員研究員昭和 60年
東京大学物性研究所・助教授
専門:
低温物性物理学
著書:
『超格子ヘテロ構造デバイス』
(共著)
『Physical Properties of High Temperature Superconductors III』
(共著:World Scientific)
『The Physics and Chemistry of 0xide Superconductors』
(共編:Springer Verlag)
贈賞の理由
高温超伝導体の輸送現象と異方性に関する研究
高温超伝導体の出現は物性物理学に大きなインパクトを与えました。高温超伝導の起源の解明と並んで重要な研究課題は、超伝導現象としての新しさの追求です。家助教授は、高温超伝導体のふるまいが、従来の超伝導体とは質的に異なることを明らかにするいくつかの重要な実験を行いました。
高温超伝導体の特徴の一つは、その層状結晶構造にもとづく強い2次元的異方性にあります。家助教授は、超伝導異方性を信頼性の高い実験データによって初めて明らかにするとともに、「超伝導転移の温度幅が磁場によって広がる」という高温超伝導独特の特徴を見いだしました。
磁場中の超伝導体に電流を流すと、磁束量子にローレンツ力という力が働きます。このローレンツ力が磁束のピン止めの力を上回って磁束が動き出すと、電気抵抗が発生します。ローレンツ力がそれほど大きくない場合でも、熱的なゆらぎによって磁束はピン止めのポテンシャルを越えて動いてしまいます。抵抗ゼロという超伝導の一番魅力的な性質が失われてしまうわけですから、高温超伝導を実用材科として考える場合に重要な問題です。基礎物理の観点からも、「ひも」の自由度をもつ磁束の多体系がランダムポテンシャルの中で示すダイナミクスは興味深い問題です。
そもそも、このローレンツ力は電流と磁場のベクトル積で与えられるものなので、電流と磁場とが平行になるような配置ではローレンツ力は働かないはずです。ところが高温超伝導体では、この場合でもやはり大きな抵抗発生が起こることを家助教授は見いだしました。
この実験結果は磁束量子のダイナミクスに関する従来の描像を問い直すものとして、大きな反響を呼ぴました。この問題をさらに追求するために、強磁場中で試料を3軸にわたって高い角度精度で回転する装置を制作し、これを駆使して磁束のダイナミクスを明快な実験によって明らかにしました。
家助教授はまた常伝導相における輸送現象についても、多くの重要な研究成果を挙げています。特に、電気抵抗およぴホール係数の異方性についての研究や、
ホール効果に現れる超伝導ゆらぎの研究は高く評価されています。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
