日本IBM科学賞第7回(1993年)受賞者
受賞者紹介
岡畑 恵雄(おかはた・よしお)
昭和22年8月17日生まれ
東京工業大学生命理工学部生体分子工学科 教授

昭和 45年
同志社大学工学部工業化学科卒業
昭和 47年
同志社大学大学院工学研究科
修士課程修了昭和 47年
九州大学工学部合成化学科・助手
昭和 54年
九州大学工学部合成化学科・講師
昭和 55年
マサチューセッツ大学および
カリフォルニア大学客員研究員昭和 57年
東京工業大学工学部高分子工学科
助教授平成 4年
東京工業大学生命理工学部
生体分子工学科・教授専門:
生物有機化学(脂質膜、酵素、DNA等の機能材料としての利用)
著書:
『膜は生きている』
(共著:大日本図書)
『リポソーム』
(共著:南江堂)
『化学系のためのMacintosh』
(共著:講談社サイエンティフィック)
贈賞の理由
バイオミメチックケミストリーにおける新手法の展開
リン脂質を水中に分散すると、脂質二分子膜からなる小胞体(リポソーム)を形成します。岡畑教授は1977年に世界に先駆けて長鎖ジアルキル基を有するアンモニウム塩からもリポソーム類似の二分子膜小胞体(ベシクル)が形成されることを見いだしました。その後、この人工のリポソーム(ベシクル)は、脂質の超分子集合体の化学として、世界中で研究が開始されました。岡畑教授はこれらの研究をリードし、新しい応用面を次々と切り開いてきました。
まず、分子レベルでの透過制御機能はあるものの、強度不足でなかなか使えなかったこのベシクルの力学的弱点を、多孔質のナイロンカプセル膜の細孔を二分子膜で被覆することで見事に解決し、丈夫な高分子膜のところどころに二分子膜というバルブをもつ二分子膜被覆カプセルを作り上げました。これを用いて、温度変化、光照射、超音波照射、pH変化、電圧の印加などの外部刺激に対してon/offに応答して、可逆的にカプセル膜内水相の物質の徐放牲をコントロールできるカプセル膜を作り上げました。
つづいて、水晶発振子の金電極上に脂質二分子膜を固定した脂質膜被覆水晶発振子を作製し、匂いセンサとして働くことを見いだしました。これは、生体の臭覚細胞の化学受容メカニズムを模倣したもので、匂いの識別センサとして、匂い分子をナノグラムオーダーで検出できます。
さらに最近では、生体触媒である酵素と脂質分子を組み合わせて、脂質被覆酵素の研究で成果を挙げています。本来は水溶性の酵素の表面を脂質分子で覆うことによって、安定性を飛躍的に向止させ、有機溶媒にも可溶化することができました。
以上のように、岡畑教授は、脂質膜の機能化を目的として、酵素やDNA等の生体分子、カプセル膜や水晶発振子などの新しい素材やデバ
イスとを独創的な発想で組みあわせることにより、次々と新しい手法を開発してきました。これらの研究は、バイオミメッチクケミスト
リーの研究を進める上で多くのインパクトを与え、同分野の今日の発展に大きく寄与したのです。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
