日本IBM科学賞第9回(1995年)受賞者
受賞者紹介
三上 幸一(みかみ・こういち)
昭和28年7月19日生まれ
東京工業大学工学部化学工学科 助教授
昭和 52年
東京工業大学工学部化学工学科卒業
昭和 57年
東京工業大学大学院理工学研究科
博士課程修了(工学博士)昭和 57年
東京工業大学工学部化学工学科・助手
昭和 57年
~58年米国イェール大学・博士研究員
昭和 62年
東京工業大学工学部化学工学科
助教授専門:
合成有機化学・有機金属化学
著書:
『化学事典』
(共著:東京化学同人)
『不斉ルイス酸触媒』
(化学増刊124号)
『不斉還化;創薬化学の基礎となる不斉反応』
(共著:広川書店)
贈賞の理由
超効率不斉合成法の開発:案出から実用化まで
有機合成反応の主要な目標の第1は、新規化合物合成のための素反応、すなわち炭素-炭素、炭素-水素、炭素-酸素などの結合の生成反応の開拓にあります。第2に有機化合物の特徴として立体構造の左右の存在があり、これが有機天然物の生理活性にとって本質的です。なかでも炭素炭素結合の生成において新たに左右が生じる場合に、その何れかを選択的に得る不斉合成は極めて重要な課題であり、時に少量の左(右)を種(たね)として多くの左(右)をつくり出す高効率、触媒的な不斉合成法の開発が望まれ、これまでも多くの研究者の典味の対象となって来ましたが、成功例は主に炭素?水素結合生成における触媒的不斉合成に限られていました。
三上助教授はこれに対し、炭素-炭素結合生成反応における高効率、触媒的不斉合成反応の開発に取り組み、その独自の発想にもとづいて数多くの顕著な業績をあげて来ました。それらの中で三上助教授は、まず不斉カルボニル-エン反応を取り上げました。
カルボニル-エン反応とは、炭素-酸素二重結合をもつカルボニル化合物と炭素-炭素二重結合をもつエン化合物の反応において、前者の炭素原子と後者の二重結合の端の炭素原子の間に新しい炭素-炭素結合が生成する反応で、この際、新たに生成した結合の炭素原子には新たに左右が生じますが、不斉の要因の存在しない反応では左右は等量生成します。
三上助教授は、不斉の要因を有する触媒として例えぱ右のビナフトールのチタニウム錯体をわずか1%存在させることにより、ほとんど右のみからなる生成物を効率よく得ることに成功しました。三上助教授はさらに、不斉アルドール反応、すなわちカルボニル化合物と炭素-炭素二重結合をもつ金属エノラートとの反応を取り上げ、新たに生成する炭素-炭素結合に生じる新たな左右に関して、上記と同様の不斉チタニウム触媒を少量用いることにより、ほとんど左からのみなる生成物を得ることに成功しました。
触媒反応とは別に、三上助教授は、同一分子内での結合の切断に伴う新たな炭素-炭素結合生成における高効率な不斉の場所の移動にも成功しました。生成物はフェロモンの1種に導くことができます。
このように、三上助教授の業績は触媒的不斉合成の新しい方法を開拓したものであり、国際的にも高い評価を受けています。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
