日本IBM科学賞第10回(1996年)受賞者
受賞者紹介
篠原 久典(しのはら・ひさのり)
昭和28年10月11日生まれ
名古屋大学大学院理学研究科物質理学専攻 教授
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昭和 54年
京都大学大学院理学研究科
修士課程(化学専攻)修了 -
昭和 54年
京都大学大学院理学研究科
博士課程中退 -
昭和 54年
岡崎国立共同研究機構分子科学研究所
助手 -
昭和 60年
国立環境研究所大気圏環境部
客員研究員 -
昭和 61年
エディンバラ大学化学教室
日英協力研究員 -
昭和 63年
三重大学工学部分子素材工学科
助教授 -
平成 5年
名古屋大学理学部化学科・教授
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平成 5年
東北大学金属材料研究所・客員教授
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平成 7年
名古屋大学大学院理学研究科
物質理学専攻・教授 -
専門:
マイクロクラスターの物理化学
フラーレンの物理化学
贈賞の理由
金属内包フラーレンの生成、構造と電子状態の解明
新しい炭素物質フラーレンは、現在、世界の科学者が最も強い興味をもっている物質の一つである。フラーレンの持つ興味ある特質の一つにフラーレン中のかご型空間があり、その空間中に存在する原子あるいは分子が示す特異な性質が多くの化学者の注目を集めている。篠原教授は、このかご型空間に金属原子を取り込んだ金属内包フラーレンの重要性にいち早く着目し、世界に先駆けてこれら分子の単離と精製に取り組み、この分野をリードする顕著な業績を挙げた。
篠原教授は、まずスカンジウムやイットリウムを中心とする3族元素がフラーレンに内包され安定に存在することを実験的に初めて明らかにした。C82、C84のような大きいフラーレンではスカンジウム原子が1つのみならず2つ、3つまで内包された分子を生成することを見出しその抽出に成功した。スカンジウム原子3つを内包したフラーレンについては電子スピン共鳴スペクトルの解析によりスカンジウムが幾何学的に等価の位置に内包された新しいタイプの常磁性分子であることを示した。
篠原教授は金属内包フラーレンの研究には、それらを単離、精製することが必須と考え、多段階高速液体クロマトグラフィー法を活用することにより、初めてそれに成功した。これにより純粋な金属内包フラーレンを用いた研究が可能となり、各種分光法による精密な構造解析と電子状態の解明が行われた。例えば、スカンジウム原子2つを内包したC84の走査型トンネル顕微分光により、2つのスカンジウム原子がC84に内包されていることを明らかにした。さらに篠原教授は、国際的な激しい先陣競争にあった金属内包フラーレンのシンクロトロンX線構造解析に世界に先駆けて成功した。解析されたイットリウム1つを内包するC82において、イットリウムはフラーレン構造の中心にはなく、炭素ケージの近傍に位置し、金属から炭素ケージへの電子移動相互作用によって強く結合していることが示された。
このように篠原教授の研究は、金属内包フラーレンの分離、精製に基礎をおきつつ、フラーレン化学に
一つの領域を築いたものであり、化学のみならず物理学、材料科学の分野にも大きな波及効果を及ぼしている。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
