日本IBM科学賞第11回(1997年)受賞者
受賞者紹介
藤森 淳(ふじもり・あつし)
昭和28年12月28日生まれ
東京大学大学院理学系研究科 助教授
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昭和 51年
東京大学理学部物理学科卒業
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昭和 53年
東京大学大学院理学系研究科
物理学専攻修士課程修了 -
昭和 53年
科学技術庁無機材質研究所・研究員
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昭和 61年
科学技術庁無機材質研究所
主任研究官 -
昭和 63年
東京大学理学部・助教授
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専門:
固体物性、光電子分光
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著書:
『電気伝導性酸化物』
(共著、裳華房、1993年)
『物性測定の進歩II』
(共著、小林俊一編、丸善、1996年)
贈賞の理由
光電子分光法による強相関系の電子物性の解明
原子でも固体でも、複数の電子からなる系では、電子間のクーロン相互作用のため電子は互いに避けあうという非常に複雑な運動を強いられる。これを電子相関と呼ぶ。電子相関は、固体における超伝導や種々の磁性を引き起こす要因と考えられており、古くから多くの物理学者が関心を持ってきた。しかし、これを理論的に取り扱うこと
、又、その役割を実験的に明らかにすることは非常に困難であるが、藤森助教授は光電子分光法を用いて固体における電子相関の役割を次々に明らかにしていった。
電子相関に起因する特異な性質を示す物質の例の一つは、モット絶縁体と呼ばれるものである。このような物質は、理論的考察によれば、電子間のクーロン相互作用が有効に働かないと仮定すると、金属であるはずである。しかし、クーロン相互作用が有効に働けば、電子は互いに反撥し合って動けなくなり絶縁体になる。このようなことが起こる可能性はN.F.モットによって指摘され、酸化ニッケルがその代表的な例であると言われてきた。これに対して、藤森助教授は、酸化ニッケルの電子構造を子細に調べ、これが電子相関に起因する絶縁体ではあるが、モットの考えたものとはやや異なるタイプのものであることを示した。このタイプのものは、電荷移動型絶縁体と呼ばれ、物質の分類に新しい種類として加えられた。
近年盛んに研究されている銅酸化物の高温超伝導体においても電子相関は重要な役割を果たしていると考えられている。研究の初期では電流は銅原子上の電子によって運ばれると考えられていたが、藤森助教授はその電子状態を考察し、電流は酸素上の電子によって運ばれる事を指摘し、高温超伝導のメカニズムの解明に重要なヒントを与えた。
藤森助教授の研究の特徴は、実験結果の解析法にある。光電子分光は、ともすれば隔靴掻痒になり勝ちであるが、藤森助教授は理論をよく理解し、モデルを作って理論と実験を比較することにより多くの有用な結果を引き出した。上に挙げた例のように、長年にわたって信じられてきたものを覆すのは、よほど慎重な研究が必要である。藤森助教授の研究はこれら以外のものでも信頼性が高く、質量ともに十分に受賞に値するものである。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
