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日本IBM科学賞第13回(1999年)受賞者

受賞者紹介


斎藤  晋(さいとう・すすむ)
昭和32年11月24日生まれ
東京工業大学大学院理工学研究科物性物理学専攻  教授


齋藤理一郎氏の顔写真

  1. 昭和 55年

    東京大学工学部物理工学科卒業

  2. 昭和 57年

    東京大学大学院工学系研究科
    修士課程修了

  3. 昭和 58年

    同博士課程中退、日本電気基礎研究所
    研究員

  4. 昭和 61年

    工学博士(東京大学)

  5. 昭和 62年

    カリフォルニア大学バークレー校物理学科
    研究員

  6. 平成 6年

    東京工業大学理学部物理学科・助教授

  7. 平成 10年

    東京工業大学大学院理工学研究科
    教授

  8. 専門:

    物性理論

贈賞の理由


フラーレンネットワーク物質の理論的研究

われわれが、古代から漢字を書くのに使ってきた墨は、細かい煤と膠を練り合わせたものである。この煤の中にサッカーボールの形をしたC60分子が含まれているなどとは、誰も夢想だにしなかったが、1985年に、その煤の中から、熱力学的には出来にくいと考えられる正20面 体対称・球状のC60クラスター分子が発見されたことは、大きな驚きであった。しかも、これまで研究し尽くされてきたと信じられていた炭素原子から、1990年にグラファイト、ダイアモンドに次ぐ新たな炭素結晶相のC60固体が作 られて、その科学的衝撃は非常に大きいものとなった。この画期的な発見によって、それ以後「原子 →クラスター分子 → 固体結晶」という階層構造の物性科学が急速に発展し、科学の世紀ともいえる20世紀の最後の10年を飾るにふさわしい大きな学問分野が誕生することとなったが、この「フラーレン科学」の理論的研究の礎を築いたパイオニア研究者の一人が齋藤晋教授である。

齋藤教授は、C60フラーレンの発見以前より、第一原理電子構造計算に基づき、C60およびC60Kクラスター分子を始めとする炭素の内包化合物について、その電子物性の解明を活発に進めていたが、C60固体が発見されるや否や、この固体の凝集機構と半導体的電子構造を世界に先駆けて解明し、C60固体のような階層性をもつ固体では、まず原子の電子状態からクラスター全体に広がるクラスター軌道が形成されて、半径1ナノメートル程度の「ナノボール」ができ、この「ナノボール」の軌道がさ らに結晶全体に広がって、最密充填結晶格子が構成されることを明らかにした。ついでアルカリ金属をドープしたC60固体で超伝導が発見される前後に、超伝導機構を解明する上で重要な鍵となる電子状態と、結晶中のどの位 置にアルカリ金属をインターカレートすると安定な超伝導物質が得られるかを明らかにした。

これらの研究成果 に関する押山淳現筑波大学教授と共著の論文は、フラーレン系物質群の電子状態を解明する最も重要な論文として学界に大きなインパクトを与え、この10年間に最も高い頻度で 引用されたランクの論文として、世界的に高く評価されている。このように齋藤晋教授は、「フラーレン科学」の先端を切り開くと同時に、その後の発展に指導的役割を果 たし、その画期的研究業績は本賞を贈るのに誠にふさわしいものである。

※所属名および役職は、受賞時のものです。