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日本IBM科学賞第14回(2000年)受賞者

受賞者紹介


富永 淳二(とみなが・じゅんじ)
昭和34年6月8日生まれ
通商産業省工業技術院産業技術融合領域研究所
次世代光基盤研究グループ グループ長


富永淳二氏の顔写真

  1. 昭和 58年

    千葉大学工学部工業化学科卒業

  2. 昭和 60年

    千葉大学大学院工学研究科
    修士課程修了(無機合成化学)

  3. 昭和 60年

    TDK(株)開発研究所・研究員

  4. 昭和 62年

    英国クランフィールド工科大学博士課程
    (先端材料科学)留学

  5. 平成 2年

    同大学院博士課程修了、Ph.D.

  6. 平成 4年

    TDK(株)開発研究所・研究主任

  7. 平成 9年

    TDK(株)退社

  8. 平成 9年

    工業技術院産業技術融合領域研究所
    主任研究官

  9. 平成 10年

    産業技術融合領域研究所
    次世代光基盤研究・グループ長

  10. 専門:

    光記録、材料光学物性

贈賞の理由


新しい近接場光利用技術の開発と
その高密度光ディスクへの応用に関する研究

高密度光記録装置は、情報技術を担う基盤的な技術であり、いっそうの高密度化の実現が強く期待されている。高密度化は、光ディスク上で光をより微小なスポットに絞り込み、より小面積の記録マークを読み出すことによって実現されるが、従来の光学系では回折による制約のため波長と同程度以下のサイズへの絞り込みは不可能であった。富永博士は、近接場光の独創的な利用方式を開発してこれを光記録に応用することにより、実用性の高い近接場光記録技術の基礎を確立した。

近接場光は、光導波路端部などに形成された細針状プローブの先端に形成され、波長より1桁小さい数十ナノメーター径の微小スポットに、回折の制約なしに光を絞り込むことを可能にするため、回折限界以下の微細構造の観察や光物性評価の有力なツールになっている。これを光ディスク記録に応用すれば、記録密度を飛躍的に増大させる可能性があるが、プローブをディスク表面に近接させる必要があるため、耐衝撃性や高速性などの点で難点があった。富永博士は、プローブ部分を光導波路から分離して、これを照射対象である光ディスク上に照射光自身によって自己形成するというきわめて独創的な方式を発明しこれらの難点を克服した。すなわち、ディスク上に形成したマスク層に照射光を絞り込んで、照射スポットより顕著に小さな開口ないし散乱体を、非線形効果を利用して可逆的に形成し、これを近接場光の発生・散乱体として機能させるものである。同博士は、プローブの自己形成に適した材料の探索、ディスク構成の最適化などにより、この手法が現実の光ディスクシステムに適用可能であることを実証した。これは光ディスク記憶容量のテラバイト領域への発展に見通しを与えるものである。

また、この近接場光利用技術がリソグラフィー技術にも適用可能であることも実証しており、さらに、表面プラズモン効果による信号増強の可能性や、微小記録マーク間の近接場相互作用の影響など、新たな興味深い現象を発見して、この技術の多様な発展の手がかりを得ている。これらの成果は、従来の光技術によってはほとんど不可能と考えられていた100nm以下の微細領域に光技術を拡張する可能性を示している点で意義が大きいものである。

※所属名および役職は、受賞時のものです。