日本IBM科学賞第15回(2001年)受賞者
受賞者紹介
小林 修(こばやし・しゅう)
昭和34年6月13日生まれ
東京大学大学院薬学系研究科分子薬学専攻 教授

昭和 58年
東京大学理学部化学科卒業
昭和 60年
東京大学大学院理学系研究科
化学専門課程修士課程修了昭和 62年
東京大学大学院理学系研究科
化学専門課程博士課程中退昭和 62年
東京理科大学理学部応用化学科・助手
昭和 63年
東理学博士(東京大学)
平成 3年
東京理科大学理学部応用化学科・講師
平成 4年
東京理科大学理学部応用化学科
助教授平成 13年
東京大学大学院薬学系研究科
分子薬学専攻・教授平成 3年
東京理科大学理学部応用化学科・講師
専門:
有機合成化学・有機反応化学
贈賞の理由
有機反応媒体の構築と環境調和型化学プロセスの研究
小林教授は、有機化学反応の媒体である有機溶媒を水に転換する可能性に着目し、従来、有機溶媒中では実現不可能とされていた反応を水溶液中で達成するとともに、「地球環境に優しい」環境調和型プロセスの研究において傑出した業績をあげている。
小林教授は、「水溶液中で安定なルイス酸触媒」である希土類触媒の発見と体系化に成功した。ルイス酸触媒反応を示すものとして、希土類金属トルフラートを、さらには周期表上に点在する希土類金属以外のルイス酸を発見し、それらルイス酸に共通する性質を解明・体系化することに貢献した。さらに小林教授は、このルイス酸触媒を用いた新反応の開発研究に成功している。また、「界面活性剤一体型触媒」という触媒と反応基質をとりこんだ反応場を新たに構築することにより、水に不溶もしくは不安定な化合物でも、この反応場においては触媒反応が可能となることを示した。
小林教授は、希土類金属トルフラートが、従来のルイス酸触媒と異なり、少量で反応を促進可能なこと、さらには煩雑な操作を行うことなく100%回収・再利用可能なことから、環境に有害な有機溶媒が不用であることと合わせて、「地球環境に優しい」今世紀の新技術として期待されるものである。すでに、小林教授の開発した希土類金属トルフラートは、もっとも広く用いられているルイス酸触媒の一つであり、現在、工業レベルでの開発が進んでいる。
また、小林教授は、少量の不斉源から多量のキラル化合物を得る不斉触媒反応の分野、さらには、高分子固定化触媒の分野においても独創的な成果を挙げている。「マイクロカプセル化法」という新しい高分子固定化触媒の創製法を開発、スカンジウムなどのルイス酸やパラジウム触媒を高分子上に固定化することにより、触媒活性を損なうことなく、回収・再利用を可能にした。
以上のように、小林教授の研究業績は有機合成化学の分野において、環境調和型化学プロセス構築に関する極めて新しい可能性を示している。これは有機化学を基盤とするコンビナトリアル化学の基礎研究において独創的であり、本賞を贈るにふさわしいものである。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
