日本IBM科学賞 第17回(2003年)受賞者
受賞者紹介
阿波賀 邦夫(あわが くにお)
昭和34年7月14日生まれ
名古屋大学大学院理学研究科 教授
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昭和58年
東京大学理学部化学科卒業
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昭和60年
東京大学理学系研究科化学専門課程
修士課程修了 -
昭和63年
東京大学理学系研究科化学専門課程
博士課程単位取得退学 -
昭和63年
東京大学理学博士取得
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昭和63年
岡崎国立共同研究機構分子科学研究所 助手
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平成4年
東京大学教養学部・助教授
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平成7年
東京大学大学院総合文化研究科に配置換え
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平成9年~
平成11年科学技術振興事業団個人研究推進事業
(さきがけ研究21)研究員 -
平成13年
名古屋大学大学院理学研究科・教授
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【専門】
物性化学、分子スピン科学
贈賞の理由
新規分子磁性体の化学構造と物性探索
申請者は、磁性素子とは無関係と思われていたラジカル分子による「分子磁性」研究に顕著な業績をあげた。すなわち、分子磁性体の化学構造の解析並びに構造と物性との相関を明らかにしながら新規磁性体の開拓をするという、“分子スピン”なる研究領域を世界に先駆けて構築し、世界をリードしている。これら業績を、77編のオリジナル論文として発表している。氏の業績を以下に3つのカテゴリーに分けて説明する。
- 「有機強磁性体の開発」
1960年代多くの有機ラジカルが合成され、純粋有機磁性体の潜在的存在の可能性が指摘され、その開発が強く望まれていた。氏は、ガルビキノシルとよばれる有機ラジカルをもちいて、強磁性的分子間相互作用を分子論的に解明し、有機磁性体の合成・設計に指針を与えた。この自らの設計指針に基づき、ニトロニルニトロキサイト系ラジカルという有機ラジカルの磁性と結晶構造について系統的に研究を展開し、p-NPNNが、弱い強磁性的相互作用を有することを見出した。これは、有機強磁性体の世界初の発見につながった。
- 「新規低次元分子磁性体の発見」
p-NPNNの研究を発展させる形で、氏は従来の1次元的有機ラジカル結晶から一歩ぬけだし、多次元的相互作用を組み込むN-アルキルピリジニウムニトロニルニトロキサイド陽イオンラジカルの研究をおこない、反強磁性的カゴメ構造やスピンラダーといった1次元と2次元構造の境界に位置する低次元系スピン系の開発に成功した。たとえば、m-MPYNN+・X-(X=I-,ClO4-,BF4-)では、ラジカル1量体が、2次元の反磁性的カゴメ構造をつくることを発見した。
- 「機能性分子磁性体の開発」
分子磁性体は、従来の無機磁性体にはない優れた操作性や、たとえば薄膜化や小型化、量子効果といった機能性に優れた特徴を有している。氏は、1999年頃より環状チアジルラジカルや金属錯体クラスター、ナノ磁性体を対象とした研究を開始した。常磁性相と反磁性相の間で、室温双安定性をもち光スイッチングを起こす系や、単分子磁石の磁気構造相関の解明、ナノ球殻磁石の合成に成功した。分子スピン系を用いた双安定状態の設計という新分野になりうる興味深い話題を提供した。
このように、氏は分子磁性体を分子スピンの相互作用の観点から精査し、その基礎知見を基に新規分子磁性体を発見するという単なる偶然の発見ではなく、学術的な基礎にたった新規磁性体の開発を実践しつつある、更なる飛躍が期待できる研究者である。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
