日本IBM科学賞 第19回(2005年)受賞者
受賞者紹介
中谷 和彦(なかたに かずひこ)
昭和34年11月25日生まれ
大阪大学産業科学研究所 機能分子科学研究部門 精密制御化学研究分野 教授
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昭和57年
大阪市立大学理学部化学科卒業
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昭和60年
コロンビア大学化学科・研究員
(大学院在学中に留学~63年まで) -
昭和62年
大阪市立大学理学研究科
化学専攻博士課程単位取得退学 -
昭和63年
大阪市立大学理学博士取得
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昭和63年
相模中央化学研究所・博士研究員
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平成3年
大阪市立大学理学部化学科・助手
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平成5年
京都大学工学研究科
合成・生物化学専攻・助手 -
平成5年
新技術事業団個人研究推進事業
さきがけ研究21・研究員(兼任) -
平成9年
京都大学工学研究科
合成・生物化学専攻・助教授 -
平成13年
科学技術振興機構個人研究推進事業
さきがけ研究21・研究員(兼任) -
平成17年
大阪大学産業科学研究所・教授
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【専門】
有機化学、ゲノム科学
贈賞の理由
核酸を精密に認識する有機分子の開発と展開
中谷和彦氏は、有機小分子がDNAのミスマッチを特異的に認識することを世界に先駆けて実験的に示した。この概念はシンプルであるが理にかなっており、その応用は多岐にわたると期待される。すなわち、ガンや遺伝病などの診断法や治療法の開発につながる可能性もあり、今後の画期的発展を予感させる研究成果である。
核酸は互いに相補的な水素結合を持つ本来の組み合わせ(グアニン - シトシンおよびアデニン - チミン)以外に、8つの組み合わせが可能である。これら8種の塩基対は、ミスマッチ塩基対と呼ばれており、遺伝子変異の原因となる。
中谷氏は、このミスマッチ塩基対を形成する二つの塩基と、それぞれ相補的な水素結合基をもつ二つの複素環をリンカーでつないだ有機小分子を合成し、それを用いることによりミスマッチ塩基対を検出することに成功した。このミスマッチ認識分子と表面プラズモン共鳴法を用いて「ミスマッチ塩基対検出センサー」開発への指針を示した。
ガン細胞においては、DNA末端の繰り返し配列(テロメアリピート配列)が長くなっている。このリピートがヘアピン型構造を取るときに、グアニン - グアニン塩基対が高頻度で出現するが、中谷氏は、ここにミスマッチ認識分子が強く結合し、その伸長を阻害することを実験的に明らかにした。この成果は、ガン細胞だけに効く薬剤開発の新概念として注目を集めている。さらに、中谷氏はハンチントン病の原因遺伝子において、CAG(シトシン - アデニン - グアニン)リピートが長くなっていることに注目し、このリピートがヘアピン型構造を取るときに生じるアデニン - アデニンミスマッチに特異的に結合する認識分子を化学合成し、CAGリピートの繰り返し数を迅速に調べる化学センサーを開発した。この成果は、ハンチントン病の新たな診断手法につながるものと期待されている。
このように、中谷氏の核酸のミスマッチ塩基対を認識する有機分子の科学は、大きな可能性を秘めながら発展しており、化学分野にとどまらず、医学・生命科学分野においても大きなインパクトを与えている。この業績は日本IBM科学賞受賞にふさわしいものである。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
