日本IBM科学賞 第19回(2005年)受賞者
受賞者紹介
小形 正男(おがた まさお)
昭和35年2月9日生まれ
東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 助教授
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昭和57年
東京大学理学部物理学科卒業
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昭和59年
東京大学大学院理学系研究科
修士課程(物理学専攻)修了 -
昭和61年
東京大学物性研究所理論部門・助手
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昭和62年
理学博士(東京大学)
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平成元年
スイス連邦工科大学(チューリッヒ)・ポスドク
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平成3年
プリンストン大学・ポスドク
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平成5年
東京大学教養学部
物理学教室・助教授 -
平成12年
東京大学理学系研究科
物理学専攻・助教授 -
【専門】
固体物理学、物性理論
贈賞の理由
新奇超伝導体における強相関領域での超伝導機構の理論的研究
強相関電子系は、高温超伝導、金属?絶縁体転移、巨大磁気抵抗、非フェルミ流体的振る舞いなどの特異な物性を示すことから、基礎科学の観点からも応用の観点からも注目を集めている。特に、次々に発見されている新奇超伝導物質に関する理論は、強相関物理および物質科学の最前線として理論物理学の重要課題となっている。しかしながら、強相関電子系の理論的取扱いには本質的な難しさがあり、さまざまな処方箋が模索されている状況である。しばしば用いられる手法は近似理論か数値計算であるが、前者の有効性は強相関系ではしばしば疑わしく、また後者は往々にして有限サイズ効果等の影響による精度の不足がつきまとう。
小形正男氏は、擬一次元伝導物質、高温超伝導物質をはじめとする低次元強相関電子系に独自の方法で取り組み、新奇超伝導物質に関する理論を中心に多くの著しい成果をあげてきた。小形氏のアプローチは、鋭い物理的洞察力に基づく変分波動関数法に立脚し信頼性の高い理論を構築することを特徴としている。中でも、一連の業績の出発点となり小形氏の評価を確固なものとしたのが、強相関極限の1次元ハバード模型の厳密な波動関数による相関関数の計算である。小形氏はベーテ仮説に基づく変分波動関数を見出し、それを用いることにより1次元多電子系の基底状態の運動量相関およびスピン相関を高精度に求めることに成功した。この厳密な波動関数はOgata-Shiba波動関数と呼ばれ、その後の多くの理論計算にもインパクトを与えた著しい発見である。この先駆的な研究は1次元強相関電子系の理論に確固とした基礎を築いたものと位置付けられる。
小形氏はこの1次元系での成果を踏まえて、その後、変分波動関数を用いる手法を2次元強相関電子系に系統的に適用する研究を精力的に展開している。層状ペロヴスカイト銅酸化物系を想定した2次元t-Jモデルを変分モンテカルロの手法によって解析し、d波超伝導の安定性を広範囲な相図の中で明らかにした研究をはじめとして、より最近になって登場したストロンチウム酸化物やコバルト酸化物などの新奇超伝導物質に関する信頼のおける理論を構築してきた。小形氏の独創性に満ちた研究成果は、同氏の研ぎ澄まされた物理センスと優れた計算能力により生み出されたものであり、物性物理学に対して大なる貢献をなしたものと認められ、日本IBM科学賞を贈るにふさわしいものである。
※所属名および役職は、受賞時のものです。
