受賞者紹介
伊藤 公平 (いとう こうへい)
昭和40年8月25日生まれ
慶應義塾大学 理工学研究科 基礎理工学専攻 助教授
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平成 元年
慶應義塾大学理工学部計測工学科卒業
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平成 4年
カリフォルニア大学バークレー校 修士号取得
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平成 6年
カリフォルニア大学バークレー校 Ph. D. 取得
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平成 7年
慶應義塾大学理工学部・助手
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平成 10年
慶應義塾大学理工学部・専任講師
科学技術振興事業団・さきがけ研究21研究員 -
平成 13年
科学技術振事業団・戦略的基礎研究・研究代表者
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平成 14年
慶應義塾大学理工学部・助教授
日本物理学会・理事 -
平成 16年
物理系欧文誌刊行協会・理事
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専門:
半導体工学、量子情報工学
贈賞の理由
SiとGeの同位体の制御とエレクトロニクス応用の開拓
同位体とは、原子番号(陽子の数)が同じでありながら、質量数(中性子と陽子の総数)を異にする元素のことである。水素とウランの同位体は、核融合や核分裂と関連して重要なため、詳しく調べられてきたが、シリコンやゲルマニウムなど半導体の同位体は、化学的や電気的な性質がほぼ同じであるため、あまり注目されてこなかった。
近年、半導体結晶の「元素組成」を局所的に制御し、超格子・量子細線・量子ドットなどのナノ構造を作り、量子効果に基づく新物性や新機能を探索・活用する研究が盛んである。伊藤公平氏は、これを一歩前進させ、半導体を構成する「同位体組成」までも制御した構造を作る技術を開拓し、その物性と機能を調べてエレクトロニクスに活用するための独創的な研究を展開してきた。
まず、シリコンとゲルマニウムの結晶成長において、同位体の構成比を制御する技術を開拓し、ゲルマニウムの同位体としての純度を高めると、熱伝導度が3割も増すことを見出した。この事実は、LSIの大電力化に伴う温度上昇への対策と関連して注目されている。
また、LSIに不可欠のシリコン酸化膜を対象として、シリコン同位体を活用して熱平衡状態での自己拡散定数を精密に測定し、シリコンと酸化膜との界面では化学反応によって点欠陥が発生するため、原子拡散が促進されることを見出した。この知見を組み込んだ半導体プロセス・シミュレータを開発し、次世代LSI素子の設計技術にも貴重な貢献をなした。
さらに、シリコン同位体を量子計算機に活用するための独創的な研究を進めている。量子計算機は、従来の計算機で莫大な時間を要する計算を、短時間で処理できる可能性を持つ。大型の装置を用いて小規模な量子計算を実現した研究はあるが、実際の情報処理に必要な大規模計算には、多数の量子ビットが集積可能な固体量子計算素子を実現するための研究が不可欠である。伊藤氏は、シリコンの同位体を制御した結晶の作成に成功し、核スピンによる量子情報の保持時間が世界最長の25秒にも及ぶことを明らかにした。
さらに、結晶表面で同位体原子を配列させる技術や集積型微小磁石の形成技術なども確立し、核スピンを用いた量子演算素子を実現するための基礎物性解明の研究と要素技術の開発に大きく貢献した。
以上のように、伊藤氏は、シリコンやゲルマニウムの同位体を制御した半導体構造の形成技術を開拓し、それらの新たな性質と応用可能性を示し、エレクトロニクスの将来の発展に新風を吹き込んだ。これらの業績は、日本IBM科学賞にふさわしいものである。
※所属先・役職・年齢は2006年8月15日現在
