受賞者紹介
大井 貴史 (おおい たかし)
1965年12月1日生まれ
名古屋大学 大学院工学研究科 教授

1989年
名古屋大学工学部応用化学および合成化学科 卒業
1991年
名古屋大学大学院工学研究科応用化学専攻博士前期課程 修了
1992年~1994年
日本学術振興会特別研究員(DC)
1994年
名古屋大学大学院工学研究科応用化学専攻博士後期課程 修了
1994年
日本学術振興会特別研究員(PD)
1994年~1995年
米国マサチューセッツ工科大学化学科 博士研究員
1995年
北海道大学大学院理学研究科化学専攻 助手
1998年
北海道大学大学院理学研究科化学専攻 講師
2001年
京都大学大学院理学研究科化学専攻 助教授
2006年
名古屋大学大学院工学研究科化学・生物工学専攻 教授
専門:
有機合成化学
※所属先・役職は受賞当時のものです。
贈賞の理由
有機イオン対精密触媒による不斉合成法の研究
現在の有機合成化学では、触媒反応の収率や選択性が高いことはもちろん、排出物が少なく有機溶媒を用いないプロセスの実現が求められている。大井貴史氏は、有機カチオンとアニオンのイオン対であるアンモニウム塩やホスホニウム塩を独自の発想で精密に設計し、卓越した活性と立体制御能を備えた分子性触媒の開発に成功するとともに、新しい高付加価値化合物の合成プロセスを実現している。
すなわち、(1)水にも有機溶媒にも可溶なキラル有機相間移動触媒を新たに設計し、天然型および非天然型アミノ酸の実用的な合成手法を確立した、(2)有機テトラアミノホスホニウム塩がキラル有機分子触媒として機能することを世界に先駆けて立証した、(3)新たな発想に基づいて、有機ホスホニウム ― アリールオキシドからなる超分子型イオン対の有機分子触媒を精密に設計し、高性能有機分子触媒としての有用性を明らかにした。同氏の研究成果は、クーロン力のみによって結びついたイオン対全体の三次元構造と触媒機能の相関に関する学理を築き、有機分子触媒を用いる反応開発の新たな指導原理を提示したものである。
また、本触媒系独特の分子構造や反応機構は、超分子化学および構造化学に対して大きなインパクトを与えるものである。実用的観点では、本触媒群が安定で取り扱いやすく、回収や再利用が容易な塩であると同時に高い活性と立体制御能を発揮する点が特筆される。これらの業績は日本IBM科学賞にふさわしいと認められる。
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