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オーバーブッキングで飛行機に乗れないなんて。。。なぜこんなことが?
あらゆる種類の問題に数学モデルを適用して変革を目指すことを声高に唱える企業が増える中、数学がクローズ・アップされてきました。その結果、優れた数学者に対する需要が増えてきており、金融、医学、エンターテインメントなどあらゆる分野で数学者への求人が急増しています。
読者の方々は、三角関数や微積分は何かの役立つことがあるのだろうかと、疑問に思われたことがあるかもしれません。しかし、多くの分野で数学が高い地位を認められるようになった現在では、数学や数学者に対する古い固定観念はもはや通用しません。今日の数学の天才たちは、ビジネスや社会において最も差し迫った問題を解決するために最前線に立っているのです。
アルゴリズムを使って航空会社と乗客の両方の不満を緩和できるのか
*オリジナル英語版ではPodcastでお届けしています
ナレーター: 年末年始や大型連休などの旅行シーズンを想像してみてください。皆さんはきっと、早めに空港に着いてチェックインを済ませ、休暇をスムーズにスタートさせたいと思っていることでしょう。ところが、皆さんの思うようにいかない可能性が 1 つあります。それは、予約した飛行機に最終的に乗れるかどうかということです。この問題の原因は、航空会社の利幅がますます狭まる中で、払い戻し可能な航空券の利用客による「ノーショー (予約しておいて当日現れないこと)」の埋め合わせをするために、航空会社が慢性的にオーバーブッキングを続けていることにあります。これは、航空会社にとっては悩みの種です。なぜならば、特にビジネス旅行客の場合は払い戻し可能な航空券を利用することが多く、それらの顧客による空席が積み重なると、大手航空会社にとって数十億ドルもの減収につながる可能性があるからです。それを避けるには、オーバーブッキングによって飛行機を満席にしなければなりません。ところが、すべての予約客が来てしまった場合、今度は一部の乗客をそのフライトから締め出さなければならず、お詫びのための無料クーポンの配布や、腹を立てた顧客が以後その航空会社を利用しなくなることによる減収の可能性といった、大きな損失を被ることになります。このような問題を解決するのは、数学者の得意とするところです。リック・ローレンス 博士は、IBM ワトソン研究所の予測モデリング部門を統轄している数学者です。
リック・ローレンス:「航空会社には、特定フライトでのノーショー率を相当に高い精度で予測できることが必要です。従来のアプローチでは、履歴と統計に基づいてモデルを構築していました。つまり、あるフライトの過去の類似例に注目して、ノーショー行動の事実上の平均値を算出するのです。実際には出発日が平日の場合と週末の場合とではノーショー行動が異なります。その他にもさまざまな要素が影響しますが、要するに、類似したフライトに関する集計した過去の行動に注目するのです。このアプローチ、つまり従来の手法では、そのフライトを予約した乗客の構成比は考慮されません」
ナレーター:そこで、リック・ローレンス をはじめとする IBM の数学者たちは、実際の航空会社と協力して、予測精度の改善が可能かどうかを確認するためのテストを実施しました。このテストの実施に当たり、研究チームでは 10 週間分の 100 万人以上の匿名の乗客記録を入手しました。各記録には、「ショー」と「ノーショー」のどちらかのラベルが付けられていました。次に研究チームは、個々の匿名乗客について、単にその乗客が購入した航空券が払い戻し可能か否かだけでなく、いくつかの関連付けを行う機械学習モデルを構築しました。
リック・ローレンス:「つまり特定の乗客の履歴を見るのではなく、乗客とその特定された予約に関するある程度の情報を得ることができるのです。例えば、航空券の予約にどのチャネルを利用したのか、旅行代理店を通したのか、オンラインで予約したかというようなことです。さらに、具体的なオンライン予約チャネルも正確に把握できました。その機能を利用しただけでも、相当な量の予測情報を見つけることができました。さらに、私たちはそれ以外の情報にも注目しました。例えば、特別食を注文したか、同伴者はいたか、旅程に含まれる乗り継ぎ便は何本だったかといった情報です」
ナレーター:研究チームは、10 週間分のデータを使って、どの乗客が当日現れる可能性が高いか否かを予測できるように、モデルを「トレーニング」しました。精度を高めるために、ローレンス 博士のモデルには、その航空会社が従来使用していたフライト履歴に基づく予測も組み込まれました。こうして数学者たちは、従来のフライト予測モデルを乗客レベルの予測と組み合わせ、集約された結果を機内レベルの予測とすることによって、従来のモデルのみを使用した場合と比較して新しいモデルがどれほどの正確性を発揮するかを確認できたのです。
リック・ローレンス:「統計的な相互検証によって、私たちの手法が従来の履歴による手法と比べて、いかに優れているかを示す測定基準が得られました。私たちの分析結果からは、従来のモデルの約 2 倍の精度でノーショーを割り出すことが可能であることが判明しました」
ナレーター:この新しい手法を適用すれば、ノーショー乗客による直接的な減収と、せっかく来たのに搭乗を拒否された乗客の不満による潜在的減収の、両面での損失をカットできる可能性があります。しかし、リック・ローレンス 博士は、ノーショーの割合がときには 40% に上ることもある、人間以外の物を輸送する業種にこそ、さらに大きな潜在的可能性があるとみています。
リック・ローレンス:「飛行機の乗客が現れるかどうかという問題に加えて、現在私たちが研究している興味深い問題の 1 つに、海運業界において、予約した船便に間に合うようにコンテナーが届くかどうかという問題があります。これも航空会社の場合と同じ関係ですが、船会社の場合、顧客が予約した船便に間に合うよう積荷を届けなかった場合の罰則や阻害要因は航空会社よりも少ないのが現状です。さらに興味深いのが、例えば船に積み込むコンテナーの場合、当然のことながらさまざまに異なるという事実です。ここで問題を拡張して、コンテナーには飛行機の乗客の問題と同様のノーショーの確率だけでなく、寸法やそれ以外の特性、例えば冷蔵の必要性などの問題があるという事実について検討する必要があります。その結果、海運業界では、航空業界向けのシナリオとはやや異なる、追加の最適化要素が加わります」
ナレーター:ほとんどの購入商品に対して誰もが何らかの形で輸送費を支払っているのですから、いつの日かこの問題が解決すれば、わたしたちに大きなメリットが生まれる可能性があります。それはさておき、今度の休暇の話であればどうでしょうか。差し当たっていえるのは、予約したフライトに乗り遅れないように急いだ方がよいということです。
「Ideas from IBM」と ibm.com ホームページの、デレク・ベーカー がお送りしました。
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