流通業界には、いままた、大きな変革の時期にきています。かつて、モノが豊かではなかった時代、市場はメーカー主導で作られてきました。メーカーが消費者を教育する、そんな時代だったといっていいでしょう。そうした市場環境の中、小売はメーカーの販売チャネルとしての役割を担うにすぎませんでした。
その後、スーパーマーケット、コンビニエンスストアが、「流通革命」を起こしてきたことで、市場における小売の力は徐々に大きくなってきます。しかし、ここでも消費者の視点は置き去りにされました。この時代の「流通革命」とは、実際にはメーカーと小売のパワーゲームだったのです。
それでも経済が持続的に成長を続けていたときは、企業も成長することができました。一部の消費者が振り向いてくれなかったとしても、経済の成長のほうが大きいため大きな問題にならなかったのです。しかし21世紀になり、少子高齢化が進み、総人口は増加から減少へと反転しようとしています。さらに、所得格差拡大、経済の停滞(成熟)という社会環境の変化が起き、かつて日本が経験したことのない時代がきています。
こうした環境の変化の中で、企業が単に“安いだけ”の商品や“プロダクトアウト”的な画一的商品を提供しても、消費者を振り向かせることは困難になってきています。今後は多様化・複雑化した消費者に対応していかないと、企業は成長どころか存続さえも危ういというところまできています。
そこで必要となるのが、「消費者起点の需要創造モデル」です。本当の消費者視点に立った、経営のあり方が問われているのです。メーカーや小売といった垣根を越えて協働し、消費者の声を真摯に聞き、消費者の必要な商品やサービスを考えない限り需要は生まれない時代になっています。
IBMは、今後の流通業界は、消費者との双方向性を重視し、多様化・複雑化した消費者の視点を取り入れ、各企業はパートナーとしてビジネスに取り組んでいくことが重要だと考えています。その際、企業活動において、大きく分けて5つの領域での革新が必要になってきます。ここでは5つの領域について説明します。
流通業界の今後の方向性と5つの革新領域
メーカー・卸・小売のワクを越えた協業には、情報共有が不可欠です。そのためには、グローバル標準化されたデータと同期をとりながら情報共有するためのインフラ整備を進めること、協業のためのプロセスやルール作りをすること、カルチャの変革をすることなどが重要です。
現在の消費者は、店舗だけではなくインターネットなどさまざまなチャネルで消費行動を行います。一方、ポイントカードや電子マネーの普及によって、個人の購買行動を把握できる環境が整ってきています。消費者を理解するためには、これらの情報を統合的に管理することが重要です。
消費者に受け入れられる店づくりを実現した企業だけが生き残ることができる時代になっています。販売データから店舗・地域ごとの需要特性を把握することにより、店舗特性にあった品揃え、棚割実現を可能にすることが重要です。
さまざまなテクノロジーに慣れた消費者に対しては、新しいテクノロジーを使ってアプローチするだけでは大きな効果は見込めません。消費行動に沿って、必要な情報を最適なタイミングで最適な量だけ提供するための仕掛けが重要です。
多様な消費者に対応するために、今後のサプライ・チェーン管理は、ますます高度で複雑なものになります。また、スピードや効率だけでなく、「可視性」という評価軸の重要性が増してきています。

