国内市場が飽和状態に近づき、消費財メーカーが売上拡大を目指すためには、海外に市場を求めざるを得ない状況になっています。一方、テクノロジーの発達により地球上の境界がなくなり世界がフラット化している状況で、企業はますますグローバルを視野に入れた戦略を推進していく必要があります。ここでは、グローバル化の目的やそのためのステップ、または必要なケーパビリティなど、消費財メーカーがグローバルに統合された企業を目指す際に、今後、なにを検討すべきなのかをご説明します。
グローバルに統合された企業、GIEとは
世界では、中国、インド、ロシア、南アメリカなど、次々に新しい市場が生まれてきています。こういった新興市場にタイムリーに打って出ていかないと、今後、企業の成長は望むことができません。一方、ITを始めとするテクノロジーの発達により、移動や情報の伝達に必要な時間はどんどん短くなり、結果として平準化が進み地球はフラット化しているといわれます。グローバル貿易の量が爆発的に増加する一方、国境を越えたM&Aも記録を更新し、グローバルな経済フローは急速に高まっています。このような背景から企業にはグローバル化が求められており、消費財メーカーはGIE(Globally Integrated Enterprise:グローバルに統合された企業)に変わっていく必要があると考えられます。
これまで、グローバルで活動しようとする企業が最初にぶつかる課題は、地理的な距離と文化の相違でした。そして、国境を超えた事業活動をコントロールし利益を獲得するために「効率的な事業運営」、「知識の移転と有効活用」、「現地対応と企業統治(ガバナンス)との適切なバランス」の3つを実現しようと試行錯誤を繰り返しました。
GIEは、それらの課題に解決の道を開くものです。「多くの地域での市場経済化の進展」、「経営資源の移動に対する規制緩和」、「情報通信技術の進展」という環境の変化が、企業価値向上への挑戦を、さらにやりやすいものにしています。
図1. 国際企業、多国籍企業とグローバルに統合された企業の違い

GIEに求められる6つの能力
GIEは、そのオペレーションと戦略が、地域、機能、組織の枠を超えて統合されています。また、グローバルレベルで内部サービスを共有し、世界中に展開可能な資産を蓄積し、市場の要求に迅速かつ効率的に反応します。そして、GIEはグローバルレベルの統合効果とローカルでの適合効果の実現を狙います。IBMでは、GIEとは次の6つの事柄を実現できる企業であると定義しています。
- グローバルな競争社会での事実情報にもとづいた意思決定
- グローバル資産の最大活用
- 社内外との協業、知的財産方針や運用方法の積極的な採用・共有
- グローバルな価値観、スキル、プロセス、国境を越えた業務運営
- コンポーネント化されたさまざまなサービスの活用
- オープンな事業環境での自社の専門性への特化、価値の確実化
そのため、GIEを目指す企業には、次のような能力が求められることになります。
- グローバル資産活用能力
全世界にちらばる経営資源(人材、資金、物的資産)の状況をリアルタイムに把握し活用する。特にグローバルなビジネスに通用する人材を育成し活用する - 潜在機会発掘能力
各地域市場の特性やその変化を深く理解し、機会をいち早く捉える - リスク管理能力
各地域にまたがるさまざまなリスクを共通のフレームワークで管理する。リスクリターンの最適化を図るとともに、自社のリスク耐性の範囲内にリスクを限定する - オープン環境における価値の実現
変化する環境の中で、自社の強みを活用し、ビジネスモデルの最適化を図る - 機能のコンポーネント化
事業バリューチェーンにおける機能をコンポーネント化する。コア機能とそうでない機能を識別する。各機能の特性に応じた経営資源の配分を行う - 協業能力
イノベーション促進やノンコア機能の効率化のために、社外とコラボレーションする。コラボレーションのためのプロセスや意思決定基準が存在する
図2. GIEを目指すために必要となる6つの能力

消費財メーカーが目指すべきGIEの方向性
今日のビジネスは「国境を意識することが希薄」となりつつあり、今後もその傾向はより強くなっていくでしょう。企業間競争の様相も変わり、グローバルにヒト・モノ・カネ・情報をうまく活用できる企業が急成長していくはずです。多くの企業は、「グローバルNo.1企業を目指す、目指さない」に関わらず、このような環境変化の影響を受けることになります。
一方で、人口減少、労働人口減少の影響から、日本での消費数量の伸びは、あまり期待できません。また、市場の二極化・細分化がさらに進行し、1アイテムあたりの売上高は下降傾向になりますから、結果、多くの企業で国内での事業効率は低下していくことになるでしょう。
そういった背景から、消費財メーカーもやはりGIEを目指して変革に着手しなくてはなりません。すでにグローバル化を図っている企業でも、国際企業、多国籍企業を超えて、GIEを目指す必要があります。
図3. グローバル化における3つの成長段階
ビジネス効率化に向けた課題と解決の方向性
グローバル化を消費財メーカーの立場で考えれば、まずは中国ビジネス強化が最優先テーマでしょう。ここからは、中国ビジネスの強化を例に、消費財メーカーがGIEを目指すにあたって、どのように課題を整理し、解決の方向性を探っていくかを考えて見ます。
消費財メーカーが中国ビジネスの強化という場合、他社との業務提携や事業買収、あるいは生産・物流領域での大規模な設備投資は視野に入っているはずです。つまり、中国での投資を「社内外の資産をいかして、いかに少ない費用で最大の成果を得るか」、あるいは中国以外から「投資のための原資をいかに生み出すか」が重要な課題です。当面の目標として、一般には「グローバルでの売上拡大」が「グローバルでの効率化」のどちらかを強く意識することが重要ですが、この中国ビジネスの強化では「グローバル規模のビジネス効率化」が目標となるわけです。
中国において少ない投資で最大の効果を得るためには、手作業でもローコストな生産ラインの実現、工場の安定操業、急激な需要拡大を吸収できる生産委託先の確保といった課題に留意し、設備投資を抑えた生産体制を構築します。また、中国以外の地域で投資の原資を捻出するためには、経営資源の見える化、大規模なコストダウン施策の遂行が必要となり、グローバル視点での資源の最適配分、原材料費の抑制および安定確保、ノンコア業務のアウトソーシングなどの課題に取り組む必要が出てきます。これらの課題は、さきほどの「GIEを目指すために必要となる6つの能力」に照らして具体的な施策を検討することになります。
図4. ビジネス効率化に向けた課題と解決の方向性
見てきましたように、GIEを目指しての取り組みでは、まず目標を立てます。それから目標実現のための課題を整理し、「6つの能力」に沿ってどういう施策が必要かを考えます。さらにそれら施策を実行するための仕組みに、1つずつ展開していくわけですが、実際には、この最後の仕組み(基盤)を作る作業が大きなウエイトを占めることになります。IBMでは、自らグローバル化したアセットを持っています。グローバル実施展開支援PMOなど、GIEを実現するさまざまなソリューションをご提供しお客様のGIE化の迅速な推進をご支援しています。
図5. GIEに向けての取り組むべき仕組み
筆者紹介
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日本アイ・ビー・エム株式会社
グローバル・ビジネス・サービス事業
コンサルティング&SI 流通サービス事業部
コンシューマー・プロダクツ・インダストリー
パートナー
宮崎 信秀
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