
去る2008年7月7日から9日に開催された主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)が地球温暖化防止に向けた首脳宣言を採択したこともあり、日本を含む世界で環境問題に対する取り組みが加速しています。CO2に関しては日本でも2050年までに60から80%削減するという目標が検討されていますが、これは2050年には今の5分の1程度しかCO2を排出できないということを意味します。ここでは、この環境問題に対する取り組みとして、企業に何が求められているのか、考えてみたいと思います。
環境経営から低炭素経営へ
「政府が2050年までの温暖化ガス国内排出量の削減目標を60から80%で調整、国内排出権取引導入に前向き」(2008年5月11日付け『日本経済新聞』)とのニュースが流れたことで、日本もついに、低炭素社会への突入を開始したといってもいいでしょう。「低炭素社会」とは「低炭素排出で安定した気候のもとでの豊かで持続可能な社会」を意味し、CO2排出量のコントロールがその重要な課題です。このCO2削減への取り組みにおいて、日本は遅れてスタートしたといってもよく、たとえばイギリスでは「排出権取引」の仕組みに加えて「気候変動税」(炭素税)、「再生可能エネルギー」義務を組み合わせた実効性の高い取り組みをすでに2000年から始めています。
排出量60から80%削減という数字は、分かりやすく言えば、江戸時代の生活レベルに戻ることを意味します。実際には、相当に厳しい社会が訪れることになるわけで、現在の考え方や技術の延長線では解決するのが難しく、大きなパラダイム・シフトが起こると覚悟する必要があるでしょう。今後、我々はCO2排出量を意識した生活様式を、企業は経営効率の指標としてのカーボンプロダクティビティ(炭素効率)を受け入れ、実践していかなければなりません。お客様はCO2に敏感な企業を支持するようになり、一方ですべての商品・サービスに炭素価格が組み込まれることになるでしょう。
これにより訪れる社会は、CO2が価格を持ちグローバルな通貨となるという意味で、「CO2本位制」と呼んでもいいものとなります。使えるCO2の排出量が有限であり、その制限が人間活動や経済活動の大きさを決めます。そして、限られたCO2排出量の制限の中で経済活動を行い利益やベネフィットを極大化することが必要となってきます。
今後、低炭素社会は、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の問題というよりも、社会インフラ構築を含む大きなビジネスマーケットととらえるべきでしょう。炭素会計が企業の経営マターになり、生き残るためには、温暖化対策が必須となります。また、社会の仕組みが変わるため、その仕組みを構築するビジネスでスタンダードを取ることが重要です。
図1.環境経営から低炭素経営へ

(出典:「Cleantech Group LLC, September 2007」をベースにIBCSにて作成)
低炭素社会で企業が生き残っていくためには、環境問題に対する取り組みを法令順守といった消極的なものから、より積極的なものへと変えていく必要があります。環境への取り組みを武器に、企業の成長の源泉としていくという考え方が経営に求められてくるのです。
図2.環境への取り組みは成長の源泉としてとらえるべき

低炭素経営への取り組み
具体的にCO2排出量を削減していくためになにをしたらいいのか、というのは、実は難しい問題です。たとえば、流通業の少頻度大量配送と多頻度少量配送の場合について考えてみましょう。輸送から発生するCO2量の観点から、一見、多頻度少量より少頻度大量配送のほうがいいような気がしますが、在庫量が増すことから、倉庫施設から発生するCO2は増えてしまうケースもあり、単に配送のトラックの問題として捉えるだけでなく、物流プロセス全体を捉えてCO2の問題を考える必要があるわけです。
生産拠点や物流拠点のロケーションについても、これまでとは違った判断が必要になるケースが出てくることが考えられます。単価の安い遠距離の生産施設を拠点とするよりも、多少単価が高くても輸送時のCO2排出量の少ない近距離の生産施設のほうが、総合的には有利となることもあり得るということです。
さらにコストの観点から見た場合でも、CO2排出権価格が高騰したような場合には、設備面にコストをかけてでもCO2排出量を削減したほうが抑えられるというようなことも起きるでしょう。総合的に判断して、ベストミックスとなる選択肢を探すことが重要です。
CO2排出量を削減するためには、まずCO2を可視化する必要がありますが、それも決して容易ではありません。小売り店舗を考えてみても、1つのビルを占有しているような場合ならその施設で消費されるエネルギーを計算することができても、あるビルのフロアの一部を店舗として運用しているような場合は、厳密なエネルギー消費を把握することは難しいでしょう。対策についても同様で、CO2の可視化ができたとしても、細かくコントロールするためには、ビルごとといった施設単位、あるいはサプライチェーン全体を単位に取り組む必要が出てきます。
CO2の可視化と削減には、着実なステップの積み上げが必要です。それは、CO2排出状況の調査・分析から、現場CO2削減施策の立案、環境KPIによる指標管理といったステップです。
図3. CO2の可視化と削減には着実なステップの積み上げが必要

低炭素社会に対するIBMの取り組み
流通業界の環境問題に対する取り組みは、同じ国内でも製造業などに比べると遅れている観があります。法整備の問題、社会的圧力の問題など複数の原因があると思いますが、一番はサービスが単独の企業内で完結していないということだと思います。商品の製造や物流を他社に依存していることが多く、そのためCO2排出量を把握するのもコントロールするのも難しいというのが、流通企業の実態でしょう。
日本IBMは、この(2008年)6月9日に富山で行われた環境シンポジウムの中で低炭素原則として、次の3つの項目を挙げています。
- 私達は低炭素企業になります。
- 私達はお客様の炭素生産性の向上を支援します。
- 私達は低炭素社会の実現に貢献します。
「炭素生産性」とは、限られたCO2排出量でいかに最大限の価値を引き出せるのかという考え方で、炭素生産性の向上にITの支援は欠かせません。
IBMは、CO2を可視化する手法である「Green Sigma」や「Green Consultation」をはじめ、今後続々とソリューションを提供する予定ですが、まずは、「環境コストQuick Assessmentプログラム」と呼ぶ評価プログラムで企業診断を行ってみることをおすすめします。環境コスト分析データベース、調査項目テンプレート、課題仮説テンプレート、環境ITシステムテンプレートなど、IBMのナレッジを利用することにより、最短2週間から、分析・ベンチマークを実施し、短期間に診断、今後のアクションプランを作成していきます。
図4. 環境コストQuick Assessmentプログラム
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筆者紹介
IBM ビジネスコンサルティング サービス株式会社
企業変革コンサルティングサービス
IBMグリーンコンサルテーション
アソシエイト・パートナー
駒形 佳幸
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