本文へジャンプ

小売業における価格最適化への取り組み

IBMの価格最適化ソリューションのご紹介

目からうろこが落ちる価格設定って?

消費者の価値観の多様化や消費行動の二極化、消費者の情報武装、あるいは競争環境の変化などを背景に、小売業ではコア・アクティビティの変革が求められています。小売業は、消費者ニーズをより深く理解した上で、品揃えや価格設定・販売促進についての戦略を立案し実行していかなくては、今後、勝ち残っていくことができません。ここでは、そのなかでも特に重要な価格の最適化について考えます。併せて、デマンドテック社の最適化ソフトウェアを利用した、店舗、SKU単位での戦略的価格設定を可能にするIBMのソリューションについてもご紹介します。

小売業を取り巻く環境の変化

消費者は、コモディティ商品には低価格を求め、逆にこだわりの商品には高い代金を支払ってでも価格以外の価値を求めます。ひとりの消費者が、普段の昼食はファーストフードで済ませる一方で高級車を所有するような、二極化した消費行動を取るように価値観が変化しているのです。また、インターネットの普及などITの発達を背景に、消費者の情報力が強化されています。購入予定の商品、高価なものであれば特に、消費者はその商品について調べ、比較し、口コミの評価で情報武装します。商品だけでなく購入する店舗についても、それらの情報をもとに決定するケースが増えています。

一方で、小売業の競争環境にも変化がおきています。経済成長を続けていた時代が終焉を迎え消費が減少傾向にあるなかで、消費者1人あたりの小売店の営業面積は逆に増えています。スーパー、ディスカウントストア、ドラッグストアなど、業態を超えた店舗同士が同じ地域のなかで熾烈な競争を行っており、小売業の成長率は年々低下しているのが現状です。さらに最近のことですが、エネルギーや原材料費の高騰もあり、小売業への価格に対するプレッシャーは、上流から押し寄せる状況もあります。

このような環境のなかで利益を出しながらも競争に勝ち残っていくためには、顧客起点の経営を実践することが重要になってきます。そのためには、消費者ニーズをより深く理解し、マーチャンダイジング戦略の立案から実践までを行うことが必要です。そうすることで、顧客の支持をとりつけ、ファンを増やしていかなければなりません。今後は、店舗単位で、消費者のニーズや競合条件を考えながら、品揃えや価格設定、販売促進を戦略的に決めていかなければならないのです。

価格最適化への取り組み

ここでは、マーチャンダイジングのなかでも特に重要な、価格設定について見ていきましょう。価格設定にも、販売促進やマークダウン(見切り販売)など特殊な場面がありますが、通常商品の価格を最適化することを考えます。

価格最適化では、カテゴリーやSKU(Stock Keeping Unit:単品)ごとの販売データ、商品データを分析し、販売戦略と合わせることで価格を算出し、カテゴリーの役割に応じた効果の最大化を目指します。戦略的に価格を決定するためには、SKUごと、そして店舗ごとに条件を考えなければなりません。すべての店舗データから導き出した平均値的な価格では、大きな効果は期待できないからです。たとえば、オフィス地域なのか、住宅地域なのか、駅周辺の繁華街なのか、といったことでは大きく需要が異なりますし、同じ住宅地域でも、小さい子どもを抱える若い世代が多ければ価格に敏感といった特性の違いも出てきます。つまりそれぞれの店舗がおかれた、商圏の特性を考慮することが必要だといえます。

考え方は20年ほど前からあったのですが、膨大なデータを処理しなければならず、実現できませんでした。しかしITが発達したいまなら、実現が可能です。もちろん、価格最適化の理論も進化しています。

図1. 従来の価格決定と目指すべき価格最適化
(前)従来の価格決定→(後)目指すべき最適価格決定。(従来)仕入れ値および競合他社との比較により決定→(目標)商品の需要特性にもとづき値ごろ価格を決定。(従来)個々の商品ごとの価格決め→(目標)カテゴリー全体の売上、販売数、利益の最大化をめざした価格決め。(従来)短期的視野に基づく価格決定→(目標)カテゴリー戦略にリンクした価格決定。

価格を決定するためには、まず、価格弾力性を把握することから始めます。商品の価格を下げれば売り上げが伸びるのか、あるいは価格を上げても売上げに影響しない、といった特性です。価格弾力性は、価格と売れ数、利益の関係を示すグラフで示すことができます。

価格弾力性は、もちろん商品、SKUごとに違います。同じ乾電池でも、需要の高い単三電池や単四電池は価格弾力性が高く価格を下げると売れ数は大きく上がりますが、補聴器用のボタン型電池のような特殊な用途の商品は、価格を変えても売れ数にあまり変化はありません。さらに価格弾力性は店舗によっても違いますので、店舗ごと、SKUごとの価格弾力性を調べることになります。

次に、カテゴリーごとの戦略を立案します。たとえば、赤ちゃん用品は利益を出さなくてもいいが数が出るようにしたい(つまり、お客様がたくさん来店するようにしたい)、ワインは利益が最大になるようにしたい、といった戦略です。それが決まれば、価格弾力性のグラフから売れ数が最大になるポイント、あるいは利益が最大になるポイントを選び出し、価格を決定することができます。

価格最適化は単品だけでなく、複数の商品に対して行うこともできます。たとえば、機能的にはほとんど変わらない「電気ドリル」の製品に、最高級品(13,800円)、高級品(12,800円)、普及品(9,800円)の3つがあったとします。この場合、最高級品と普及品は売れますが、高級品はあまり売れません。そこで、高級品の価格を12,800円から11,800円に値下げすると、最高級品の売れ数には変化はありませんが、普及品の売れ数が減少し、高級品の売れ数が増加します。このような複数の商品をまとめて利益を最大化させるような価格付けも可能なのです。

さらにカテゴリー全体で価格最適化を行うためには、商品間の関係性も知る必要があります。商品には、たとえばシャンプーとリンスのように同時に売れることの多い組み合わせが存在し、それを「補足品」と称します。それ以外にも、「関連品」、「競合代替品」、「同時購買代替品」といった商品同士の関係性があり、それらを価格決定の際に考慮します。

[補足品]
……シャンプーとリンスのように同時に売れることの多い商品

[関連品]
……紙おむつと粉ミルクのように、補足品ほどではないが同時に売れることが多い商品

[競合代替品]
……洗剤のように、1つの商品が売れると違うブランドの洗剤は同時には売れないといった関係の商品

[同時購買代替品]
……ある商品とその色違いのように、ある商品が品切れしたような場合に代わりに売れるような関係の商品

こういった関係は、店舗によらない普遍的なもののように思われますが、その強弱はやはり店舗ごとに違います。ここでも店舗ごとにデータを分析し戦略を立案することが重要になってくるのです。

実際は、店舗のブランド戦略、競合店舗との比較、店舗の価格付けルール等、各種の制約条件の下で最適価格を決定します。図2は、価格弾力性から描いた利益曲線に価格設定範囲と価格末尾ルールを制約条件として適用した場合の最適価格の例です。

図2. 制約条件下での価格決定
価格弾力性から描いた利益曲線に価格設定範囲と価格末尾ルールを制約条件として適用した場合の最適価格の例。制約条件1:現行価格のプラスマイナス10%の範囲内で設定。制約条件2:価格末尾ルールは、5,6,7,8で設定。この例の場合、最善の価格ポイントは525円となる。

IBMの価格最適化ソリューションとは

価格設定は、現在は、企業内の個人のスキルに依存して行われていることが多いようです。小売業が、企業として価格設定の業務プロセスを確立しているケースはまだまだ少ないというのが現状でしょう。また、仕入れ価格や競合店との比較などをもとに価格が決定され、本来必要な消費者の視点が取り入れられていないケースも多々見られます。

IBMでは、これまでご説明したような方法論に基づく価格設定プロセス確立のためのソリューションをご提供いたします。データに基づいた価格設定を行う、あるいはあらかじめ決められた方法論にしたがって価格を最適化することで、業務の標準化と効率化にも貢献します。この価格最適化ソリューションを導入すれば、需要の中長期的な予測を行うことができるようになり、サプライヤーとのコラボレーションによるカテゴリーマネジメントや販売促進活動の改善に繋がることでしょう。

図3. 価格最適化ソリューションの導入プロセス
1. データの収集(現在保有する過去の販売実績・マスターデータを収集。POS データ、商品マスタ情報、店舗情報、競合店情報、顧客カード情報、マーケットデータ) 2. データのクレンジングとモデリング実施(収集データの精査、属性定義等を行い、商品・店舗別の需要モデルを作成。属性定義、モデル作成) 3. 最適価格を生成。内容を吟味(作成した需要モデルに各種の制約条件と最適化方針を適用し、最適価格と効果を掲載。サイクル:価格ルールと戦略を入力→最適価格を生成→予想内容を吟味→新たなルールや目標を設定→再び、価格ルールと戦略を入力...へと繰り返す) 4. 最適価格を店舗で実行(最適価格による販売を店舗で実施し、実施状況とその結果をモニタリング。新価格での販売を開始、売上・売数・粗利等を確認)

筆者紹介

  • 成田顕彦の顔写真

    日本アイ・ビー・エム株式会社
    グローバル・ビジネス・サービス事業
    流通サービス事業部
    ビジネス・ソリューション・プロフェッショナル
    成田 顕彦

本記事中に記載の数値や固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。

会員向けサイト

会員 / メルマガ登録

お客様専用会員制サイト「Easy Access」のご紹介