
企業のコア・プロセスの中でも重要な位置を占めるフルフィルメント業務は、販売チャネルの増加などの変化にさらされており、統合された情報システムによる効率的な運用が重要になっています。しかし、実際にはチャネルが増えるたびにシステムを拡張した1チャネル1システムで運用されているケースが多く、効率だけでなくお客様へのサービスの観点からも課題を抱える企業が少なくありません。ここでは、前編に引き続き、近藤倫明と原園寛之に、IBMがご提供するフルフィルメント・ソリューションの概要やそのメリット、IBMならではのバリューについて話を聞きます。
IBMがご提供するフルフィルメント・ソリューション
――前編では、流通業におけるフルフィルメント業務の変化と、業務を支える情報システムが抱える課題についてお話いただきました。IBMはその課題に対して、どのようなアプローチで解決を図ろうとしているのでしょうか。
近藤 : IBMがご提供するフルフィルメント・ソリューションは、まずIBMグローバル・ビジネス・サービスが中心となって全体構想の策定の支援を行い、その後、例えばそれにあわせてスターリングコマース社の実行系サプライチェーン・マネジメントソリューションであるスターリング マルチチャネル フルフィルメント(MCF)等を導入していただくという流れです。重要なのは、コンサルティングの段階で業務プロセスの機能や引き当て条件などを企業のポリシーを含めきちんと洗い出し、整理することです。その作業はIBM側からコンサルティング担当と実際のシステムを具現化する開発担当が立ち会い丹念に行います。
前編でもご紹介しましたが、スターリング マルチチャネル フルフィルメント(MCF)はERPパッケージとカスタム開発の中間に位置づけられるソフトです。これまで業務の特殊性からパッケージ導入が難しかったケースでも、業務の骨格部分は標準機能を利用し、特殊な部分については作りこんで新たに部品化することで、業務要件に柔軟に対応することができます。
図1:スターリング マルチチャネル フルフィルメント(MCF)の特徴
原園 : 我々は、業務の流れに着目してフルフィルメント業務改革に取り組んでいます。業務の流れ、プロセスをシナリオと呼んでいますが、業務を複雑にしているこのシナリオのバリエーションを洗い出し、また機能についても同様に洗い出し、これらを整理するところからアプローチします。この作業は、さきほど近藤からも説明がありましたが、コンサルティング担当者と、我々開発担当者が協力して行います。
このバリエーションは、場合によっては数万通りになってしまうこともありますが、整理整頓し、標準化、統合化の作業を行ってからシステムに反映させていくことになります。この整理して業務プロセスを決定する作業、それをシステムに落とし込む作業の2つが、IBMがご提供するフルフィルメント・ソリューションの核となる部分といえるでしょう。システムにはSOAを採用したスターリング マルチチャネル フルフィルメント(MCF)を採用にしていますので、機能を実現する部品はほとんど用意されており、決定された業務プロセスに合わせてそれらを組み合わせていくのが基本です。
近藤 : 業務ソリューション観点でいうと、かなり重要なのが引き当ての部分です。できるだけ手前で引き当てるようにしたほうが、お客様へのサービスという意味では質が上がります。注文が来たとき、すぐに在庫を引き当てることができれば納期もその場で答えられますし、在庫がなければお客様に対して代替品を提案することも可能です。
しかしながら、それを実際に例えば将来在庫まで綿密に行っている企業は流通業界ではまだまだ少ないのが現状です。また、販売チャネルや顧客によって引き当てに優先順位をつけるような場合には、どの時点で受注を集約するのか決めておかねばならず、注文があればすぐに引き当てるというようなことはできなくなってしまいます。もちろん、逆に集約しないで注文があればすぐに引き当てをする、つまり早いもの順というようなロジックにすることもできますので、そこは企業のポリシーが反映される部分ということになります。
EAがフルフィルメント・ソリューションの鍵を握る
――業務プロセスや引き当て条件は、企業ごとに違うと思いますが、スターリング マルチチャネル フルフィルメント(MCF)なら柔軟に業務プロセスを構築することができるということでした。そうなると、その前段階である原園さんがいうところの「整理整頓」の部分が重要になりそうですね。
近藤 : その通りです。その条件や機能の洗い出し、整理には、EA(Enterprise Architecture)と呼ばれる手法を用いています。
引き当ての条件はたくさんあって、ルールやロジックを決定するのはたいへんです。ひとりのお客様から複数の注文があって、片方は在庫があるが一方はないという場合どうするのか。あるいは、新築住宅への家具の配送のようにお客様から期日を厳密に指定された場合どうするのか。食品や医薬品のように商品ごとに消費期限・賞味期限といった条件が付加されるようなものの場合は、その情報も加味して引き当てを行う必要が出てきますから、商品のバリエーションだけでも膨大になってしまうということもあります。
原園 : 業務プロセス、我々がいうところのシナリオのバリエーションは、先ほど申し上げたように場合によっては数万通りにもなってしまいます。条件や機能を洗い出して整理整頓するために、EAという手法を用いているわけです。この整理整頓のためにEAを手法として用いること、あるいはそうして業務プロセスを最適化してきた実績という部分は、IBMの提供できる大きなバリューだと思います。
図2:フルフィルメント・ソリューションの導入プロセス

フルフィルメント・ソリューションの導入効果
――このソリューションは、どのような企業にとって有効ですか。導入効果が大きいのはどのようなケースですか。
近藤 : 流通業の中でいえば、業種業態にかかわらず、導入して効果を上げることのできるソリューションです。あえていうと、受注量が多く、販売チャネルや商品の種類が多いといった場合にとくに大きな効果が期待できます。また、ネット通販を新たに始める、あるいは企業同士のM&Aなどのタイミングで導入することで、その効果を引き出す役にも立つのではと思います。
原園 : このスターリング マルチチャネル フルフィルメント(MCF)には、販売・在庫・会計管理等の企業の中で基幹システムと呼ばれる部分は、ひと通り用意されていますが、すでにそこにERPパッケージを導入しているような場合は、ESBとしての機能も有しているのでインターフェースを通じて連携動作するような仕組みを構築することもできます。
このソフトは、SOAに準拠していますから、既存システムとの連携も容易に実現させることが可能なのです。すでにERPを運用している企業でも安心して導入していただけるのは、このソリューションの大きな特長といえるでしょう。
図3:フルフィルメント・ソリューションの対象領域

近藤 : このソリューションを導入しようという企業は、売り上げの拡大や効率化によるコスト削減をねらうのだと思います。しかし、売り上げ拡大のようなものは、原因の特定が難しいというのが現実です。極端な例ですが、ソリューション導入の効果なのか、単にその日の天気がよかったためなのか、判断がつかないようなケースは多いのです。
このSOAをベースにしたソリューションなら、あらかじめKPIとして設定したい項目を洗い出しておいて、それを測定する仕組みを組み込むことが簡単に実行できます。そうして具体的な効果を計って、コンサルティングのフェーズにフィードバックできるような仕組みを構築するのが理想ですね。また、そういったことはIBMは多くの実績がありますので、実現ができると思います。
――本日は、ありがとうございました。フルフィルメント業務は、企業のコア・プロセスというだけでなく、情報システムが威力を発揮する分野でもあります。ぜひ導入をご検討いただきたいですね。
関連記事
筆者紹介
![]()
日本アイ・ビー・エム株式会社
グローバル・ビジネス・サービス事業
戦略コンサルティンググループ
シニアマネージングコンサルタント
近藤 倫明
日本アイ・ビー・エム株式会社
アプリケーション・イノベーション・サービス
アソシエイトパートナー
原園 寛之
本記事中に記載の数値や固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。

