
新製品開発で今後直面するであろう課題に対処するために、消費財メーカーにはどのような備えが必要なのか、IBMの新製品開発・導入に関するグローバル・エキスパートであるトレバー・デービスがご説明します。
マクロ経済の視点や消費財業界の視点、リーディング・カンパニーの事例などをご紹介した前編に続き、この後編では新製品開発・導入プラクティスの変革についてお話ししていきます。
リーディング・カンパニーは新製品開発において何を実践しているか(前編)を読む
新製品開発・導入の改善に着手すること
新製品開発・導入の改善という重要な仕事にどのように着手すればよいのでしょうか。IBMは、お客様との仕事の中から多くの経験を得てきましたので、その経験を踏まえお話ししましょう。IBMが世界中の消費財メーカーで働く30人以上のチーフ・マーケティング・オフィサーやリサーチ・ディレクターに対して行った調査で判明した点もあわせてご紹介します。
R&Dは、イノベーション・レート――APQC(米国生産性品質センター)による定義では、その年の売上の中で新製品が占める割合――やブランド評価を向上させ、成長をドライブするための原動力です。では、R&Dの成功要因とは何でしょうか?
多数の企業と行った仕事や調査業務の結果、ブレイクスルー製品・パッケージを作ることが、1つ目の重要な成功要因であるとわかりました。2つ目の成功要因は、製品ライフサイクル全体にわたって製品情報を管理することです。
ここ数年の特徴として、製品のコスト最適化が一層注目を浴びています。それはさらに進んで、配合とレシピをより高度に把握するニーズへと変わっています。それが、3つ目のポイントです。そして4つ目は、将来ほぼ間違いなく求められるようになるであろう、製品のうたい文句(たとえば健康や栄養など)の科学的検証ということになります。
オープン・イノベーションの要はコラボレーション環境であり、その環境は内部的なものでも可能です。我々が消費財業界のリーディング・カンパニーとともに実施した調査の結果、IBMはソーシャル・ネットワーキング技法とそれを使った内部コラボレーションが重要になりつつあると考えています。これが5つ目です。
最後の6つ目は、持続可能な製造と使用を実現する設計です。前編で水が不足する未来についてお話ししましたが、水に限らず製品原料のライフサイクル消費と、消費者がその製品を使う場合のライフサイクル消費を、設計の早い段階で確実に最小化することができるなら、それは大きな意味を持つことになるでしょう。
R&Dの重要成功要因に関するIBM調査(2008年)より
- ブレイクスルー製品・パッケージ
- 持続可能な製造と使用を実現する設計
- 内部的・外部的コラボレーション(競合企業と行うことさえある)
- 製品情報のライフサイクル管理
- 配合とレシピのコスト最適化
- 製品のうたい文句(栄養など)の科学的検証
新製品開発・導入とマーケティング
次はマーケティングの成功要因についてです。消費財分野のマーケティングは、カテゴリとブランドに対する意思決定支援という形で発展してきました。しかし、これまでの細分化したプロセスやブランドごとのアプローチは、よりグローバルな、または地域的な視点に取って代わられつつあります。コンシューマー・インサイトはますますブランド・レベルおよび製品レベルの膨大な情報と結び付けられるでしょう。
しかし、多くの企業にとって、前述のような変革はいますぐできることではありません。それは、マーケティングとR&Dが別々に仕事をしているからです。この課題を解決するために、将来、最適なブランド開発プラットフォームへの移行が起こるでしょう。すでに我々はこれを、実在のリーディング・カンパニーで目にしました。その実施に必要なプラクティスの多くは、多くの研究の中で標準的になりつつあり、近いうちに主流ビジネスに入り込むと考えています。
360度ビューでのブランド開発プロジェクトおよび製品開発プロジェクトは、今後とても重要になります。消費者、買物客、環境活動家、NGO、政府、規制当局などあらゆる視点から製品開発とブランド開発を行うことは、すべてのポートフォリオ分析において決定的要素になるでしょう。
自国に続く第2の市場とそれに続く市場への迅速な展開を進めるための情報収集能力は、我々が見てきたベスト・プラクティス企業の大きな特徴です。消費財分野で最も優れた企業は、タイム・ツー・マーケットの問題を抱えてはいません。それらの企業にとっては、第2の市場とそれに続く市場へのタイム・ツー・マーケットが問題なのです。
最後は、ブランド・製品価値のライフサイクル・モデリングです。ブランド価値の測定はずっと前から行われ、アルゴリズムはよく理解されています。しかし製品についてはどうでしょう。企業が製品の生涯価値をモデリングできるようになったのはほんの数年前で、モデリングしてみてひどい結果に驚いた企業もありました。
マーケティングの重要成功要因に関するIBM調査(2008年)より
- カテゴリとブランドに対する市場を上回る意思決定支援
- ブランド・製品価値のライフサイクル・モデリング
- 第2の市場とそれに続く市場への迅速な展開を進めるための情報収集能力
- コンシューマー・インサイトをブランドおよび製品にリンクさせる
- 最適なブランド開発プラットフォーム
- 360度ビューでのブランド開発プロジェクト
新製品開発・導入プラクティスを変える
最後に、新製品開発・導入プラクティスを変えることのメリットについて、我々がこの数年間に世界7か国の消費財メーカーから集めたデータをもとにご説明します。
2003年ごろに始まったプロジェクトを調査したデータでは、新製品開発・導入プラクティスを変革した企業は、タイム・ツー・マーケットを約9%短縮したという結果があります。中には、実に40%も短縮した企業もありました。
また、価値を生まない活動を削減することで、エンド・ツー・エンドでのボトムラインコストが平均で9%、最大で20%以上削減されています。
さらに、イノベーション・レートの向上にも貢献しており、最大5%上昇した企業もありました。イノベーション・レートと企業の成長には密接な相関関係があることがわかっています。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ブラジル、日本の240社の平均成長率を10年間調べたところ、イノベーション・レートが5%上がるとトップライン成長が2.5%改善することがわかりました。
イノベーション・レートは成長の原動力

(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ブラジル、日本の240社の平均成長率10年とイノベーション・レートの相関を示す)
現在は、歴史上最も大きく世界が変化している時期のひとつだと思われます。最も成功する企業は、最も迅速に行動できる企業でしょう。クローズド・イノベーションとオープン・イノベーションとの新たなバランスをどう確立するか。どのようにしてエンド・ツー・エンドでプロセスを結合するか。そのプロセスを推し進めるには、どのようなテクノロジーが必要になるか……。新製品開発・導入プラクティスの変革にすぐに着手しなければ、この大きな変化には対応できないのです。
筆者紹介

IBMコーポレーション
新製品開発・導入グローバル・エキスパート
トレバー・デービス博士
リーディング・カンパニーは新製品開発において何を実践しているか(前編)を読む
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