
去る2009年1月11日から14日、アメリカ・ニューヨークにて、2009年全米小売業協会(National Retail Federation。以下NRF)の年次大会が開催されました。期間中行われた4日間のセッション、2日間のITソリューション展示のうち、厳しい経済環境におけるアメリカ小売業の関心事を顕著に表したテーマおよび出展内容についてご紹介いたします。
不況こそ機会
セッションの中で最も集客が多かったのは世界最大の小売業ウォルマートCEO(開催当時)のスピーチです。オバマ大統領の就任直前というタイミングもあり、アメリカを代表する企業のCEOであるリー・スコットJr.の講演内容に、参加した全米の小売業関係者およびメディアの注目が集まりました。
リー・スコットJr.はCEOとして最後になる公のスピーチ冒頭で、同業者およびサプライヤーに対して、「新しい政府のリーダーやNGOと共に、私たちはさらに強いアメリカを作っていくことができると信じている」とのコメントを残しました。
また、彼が強調していたのは、「不況こそ機会」というメッセージです。彼は、社会環境が小売業に与える影響について聞かれ、こう答えています。
「経済があえいでいるからといって、アメリカ人の生活が根本から変わってしまったわけではない。例えば、ウォルマートを訪れる消費者は、節約のために外食と引き換えに自炊をするようになったと言われる中でも、引き続き冷凍食品を購入している。結果として、ウォルマートにおける冷凍食品の売上は上昇している。なぜか?人々は単に景気が悪くなったからといって急に暇ができるわけではない。 便利で健康に良いミールソリューションを引き続き必要としているのだ」
ウォルマートが長引く不況を「機会」と捉えて、節約志向、利便性志向、健康志向といった顧客の購買行動に注目し、新たな機会を狙っている企業姿勢の表れと言えます。
IBMの調査が明らかにする消費者のリアルな変化
IBMは、この年次大会に合わせて、毎年継続的に実施している「お客様から支持される小売業の要素」に関する最新の調査結果を発表しました。
昨年の米国消費者30,000人への調査結果は、昨今の経済環境をリアルに反映しており、消費行動の大きな変化を見ることができます。やはり91%の人は何らかの消費を減らしたと答えており、特定の小売業を支持する消費者(Advocator)の割合は前年から2倍に増えました。さらに、約3割の消費者はこれまで利用しなかった新しい小売業の店舗で買い物をするようになったと回答しています。
お店を乗りかえたきっかけとしては、「価格・プロモーション」という回答が最も多く、この” Shifter”と呼ばれる顧客層は「価格・プロモーション」「利便性」「品揃え」の順に敏感である、という結果が出ています。
自社にとっての新しいお客様である”Shifter”を“Shopper”にし、さらに、自社を継続的に愛用してくれる“Advocator(支持者)”にしていくことが重要である、とIBMのグローバル・リテール・リーダーのフレッド・バルボーニは説明しています。
Adovocatorをさらに増やしていくため、IBMは“Smarter Solutions for Retail”というコンセプトのもと、「オペレーショナル・エクセレンスの追求」「よりよいショッピング体験の提供」「需要起点のマーチャンダイジング&サプライチェーン」の3つのテーマに沿ってソリューションをご提供しています。
「携帯電話」や「キオスク」の活用はお客様・小売業双方にメリット
2日間のITソリューション展示では、昨年以上に、「キオスク」「携帯電話」を活用した多様なサービスを提案する展示が増えていました。
キオスク端末を使ったお客様セルフサービスは、日本でも空港やホテルのチェックインの場面などで一般的になりつつありますが、展示会場では「店頭でのお客様自身によるギフトカード有効化(Activation)」 「店頭・およびバックヤード在庫数の売場での確認」「ファッションやメイクのシミュレーション」 といった様々な利用形態が紹介されまし
た。
実際に店頭に陳列されている商品と、店頭にない商品をキオスク端末上で両方組み合わせてシミュレーションすることで、実店舗の品揃えを超えて、お客様に幅広く商品を紹介することができます。RFIDの技術を組み合わせると、提供可能なサービスもさらに広がります。

IBMが出展した
「モバイルコマース」
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キオスク端末は、お客様のショッピング体験の向上に貢献するだけでなく、従業員の削減にもつながる点が、米国小売業の注目を集めています。
また、普段消費者が利用している携帯電話を使って、効率的なショッピングを実現するソリューション展示も多く見られました。IBMは「モバイルコマース」というコンセプトで、お客様が店舗にたどり着く前に、自分の携帯電話から、お持ち帰り商品の注文ができるシステムを展示しました。 店頭のレジで並んで待つ時間をなくすことで、お客様は、効率的に買い物ができます。また小売業側としても、事前に注文ボリュームや内容を把握することができ、業務の効率化を実現できます。
いずれの展示も、テクノロジーの進化により、従来よりも実装が容易になりつつあるものばかりです。特定の顧客層・商品カテゴリーの強化や、既存のサービスとの組み合わせといった観点からサービス内容を検討することで、不況下でもお客様を「店舗に呼び込む」施策が打ち出せるのではないでしょうか。
まとめ ― 原点に立ち返る小売業
2009年の年次大会の内容を振り返ってみると、2008年に強調されていた「環境問題への対応」というテーマがやや抑えられていたように思われます。もちろん、小売業における社会的責任としての環境問題への対応は、忘れられてはいませんが、やはりアメリカの小売業においては「いかにお客様をつかまえるか」が喫緊の課題であるという雰囲気が、4日の大会全体をとおして感じられました。
お客様を店舗に呼び込むために、「低価格」を打ち出すことも、もちろん重要ですが、継続してお客様に来店いただくためには、あらためて「お客様にとっての価値」「お客様が喜ぶサービス」とは何かを、原点に立ち返って、全ての小売業が考えさせられている、という状況を強く感じた、今回のNRF年次大会でした。
関連情報
リテールテックJAPAN 2009 IBM展示ブースのご案内
日本最大の流通業界向けイベント「リテールテックJAPAN2009」が来る2009年3月3日から6日までの4日間、東京ビックサイトにて開催されます。
日本アイ・ビー・エムでは、「Smarter Solutions for Retail ―変化をとらえ、次なるチャンスを見い出すために―」をテーマに、本レポートでご紹介した「モバイルコマース」をはじめ、即効性の高い国内向けソリューションを一同に展示いたします。
筆者紹介

日本アイ・ビー・エム株式会社
グローバル・ビジネス・サービス
流通サービス事業部
小売インダストリー・ソリューション
主任ソリューション・セールス・スペシャリスト
伊藤 晶子
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