

顧客起点の取り組みと、
先読みし、先手を打つことが重要
Chief Supply Chain Officer(CSCO:最高サプライ・チェーン責任者)とは、文字どおり、企業におけるサプライ・チェーンの統括責任者のことです。IBMでは、「Global Chief Supply Chain Officer Study」として、全世界の約400人のCSCOにインタビューを実施し、多くの知見を得ることができました。
ここでは、CSCOが主要課題として認識している5つの課題について、調査担当部門の近藤倫明と、消費財業界担当部門の安瀬和博が、調査結果を分析していきます。
全世界の約400人のCSCOが抱えている課題とは
近藤 : 2008年の5月から8月にかけて、IBMでは「Global Chief Supply Chain Officer Study」という調査を行い、その結果がまとまりましたので、今回はその内容をご紹介したいと思います。
安瀬 : ご協力いただいたのはどのような企業ですか?
近藤 : 図1を見てください。北米、欧州・日本・アジア/太平洋などの25カ国の393社。業界別では電機・小売り、産業機器、消費財・卸などの29業界です。各企業のCSCOの位置付けにある方に、対面式の聞き取り調査をお願いしました。

図1.本調査のプロファイル (91KB)
Adobe® Reader®が必要
安瀬 : 昨年の5月から8月にかけてというと、金融危機が起こる前ということになりますね。
近藤 : その点は考慮する必要がありますが、サプライ・チェーンのグローバル化や複雑化は続いていますので、十分に参考になると思います。
安瀬 : CSCOというポジションは、それほど一般的ではないと思いますが…。

図2.本調査のサマリー (84KB)
Adobe® Reader®が必要
近藤 : CSCOを任命していない企業も多いので、物流部や製造部、購買部、SCM企画部、需給管理部などの責任者の方々を含めてお聞きしました。
その結果、明らかになったのが「コストの抑制」「サプライ・チェーンの可視化」「リスク・マネージメント」「顧客との親密性」「グローバル化」という5つの課題です。また、課題に対する意識は、グローバルと国内で違いがあることも分かりました。
例えば、グローバルでは「サプライ・チェーンの可視化」が最大の課題となっていますが、国内では「リスク・マネージメント」と「顧客との親密性」がそれ以上のパーセンテージとなっています。なお、先ほども述べたように、金融危機以前に実施された調査ですので、今なら「コストの抑制」がもっと上がってくるかもしれません。
安瀬 :いずれにせよこの数字を見ると、皆さんが何に問題意識を感じているのかよく分かりますね。例えば、国内の企業における「顧客との親密性」が74%となっていますが、実際にIBMのお客様の多くが、顧客とのコラボレーションに注力しようとしながら、なかなか実現できないことに悩まれているという状況と一致しています。
「顧客との親密性」顧客起点の取り組みを

図3.顧客ニーズの把握と
製品開発 (99KB)
Adobe® Reader®が必要
近藤 : それでは、5つの課題について順番に検討していきたいと思います。まず最も数字の高かった「顧客との親密性」です。サプライ・チェーンは、当然ながら、お客様のニーズをとらえて動かしていくものですが、それがなかなか難しいということです。例えば、製品開発においても「顧客との協働設計」が弱いという結果が出ていて、設計にお客様のニーズを取り入れられていないケースが多いことが分かります。
安瀬 : 確かにメーカーの方々からは、小売りと情報共有をしたり、販促活動などで協業したりしたいという話をよく聞きますが、実際には難しいようです。なぜなら、メーカーとしては小売りと情報共有や協業をしても、本当にWin-Winの関係を築けるのか不安を払拭できないようです。
一方、グローバルではCollaborative Planning Forecasting and Replenishment(CPFR:製造業と小売業による協働の販売計画・需要先読み・在庫補充)のような仕組みが浸透していたり、あるいはWorld Wide Retail Exchange(WWRE)などのWeb上のB to Bマーケットプレースが実際に稼働していたりしています。国内でも同じような取り組みはあったものの、参加するすべての企業がメリットを享受できるのかといった議論もあって、なかなか本格的に踏み出せないという状況です。
近藤 : CPFRは、1対1や1対nで行う実証実験レベルは、参加する企業が限られているため、それなりの成果がでています。しかし実際に、多くの製造業や小売業が参加してn対nで実施するとなると、なかなか難しい面があります。グローバル・メガリテーラーが業界でリーダーシップを発揮している欧米とは異なり、国内の消費財業界ではGeneral Merchandise Store(GMS:総合スーパー)、コンビニエンスストア、卸、百貨店、専門店などの多くの利害関係者が参加するため、共通するメリットをつくり出すのが難しいのです。
例えば、ハウスカード(各社が独自に発行しているクレジットカード)で顧客情報を収集している小売業は少なくありませんが、メーカーとの協働にその情報を本格活用しているといった事例にはなかなかお目にかかれません。とはいえ、多くの企業が「コラボレーションを進めないと今後は生き残れない」という危機感を持っていることも事実です。
「リスク・マネージメント」いかに先読みし、先手を打つのか

図4.リスク・マネージメント
における主要課題 (103KB)
Adobe® Reader®が必要
近藤 : 2番目の課題である「リスク・マネージメント」については、図4に示すように、仕組みそのものは7割近くの企業が持っていると回答しています。しかしながら「標準化プロセスがない」「ガバナンスの問題」といった課題が挙げられるなど、日本企業は「プロセス」「データ」「組織」について、グローバル・リーダーに大きく水をあけられています。
安瀬 : ここで言う「リスク・マネージメント」とは、いわゆるサステナビリティー(持続可能性)のことですね。実はIBMでは今年、消費財業界の将来像を描いた「CP2020」というレポートを出しました(*1)。
そこでは、異常気象などで水や原材料の供給が止まってしまった場合や、インフラ整備が不十分な新興国でビジネスを行う場合など、さまざまなケースにおけるリスク・マネージメントの重要性が強調されていますが、今回の調査結果からも国内企業はまだまだ準備ができていないように感じました。
最近のサプライ・チェーンの世界では「先読み」というキーワードが注目されていますが、いかにリスクを先読みして、どんな先手を打つのか、事前に考えておくことが大切です。今後の課題といえるでしょう。
近藤 : もうひとつ。グローバル・リーダーに比べて日本の企業が遅れている点は、パートナー企業を含むサプライ・チェーン・ネットワークでリスクを共有する仕組みが整っていないことです。縦・横のつながりを含めて、業界全体でどういうふうに対応していくのか、検討していく必要がありそうです。
後編では、3番目以降の課題について続けていきたいと思います。
(*1)「CP2020」日本語版の入手を希望される方は、右上「フォームでお問い合わせ」をクリックのうえ、件名を「CP2020」としてお問い合わせください。
関連情報
プレスリリース
お客様向け資料
このレポートについてもっと詳しくお知りになりたい方は、右上「フォームでお問い合わせ」をクリックのうえ、件名を「サプライ・チェーンを取り巻く5つの課題」としてお問い合わせください。
筆者紹介

アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービス株式会社
流通事業本部 コンシューマー・プロダクツ インダストリー
執行役員 パートナー
安瀬 和博

アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービス株式会社
SCMコンサルティング ロジスティクス・購買コンサルティング
部長 シニアマネージングコンサルタント
近藤 倫明
本記事中に記載の数値や固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
IBM、IBMロゴ、ibm.comは、世界の多くの国で登録されたInternational Business Machines Corp.の商標です。他の製品名およびサービス名等は、それぞれIBMまたは各社の商標である場合があります。現時点での IBM の商標リストについては、http://www.ibm.com/legal/copytrade.shtmlをご覧ください。
他の会社名、製品名およびサービス名等はそれぞれの各社の商標。

