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消費財メーカーが挑むグローカル・マネジメント

グローバルに考え、ローカルに動く

もともと内需型産業であった国内消費財メーカーですが、フラット化する世界の中で、海外で生産して国内販売する形を経て、今や「適地生産・世界販売」へのチャレンジが求められています。

グローバル企業に向けての改革は、消費財メーカーにとって急務といえるでしょう。

長年にわたり、業種を問わず企業のグローバル化をお手伝いしてきたIBMグローバル・ビジネス・サービスの岩崎 竹生が、「グローバルに考え、ローカルに動く」をテーマに、グローカル・マネジメント実現の成功要因についてご紹介します。

2つの能力で実現するグローカル・マネジメント

岩崎 竹生の顔写真グローバル展開に成功している各国の消費財メーカーのビジネスを検証すると、2つの共通点があることが分かります。
それは「グローバルに見える化」と「事業のコンポーネント化」を実現する能力です。今、この2つの能力が、グローバル企業に求められているのです。

1つ目の「グローバルに見える化」とは、グローバルに各拠点の状況を日次・週次といった迅速な意思決定に必要な頻度で把握することです。国内消費財メーカーにとって従来は、「見える化」「可視化」というと、国内グループ各社の情報をいかに迅速かつ正確に入手するかが大きなテーマでした。世界販売をしていく上で今後は、グローバルの各国拠点の情報をいかに入手するかがテーマとなってきています。これは、いわゆる「ビジネス・インテリジェンス」と呼ばれる領域であり、多くのグローバル先進企業が力を入れています。さらに、これから取り組んでいかねばならないのが「マーケット・インテリジェンス」と呼ばれる領域です。外部環境の把握と自社の戦略・業績を客観的に評価するために、いかに素早く社外情報を集めてくるかがポイントになります。具体的には、各地域のマーケット情報や、産業動向、競合他社の動きなどの状況を把握することが大切です。

2つ目の「事業のコンポーネント化」については、Component Business Modeling(CBM:業務機能鳥瞰図)と呼ばれるツールを用いて分析できます。横軸に事業管理・研究開発・マーケティング・調達・生産・物流・販売といったバリュー・チェーンを、縦軸に計画・管理・実行という企業活動の3階層を並べ、会社もしくは事業にとって必要なすべての論理的な機能を1枚のチャートに表します。

CBMを用いることで、例えば自社の将来像を社内で議論する際に、参加者の認識を共有化できます。具体的には、それぞれの「論理的に必要な機能」について色分けすることで、各機能を「コア/ノンコア」、「自社保有/アウトソーシング」、「グローバル統合/ローカル適合」などに識別していきます。

この「グローバルに見える化」「事業のコンポーネント化」という2つの能力は、グローバル・マネジメントにどのような影響を与えるのでしょうか。わたしたちは「グローバルに考え」「ローカルに行動」することにつながると考えています。

社内情報だけではなく、社外情報も含めた状況をグローバルに分析し、ローカルに任せる範囲をきちんと定義した上で、その分野についてはローカライズしていきます。実は、こうした理念は以前から存在しましたが、ITインフラや社会インフラが整ったことでようやく実現可能になったといえるでしょう。 わたしたちは、この「グローバルに考え」「ローカルに行動」するマネジメントを、「グローカル・マネジメント」と呼んでいます。

グローカル・マネジメントの要諦

ローカル化/グローバル化のそれぞれの目的・手段・権限などを次の表に整理しました。まさに対極的な考え方といえるでしょう。

グローバルな統制とローカルへの権限委譲のバランス
  ローカル化 グローバル化
目的 地域への溶け込み
地域人材・組織の活性化
グローバル戦略の徹底
手段 地域への権限委譲 本社の統制強化
地域や事業間の整合性確保
権限 地域分権 中央集権
施策(例) 各国法人の決裁権限の拡大
現地人材の登用
ローカルルール採用
分社化
業務プロセスの標準化
グローバル共同調達
グローバル顧客毎に営業窓口を一本化
グローバルブランドの展開

グローカル・マネジメントでは、この2つの考え方のバランスをいかに取るかがポイントになります。特に消費財メーカーにとっては、地域に根ざした商品が多いこともあって、このバランスがとりわけ重要です。
では、国内消費財メーカーのグローバル化はどのような状況にあるのでしょうか。海外売上高比率は、平均で20%であり、比率の高い企業では30%~40%となっています。この比率は、数年前に比べると急激に伸びています。国内消費財メーカーはもともと内需型の産業であり、「国内で作る・売る」という形でしたが、厳しい価格競争の中で、東南アジア、中国沿岸部/内陸部などの海外に生産拠点を移し、それを輸入して国内販売することが増えました。そして、今迎えようとしているステップが「適地生産・世界販売」、すなわち海外で作って、それを経済発展の著しいBRICsなどの海外に売るという形です。

しかし、国内消費財メーカーがグローバル化を成功させるには、以下の3つの課題を克服する必要があります。

こうした課題を解決するには、これまで国内市場中心で経営してきたがゆえに海外のマネジメントに関しては現地法人長に任せきりであった状況を覆して、グローバル戦略の徹底のために本社が統制をとっていくことが必要不可欠となっています。一言で表せば「地域放任主義からの脱却」ということになります。ポイントは次の3つです。

(1)人ではなく、プロトコルで本社のやり方を各国法人に浸透させる
図に示したように「人による伝承型」と「プロトコル移植型」に大別できます。従来型ともいえる「人による伝承型」にはさまざまな限界がありましたが、「プロトコル移植型」はプロトコル(原理原則、制度・規定、プロセス、IT)を明文化することで本社のやり方を各国法人に浸透させていくことで人に依存せずに本社のやり方を浸透させる方法です。この時、ITを使ったプロセス標準化が大きな役割を担います。

(2)グローバルに統制可能な組織作り
これも2つの方法があります。多くの日本企業は法人単位でガバナンスを実現していますが、先進的なグローバル企業は2軸で管理しています。事業を統括するビジネス・オーナーに加え、研究開発・調達・製造・財務といったプロセスごとにプロセス・オーナーを指名し、グローバルに横ぐしを差すことで、各プロセスの効率化・標準化に取り組みます。多くのグローバル先進企業も個別最適に陥りやすい法人毎ではなく、事業・プロセスといった2軸でグローバルに統制を利かせています。

(3)本社が各国法人よりも情報を把握することでコントロールする
前述したように、「グローバルに見える化」の実現には、社内情報であるビジネス・インテリジェンスと、社外情報であるマーケット・インテリジェンスの両方が必要です。各国法人は、現地市場や競合情報を基に年度計画を策定するが、現地の情報を持っていない本社にはその計画の妥当性の判断はつきません。結果、「現場を知っている」各国法人の説明を鵜呑みにするしかありません。よって、「現場にいない」本社が、各国法人の計画や業績の妥当性を検証できるだけの情報(マーケットインテリジェンス)を掌握しておく必要があります。

例えばIBMでは「Global Market View」と呼ばれるレポートを半期あるいは4半期に一度出しています。これはIBMで唯一の公式の市場分析レポートです。現地法人に市場分析を任せるのではなく、本社の情報源としてマーケット・インテリジェンスを集めることで、各国法人の業績目標や業績などの妥当性のチェックに活用しています。

グローカル・マネジメント実現の成功要因

最後に、どのようにしてグローカル・マネジメントを成功に導いていけばいいのか考えてみます。
グローカル・マネジメントの実現には、図に示したように「組織」「プロトコル」「情報」という3つの大きな改革要素があります。検討内容が重要かつ多岐にわたるため、取り組みには年単位の時間がかかりますし、その間に複数のプロジェクトが現れては消えていきます。そのため、複雑なプロジェクトの管理と、社員のモチベーション維持・向上という改革の推進力が必要となります。
そこで、Global Program Management Office(G-PMO)を設置して、改革プログラム全体のマネジメントと改革の推進力の維持に努めます。具体的にはG-PMOが、プログラム設計、統合プロジェクトマネジメント、ポートフォリオマネジメント、チェンジマネジメントを行うプログラムマネジメント機能と、各国法人のベストプラクティスをグローバル全社に展開するグローバル・シンクタンク機能(「知の連鎖」の創出)の役割を果たすことで、いわば触媒としてグローバルマネジメント改革を取り纏めていくことが不可欠です。

日本アイ・ビー・エムでは、ワールドワイドのIBMで実施してきたグローカル・マネジメントの経験を生かし、「グローバル化ビジョン策定」「グローバル・マネジメント再設計」「グローバル先進事例調査」などの短期支援サービスを提供しております。ぜひ日本アイ・ビー・エムにご相談ください。

筆者情報


日本アイ・ビー・エム株式会社
グローバル・ビジネス・サービス事業
戦略コンサルティンググループ
マネージングコンサルタント
岩崎 竹生

本記事中に記載の数値や固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。

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