
タブの始まり
- 消費不況からの脱出に向けて
- 次世代ショッピング体験やモバイル・コマースが展示の主流に
- IBM主催のスーパーセッションでは、会場がほぼ満席にて
- IBM展示ブースでは「次世代ショッピング体験」をデモ
- 「消費者の声をいかに取り込むか」は日米共通の課題
- 筆者紹介
The National Retail Federation(NRF:全米小売業協会)は、会員数約160万社を抱える世界最大の小売業界団体です。食糧雑貨、百貨店、専門店、ディスカウント・ショップ、カタログ/インターネット通販、外食チェーン、ドラッグストアなど、その業態・チャネルは流通業におけるあらゆる領域に及び、会員各社の従業員数を合計すると米国の労働者の約5分の1になるほどです。
NRFでは、毎年1月、ニューヨークにおいて年次大会を開催しています。有力小売業やソリューション・ベンダーによるスピーチ/セッションやソリューション展示が行われることから、大会に参加することで、米国の小売業界の最新動向や、最先端のソリューションを網羅的に知ることができます。
去る1月10日から13日ニューヨークにて、2010年全米小売業協会の年次大会(NRF)が開催されました。「停滞からの脱出」をキーワードにいち早く消費不況からの脱出をメッセージにした今年のNRFのセッションや出展内容についてご報告します。
消費不況からの脱出に向けて
「写真:会場全景」を拡大する
昨年のNRF年次大会では、不況下にいかに顧客を獲得するかが大きなテーマとなっていましたが、今年は、Turnaround(回復)、Shake off the doldrums(停滞からの脱出)、Changing The Game(戦いが変わる)といったキーワードが並び、消費不況からの脱出に向けてのメッセージが強く打ち出されるとともに、米国の小売業が折り返し地点に立っていることを印象付けました。
また、小売業界の発展に寄与した小売企業に「Gold Medal Award」「Retail Innovator of the Year」「Customers’ Choice Awards」などの各賞が毎年授与されますが、今年は、カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開する株式会社ファーストリテイリング会長兼社長の柳井 正氏が「国際部門賞」を受賞しました。厳しい経済状況下にもかかわらず、消費者のニーズを聞き入れて、斬新な手法を用いて他社をリードしたことが高く評価されたということです。
次世代ショッピング体験やモバイル・コマースが展示の主流に
展示会では、次世代のショッピング体験やBusiness Intelligence(BI)系の出展が中心となりました。その一方で、POSシステムの展示や、チェックアウト系デバイスの新型の展示もあり、店舗ソリューションとバックオフィス系ソリューションが半々という状況でした。
特に目立っていたのは、POS情報や顧客の購買情報を活用して、分析力や顧客洞察力を高めていくという観点からと思われる、Business Intelligence(BI)ベンダーによるデータウェアハウス製品のソリューションや、大手ITベンダーによる小売アプリケーションの新バージョンや追加モジュールを事例などの出展です。
中堅・中小のメーカー/ベンダーのブースでは、インド系を含む企業の専門性の高い出展が多数行われていました。また、昨年に比べて、キオスク端末に加え、携帯電話/携帯端末を使ったモバイル・コマース関連の展示がますます増えてきているように感じられました。
日本の見本市などとは趣が異なり、フリーの来場者をブース内に積極的に誘導するというよりも、事前にアポイントメントを取られたお得意様をご案内したり、商談・ミーティングを行ったりするなど、お客様とより深い関係を構築するための場となっているのが大きな違いと感じられます。
IBM主催のスーパーセッションでは、会場がほぼ満席に
「写真:スーパーセッションでの
スピーチの様子」を拡大する
NRF年次大会の主要スポンサー企業の1社として、IBMはスーパーセッションを主催し、会場となったホールは1階席がほぼ満員の盛況となりました。
IBM主催のスーパーセッションに、まず登壇したのは、NRFの会長兼Chief Executive Officer(CEO:最高経営責任者)であるトレーシー・マリン(Tracy Mullin)氏です。彼女は、経済状況は確実に良くなりつつあり、来年はさらに良くなるだろうと予測し、停滞状態を断ち切ろう」と訴えました。
次に登壇したジル・プレリ(Jill Puleri)は、IBMの小売事業におけるグローバル・リーダーです。IBMが提唱している「Smarter Planet」によって小売業が劇的に変わりつつあることをアピールしました。インターネットやITが急速に進展する中で、消費者がモバイル・デバイスなどを活用して、さまざまな情報を先取りし、今まで以上に賢い買い物や、スマートな消費が可能になってきていることを、事例を交えて紹介しました。
3人目にゲスト・スピーカーとして登壇したスティーブン・J・ダブナー(Stephen J. Dubner)氏は、経済学ブームを巻き起こしたベストセラー『ヤバい経済学』(原題:Freakonomics)の共著者の一人です。さまざまな統計数字を駆使しながら、ユーモアを交えて消費者の購買行動を分析し、会場に笑いを誘いました。
IBM展示ブースでは「次世代ショッピング体験」をデモ
「写真:BIを活用した購買情報の
分析」を拡大する
「写真:ショッピング体験の
デモの様子」を拡大する
会場の入り口近くに設けられたIBMの展示ブースでは、BIを用いて購買情報を分析し、消費者のニーズや声をつかむためのソリューションを紹介しました。
具体的には、スマート・デバイスを使ったショッピングの多様性・効率化への対応や、マルチデバイス/フォーマットへの対応をデモンストレーションし、来場者にアピールしました。
中でも人気を集めていたのが、ブースの正面に設けられた「Wow Demo」です。来場者が腕時計の形をした白いテープを腕に巻き付けて、タッチ・パネルで時計のデザインやカラーを選んでいくと、画面上に自分が実際の商品を身に付けている姿が表示されるというソリューションです。この仕組みを用いることで、在庫のない商品についても、店舗を訪れた消費者にショッピング体験をしてもらうことができます。
「消費者の声をいかに取り込むか」は日米共通の課題
米国の小売業は、国土が広いということもあるのでしょうが、モバイル・コマースやバーチャル・ショッピングに意欲的に取り組んでいることが、今回の大会に参加して再認識できました。
国内でも、ネットスーパーなどが普及しつつありますが、リアル店舗をもともと持っている小売業のネットへの取り組みは、まだまだ十分とはいえません。今後の動向を考えると、国内でもリアル店舗とネットの組み合わせたマルチチャネル・リテールという考え方をさらに進める必要があるでしょう。
既に米国では、顧客がネットでオーダーした商品を、24時間以内に店舗に取り置きできなかった場合は、おわびとしてクーポンを提供するなど、チャネルをうまくミックスして店舗へ誘引したり、ショッピング体験を高める取り組みを行っている事例が多数あります。
また、FacebookのようなSocial Network Service(SNS)を活用して、顧客の意見を商品開発に反映させるなど、さまざまな取り組みを進めています。実際、IBMの調査によると、78%の消費者が「商品開発や店舗設計などを喜んで手伝いたい」と考えているという結果も出ています。消費者の声をいかに取り込むかということが、今後の小売業にとってはますます重要なテーマになっていくことでしょう。
「日本の小売業にとって、米国の小売業の話はもうさほど参考にならない」というご意見をお持ちのお客様もいらっしゃるようですが、実際に大会に参加してみると、実に多くのヒントがあり、新しい発想のきっかけにもなります。
NFR年次大会には、IBCS(当時)や日本アイ・ビー・エム株式会社の流通分野の専門家が、今年も多数参加しました。より詳細な報告書も作成していますので、ご興味を持たれたお客様はぜひお問い合わせください。
筆者紹介
日本アイ・ビー・エム株式会社
グローバル・ビジネス・サービス事業
コンサルティング&SI
流通サービス事業部
小売事業部
アソシエイト・パートナー
中島 昌彦
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