原題 Competitive underwriting for the 21st century
著者 Cindy DeArmond、IBM グローバル・ビジネス・サービス
掲載日 2007年4月2日
この数年間、保険会社の成長は厳しかったものの、天災や人災による保険金請求(クレーム)は増えてきました。このような傾向に対応するために、保険会社はアンダーライティングにさらに重点を置き、リスク管理について、より一貫性のあるコスト効率の高い意思決定を行うための高度なテクノロジーに注目するようになっています。
タワー・グループの推定によれば(*1)、米国の保険会社はアンダーライティング能力を向上させるために、今後数年間に全事業費のほぼ10パーセントに相当する14億1,000万米ドルを費やすと予想されています。これらの投資の大部分は、多くの保険会社が最も「痛み」が激しい5つの点としている問題への「鎮痛薬」として適用されます。
最大の問題は、収益性を損ねる原因となっている過度な処理コストです。保険会社が自社のビジネスにおける2番目の「痛み」は何なのでしょうか。最終的に収益性を悪化させることになる、アンダーライティングに関する一貫性のない意思決定です。3番目に挙げられる問題は、結果的に市場のニーズと一致しない「新しい」個人向け保険商品を生むことの多い、時間のかかる開発プロセスによる管理のための時間とコストの流出です。
4つ目の問題点は、顧客の獲得および契約維持の機会を台なしにする、複雑で扱いにくい新規および更改申込みのプロセスです。そして最後の問題点は、コストを流出させ、アンダーライター(引受決定者)が複雑なリスクの問題について迅速に決定を下すために必要なすべての情報を提供できない、効果的でないデータ獲得のプロセスです。
包括的なアンダーライティング業務
簡単に言えば、個人向け保険商品を扱う保険会社は、アンダーライティングが会社の全体的な収益性の目標に、包括的な形で貢献しなければならないということに気付いたのです。より少ない人的資源とより多くの外部のデータ・ソースによって、リスク判断のための情報を提供することで、より迅速かつ効率的に意思決定を行う必要があります。
業界のリーディング・カンパニーの多くは、より良い意思決定を行うために自動化とグローバルなデータのライブラリーを活用できるようなアンダーライティングプロセスをすでに導入しています。このライブラリーでは、企業および顧客の記録だけでなく、互いに接続されたビジネス・パートナーのネットワークからのデータも利用できます。しかし、多くの保険会社は、引受条件のための統一された戦略を依然として採用しておらず、その代わりに、長期的な収益性よりも短期的な売上を目的とした、一貫性のない高コストの、例外的な処理を選んでいます。
重要なことは、全社的な効率性とスピードであり、それらの競争上の優位性を実現するには、まずは保険会社の特定のアンダーライティング業務の背後にある業務ルールの見直しが必要です。そして最も効果的であるためには、業務間での一貫性を確保するための集中化や、顧客、代理店、およびビジネス・パートナーとの迅速かつコスト効率の高いコラボレーションを実現するための外部化が必要です。しかしながら、それらの業務ルールは多くの場合、保険会社の情報技術(IT)インフラストラクチャーのビジネス・ロジックに組み込まれています。
集中化と外部化を実現する最適な方法の1つとして、ITインフラストラクチャーをStraight-Through Processing(STP)を中心に作りこむ方法があります。STPは、アンダーライティングにおける意思決定を、より迅速かつ統制のとれた形で行えるよう「適切な情報」を「適切な時」に提供するためのものです。事務作業およびアンダーライティングの戦略の一環としてSTPを採用した保険会社の多くは、ロスレシオの劇的な低減を発表しています。これは主として、リスクの分類能力とビジネス全体にわたり一貫したアンダーライティングにおける意思決定を行う能力が向上したことによります。
実際、収益の持続と最適化を目標とする個人向けの保険商品を扱う保険会社にとって、STPは、顧客の効果的な区分とともに、実質的な市場への参加条件となっています。大手の保険会社は、有益な意思決定モデルを構築するために自社のプロセス、顧客、および市場のデータの調査を可能にする予測分析によって、差別化を図るようになっています。
分離
ほとんどの保険会社のITアーキテクチャーを見ると、おそらく分析と業務が分離されていると思われます。これは、コストおよびプロセス効率の妨げとなり、市場の変化への迅速な対応において保険会社を脆弱にすると考えられます。アンダーライティング領域では特に、ほとんどの業務がルールベースとなっており、また例外によって管理されています。予測分析、顧客の区分、およびテクノロジーのコラボレーションを活用し、より鋭く迅速なアンダーライティングとリスクに対する値付けに基づき、より収益性の高いビジネスを識別し獲得する方が賢明と言えます。
利益が上がっている(あるいは上がっていない)分野の把握に役立つよう、即応性のある柔軟で包括的な機能へとアンダーライティングを変革するには、保険会社はビジネスの進め方の変革を目的とした全面的なステップを踏む必要があります。
まず、アンダーライティングプロセスを見直し、例外処理の手順を簡素化するためのモデルを構築します。次に、リスクに基づく価格設定シナリオの迅速なテストを可能にする予測モデル・ツールを使用し、ターゲットとなるプロフィット・センターと顧客層に狙いを定めます。顧客と市場の区分を活用して、収益性の高いビジネスに的を絞り、特定のアンダーライティングの特徴に基づきリスクの価格設定を行うことが狙いです。
それと同時に、ルール化技術を導入し、日常的なアンダーライティングにおける意思決定を自動化する一方で、マニュアル手順は、アンダーライティングのための標準化されたインテリジェント・ワークプレース・アプリケーションによってガイドされます。
ルールベースのシステムによって、契約申込書の提出を簡素化することもできます。プロセスには、新規または更改の顧客の特定、自動化されたレポート生成、最適なアンダーライター(引受決定者)への申込書の転送などが含まれます。
また、質の高い顧客データの探索と分析を行い、非中核業務の支援のために選んだビジネス・パートナーとそれを共有したり、さらに今までにない新しい保険商品を作ったりすることにも、システムの使用が推奨されます。保険会社は規制上の義務を満たす透明性のレベルを実現できるようなアンダーライティングに関する全体的な取り扱い体制を整えるべきです。
ミドルウェアが適役
このような透明性を実現するために、保険会社は関連するビジネス事象の定義を目的とした適切なミドルウェア・テクノロジーの導入を検討することができます。これらは、最も必要な場所と時間に、重要な情報の公表の引き金となります。そのミドルウェアは、次の5つの主要なアンダーライティングプロセスのための、コスト効率が高く、対応の早い、ルールベースのアプローチの創造にも活用できます。
- 申込書の提出と受け取りの自動化による、新規および更改の紙の事務処理の簡素化とデータの再入力の削減
- おなじみのアンダーライティング業務処理のための、STPによる軽減または排除
- アンダーライター(引受決定者)のワークステーションの統合による、情報の整理および申込書、関係書類、およびワークフローへの全社的な可視性の実現
- 例外事例を明らかにする自動化されたビジネス・プロセスを通した、スキルのある人材の有効活用
- アンダーライティング業務担当者に対し、すべての関連文書をリアルタイムで電子的に提供
実際、どの保険会社においても、収益性が維持できるかはアンダーライティングプロセスにかかっています。競争力を実現するためには、アンダーライティングプロセスは、保険会社の全体的な目標と包括的にリンクされている必要があります。このような統合を可能にする唯一とも言える現実的な方法は、顧客履歴の個別設定、申込書データの検証、ワークフローの管理、レポート生成の起動、アンダーライティングプロセスの一部の側面のコスト効率の良い自動化などを同時に実現する、一貫性がありながら柔軟なプロセスとテクノロジーを使用する方法です。 過度に加速化された今日のグローバル・ビジネス環境において保険会社が知的に成長するには、これが最善策かもしれません。
著者について
Cindy DeArmond
IBMグローバル・ビジネス・サービス,保険業界プラクティス、アソシエイト・パートナー
Cindyは損害保険業界で15年間の経験があり、この8年間は契約管理およびアンダーライティング業務ソリューションの構築に携わる。
Charles Mauney
IBMグローバル・ビジネス・サービス,コア・インシュアランス・ビジネス・ソリューション、プロフェッショナル
損害保険業界で13年の経験を持つ。
【参考文献】
*1 タワー・グループ 保険業界の展望: ビジネス戦略およびIT支出の最新動向、2006年3月、参照番号V46:291B
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