掲載月:2007年12月
金融機関の決済システムは、長い間大量データの高速処理と、お客様に信頼される安定稼働を最優先に開発/運用されてきました。一方で、決済手段と提供サービスとして見ると、この30年以上にわたって大きな変革はなかったという見方もできます。
現行の決済システムの問題点をまとめてみると、金融機関の合併統合や、新規業務・接続先追加への対応の結果として、以下の問題が挙げられるのではないでしょうか?
- 重複したデータのコピーがあちらこちらに散在
- 保守メンテナンスや必要なテストの費用が大きい
- 追加開発に時間と手間を要し、小規模な変更にも大きなコストがかかる など
決済システムに求められる即応性や柔軟性

図1 IBMがご提供する
EPPとは
IBMは、予想される取引量のさらなる増加に対応するだけでなく、業務・システムの効率化を幅広く実現し、今後の新規業務にも柔軟に対応可能な決済システムが早急に必要になると考えます。
こういった決済システムのあるべき姿としては、
- 関連する行内/外部のシステムとスムーズに接続
- 保守、追加開発、テストの負荷を軽減
- 現行システムの良いところを継承
- 人手によるチェックや補正を極力削減
- 稼働までの開発期間を短期化
- 段階的な更改/導入が可能
というシステムが考えられ、この「あるべき姿」の実現のために、IBMは以下のような複数の観点から検討を行いました。
- 銀行業界の将来にわたる姿
- 行内全体にわたるビジネス・モデル分析手法活用
- 世界各地での決済システムのコンサルティング/構築プロジェクトの実績
- お客様が利用中の各決済業務アプリケーションとの連携
一方、コンピューター技術の進歩と成果を踏まえ、今後の決済システムにおいては、「サービス化されたシステム構造」(SOA : サービス指向アーキテクチャー)の採用により、上記の要件を満たすような柔軟なシステム構造が実現可能になると考えています。
このSOA基盤の、決済業務への適用を実現するソリューションとして、IBMが金融機関にご提案/導入を進めているのが、Enterprise Payments Platform(以下、EPP)です。いくつもの決済関連システムを効率的に再配置/接続する点ではハブの進歩した形と見ることもできます。
SOA基盤による決済業務システムの実現へ

図2 EPPの構成
これまでにもデータハブ、メッセージハブを実現したシステムはありましたが、EPPは、内部に独立したフォーマットによるメッセージ管理機能を持ち、決済メッセージにかかるフロー制御、ステータス管理機能も一元化/共通化して実現している点が大きく異なります。
EPPにより、従来個別のシステムで担当していた外部決済システム(SWIFT[Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication]、全銀や日銀ネットなど)に適合するためのフォーマット変換はEPPで担当することになり、個々のシステムはEPPとの接続だけを考慮すればよいことになります。同様に外部決済システムにおける、フォーマットなどの仕様変更に対しても、主にEPPで対応すればよく、金融機関内の関連する個別システムには大きな影響が及ばないことになります。このように、IBMはEPPによって、SOAのメリットを決済業務システムで実現し、現行システムへの影響を極力抑えるような、次世代決済基盤(Payments Framework)を提唱しています。その特徴は以下のとおりです。
- システム内部の標準データ・フォーマットをUNIFI(ISO20022)に準拠したものに定義し、SWIFTなど標準的なメッセージ・フォーマットとの双方向の変換を実現
- 決済に特化した統合プラットフォームにより、既存+新規の決済アプリケーションやサービスを管理
- 決済のライフサイクルを管理し、複数の決済アプリケーションやモジュールをまたがった決済処理フローの一元管理が可能
- 決済プロセスの迅速な構築、統合、修正を可能にする広範囲な要素技術・実装成果を組み合わせてご提供
- 個々のモジュールは、IBMの各種ミドルウェア製品およびそれらを活用したデータモデル、内部標準フォーマット、フロー手順などから構成
また、海外における導入・稼働事例も豊富にあります。
[米国A銀行]
多くの米銀同様、統合/合併の結果、決済業務が多くのシステムに分散し、管理上問題となっていました。このお客様は20以上ある送金関連システムからのデータを一元管理し、数ヵ所に導入済みのアンチ・マネー・ロンダリング・システムを統合し、決済手段として3つの外部決済システムに接続するなど、全行的な決済システムの再編成にEPPを活用されました。
導入に当たっては、従来に比べてはるかに短期間での段階的なシステムの統合を実現されています。
[北欧B銀行]
Single Euro Payment Area(SEPA)対応、統一的なコンプライアンス・チェック、SWIFTの法人接続などをEPPの導入によって実現されています。
同時に、SWIFT電文の大量高速処理(100,000件/1時間)も実証に成功しました。
日本の金融機関での適用例(案)のご紹介
EPPは上記の例のように、海外の先進的な銀行では、システムとデータの統合、SEPAフォーマットへの対応などをキーワードに着々とお客様での稼働実績を積み上げており、日本の金融機関の固有業務での適応案は次のように考えています。
- 6次全銀において、送金取引の金額などにより柔軟に送金経路を選択するような業務機能
送金金額や緊急度、手元残高などいくつかの条件によって、動的に送金経路を選択するような機能が実現可能と考えています。 - 近々実現すると見られる、電子債権記録機関と行内のシステムを接続し、融資、預金などの複数の関連システムとのデータ連携を実現する機能
電子手形の譲渡、期日決済など新規に定義される業務データの流れをコントロールし、自動処理とマニュアル処理を統合するような業務機能を比較的短期間で開発可能と考えます。
IBMでは今後も、決済エリアにおいて、お客様のイノベーションをいくつもの側面からご支援するソリューションを提供していきます。
本事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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