掲載月 : 2008年12月
世界的な金融危機の中でもオプションの取引量は増加傾向にあると言われています。傾向として、今までOver The Counter(OTC : カウンター越し)で行われていたトレーディグや複雑で高度なデリバティブのトレーディングが、さまざまなリスクを回避するために開かれた市場と単純なオプションのトレーディングに戻ってきているということです。また、このような透明性を持った市場とは別に、補完的な役割のダークプールの発達もしており、多様な「場」で行われるトレーディングをいかに網羅的に把握して、全体のリスクを管理しながら利益を最大化するかがポイントになっています。これらの傾向はトレーディングを支えるITインフラに以下のインパクトを与えます。
- データ量の増加
- スループットの増加
- レイテンシーの低下
- データの閲覧性・透明性の増加
これらは今までもこのようなインフラに求められてきた内容ですが、金融危機により、お客様や監督官庁、市場などからリスク管理のさらなる徹底を求められ、データの閲覧性と透明性の確保が重要になってきています。
計算能力の追求からデータ管理能力の追求へ
2000年の.com(ドットコム)バブル崩壊から復活・成長してきたトレーディング系システムは、市場の電子化や複雑化するデリバティブのプライシングのために、より多くの計算能力を求め、グリッド・コン
ピューティングを用いることで解決してきました。
経済の拡張に伴いこれらのグリッド環境も拡張を続け、欧米の金融機関では1万CPU規模を超えるグリッドも珍しくありません。これらのグリッドは基本的に同タイプの1Uやブレード型のIAサーバーをグリッド・ミドルウェアで1つのシステムに仮想化したものです。しかし規模が1万CPUを超えてくるとサーバー数も数千台になり、電力・廃熱・スペースなどのランニング・コストは増大し、ミドルウェアや通信のオーバーヘッドも無視できない状況になります。このままリニアに台数を増やすのではなくアプリケーションに応じてIAサーバー以外にも適切なサーバーやCPUを選択し、グリッドを従来のクラスター的なものからヘテロな真のグリッド環境を目指すように、パラダイムが大きく変化しています。
昨今の金融危機下でもトレーディング系システムにおいて計算能力が重要であることに変わりはありませんが、グリッドにより広範囲に分散化されたシステムと多様な取引の「場」の台頭で、それらのシステム間で一貫した視点を作る重要性が増しています。さらに金融危機によるリスク管理の強化のためにもデータ管理が重要になってきています。
一般的にグリッドのような分散システムではデータを移動するコストが一番かかります。特に金融機関のトレーディング系システムで用いられる大規模なグリッドでは、データの発生・移動・消費が常に行われ、ネットワークやミドルウェアなどでの考慮が必要になります。
データは管理の容易性を考えると1カ所で集中管理した方が楽ですが、スケーラビリティーやアクセス性能に限界があります。逆にアクセス性能やスケーラビリティーを確保しようとすると、管理の容易性や検索機能などに限界が生じます。この相反性の両立を目指すのがこれからのトレーディング系システムの主題と言えます。
データ管理ソリューション・マトリックス

図1.
データ・ソリューション
・マトリックス
データ管理のソリューションを大きくスケーラビリティーとパフォーマンスという2つの軸で見ると、あるマトリックスが出来上がります[図1]。
Relational® DataBase Management System(RDBMS)を基本に据えた時にパフォーマンスを求めるとインメモリー型、スケーラビリティーを求めると並列型、というDBMSソリューションがあります。また両方を求めると構造型のRDBMSだと限界が生じるため、一般的にデータ・グリッドと呼ばれる非構造(オブジェクト)型の並列型メモリー・キャッシュのソリューションがあります。それぞれのソリューションは閲覧性、スケーラビリティー、パフォーマンスに特徴があり、1つのソリューションがすべての要件を満たせるわけではありません。計算用グリッドが一様なIAサーバーの利用からアプリケーションごとに最適なサーバーを選択するようになった経緯と同様に、データ管理も要件に応じてソリューションを組み合わせる適材適所の考え方が重要と言えます。
次世代トレーディング系システムのデータ要件
人間の脳は記憶域を短期・中期・長期と保持期間に応じて分けていて、それぞれ脳の異なる部分が異なる仕組みで担当しています。短期記憶は情報の鮮度が重要であり、長期記憶は情報の因果関係が重要であると、それぞれに求められる機能が異なるからです。
トレーディング系システムに求められるデータ管理の要件は主に以下の3点があります。
- 速報性と同報性―マーケット・データ(市場データ)
- 閲覧性と関連性―ディライブド・データ(派生データ)
- 永続性と堅牢性―リファレンス・データ(参照データ)

図2.
トレーディング系システムの
データ特性 (376KB)
上に行くほどデータの鮮度や共有が重要であり、下に行くほどデータの関連性や管理容易性が重要になる構図は人間の記憶と似ています。それぞれの要件を最適な条件で満たすためにはそれぞれ異なるソリューションが必要になりますが、真に重要なのは各ソリューションの連携です。
[図2]のようにデータが発生したら鮮度が高いうちに必要なアプリケーションに渡り、実際にトレードが完了したらディライブド・データとして加工・関連付けがされ、後日ストレス・テストや新しい金融モデル・アルゴリズムの開発など、さまざまなシーンで再利用されます。さらに法の要請などに基づき必要に応じてリファレンス用として改ざんや紛失がないように長期保存されます。データのライフサイクルを管理するというInformation Lifecycle Management(ILM)の考え方と各ライフサイクルにおけるデータ管理ソリューションの選択と最適化、この横と縦の連携を実現するのが次世代トレーディング系システムの要になります。
IBMは、さまざまな要件を満たすデータ管理ソリューションを持ち、それらを高度に連携させるサービスのご提供を通じて、お客様の成功に貢献してまいります。
本事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
IBM, IBMロゴ, DB2, SolidDBは、International Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標。
Microsoft および Windowsは Microsoft Corporationの米国およびその他の国における商標。
Adobe, Adobeロゴは、Adobe Systems Incorporatedの米国およびその他の国における登録商標または商標。
UNIXはThe Open Groupの米国およびその他の国における登録商標。
Linuxは、Linus Torvaldsの米国およびその他の国における商標。
他の会社名、製品名およびサービス名等はそれぞれ各社の商標。
