掲載月 : 2008年12月
株式会社 八十二銀行(以下、八十二銀行)は、お客様にとって真のベストバンクとなり、厳しい環境の中でも勝ち残れる銀行への進化を目指しています。現行システムの課題を解決するために、ホストおよび分散系のアーキテクチャーの再整理に着手し、現在、ESB(エンタープライズ・サービス・バス)構築・共通化【業務/システム/連携】、既存システムの有効活用【チャネル統合】、融資稟議(りんぎ)の高度化に取り組んでいます。SOA(サービス指向アーキテクチャー)を活用することで、共同化グループ「じゅうだん会※」へのシステム提供範囲の拡大、業務の可視化、既存資産の有効活用、システム間連携の効率化など、将来に向けてさまざまな効果が上がっています。
広範囲のシステム共同化を目指して
「健全経営を堅持し、もって地域社会の発展に寄与する」を経営理念とする八十二銀行は、長野県内を中心に質の高い金融サービスを提供するとともに、「じゅうだん会」の幹事行としてシステムの開発や安定的な維持・保守など、共同化の効果の追求に向けた取り組みを続けています。
じゅうだん会の特徴は、八十二銀行が開発した基幹系システムを中心にシステム開発を銀行主導で行っていること。「銀行の競争力は、事務処理やシステムの独自性ではなく、その上でどう仕事するかにある」という考え方のもと、取扱商品やサービス、行内事務処理手続きまで共通化を図ることを方針に据え、八十二銀行が開発した(今後開発するものを含む)すべてのシステムを対象に、可能な限り広範囲の共同化を目指しています。
カスタマイズ割合の増加と共同化未対応領域の拡大傾向
2002年に稼働を開始したこの共同版システムですが、年月がたつにつれ、組織体制の違いや、共通化できない業務手順・帳票の使用方法の違いなどで共同化領域でのカスタマイズ割合が増大してきました。また、各行の分散系システムの違いによるインターフェースの相違や保有データ項目の不整合なども目立ってきたことに加え、共同化未対応のシステムが拡大傾向にあります。
これらの課題に対応するため、八十二銀行ではホストおよび分散系アーキテクチャーを再度整理することにしました。増加傾向にある分散系システムとホストとのインターフェース部分のカスタマイズを抑制・解消すること、共同化未対応の領域の縮小と、分散系システムのサーバー統合などが検討課題となりました。
八十二銀行システム部副部長の佐藤宏昭氏は、結論はまだ出ていないとしながらも、共同版システムの将来の方向性として、次の点を挙げています。
- 共同版システム(基幹系システム)は今後も継続利用
- 共同版システムと分散系システムの間で新しいアーキテクチャーを介して自由度の高い連携を実現する(SOA/ESB)
- 最適な投資で柔軟に接続可能なチャネル統合基盤を構築する
- じゅうだん会各行の差異を分散系システムのサーバー統合により柔軟に吸収し、投資の最適化を図る
SOAによる基盤整備と業務の展開
現在、八十二銀行はESBによるオープンな接続性および開発手法の確立を実施しながら、これらの基盤上にある業務の整理に取り組んでいます。SOAの構造は、じゅうだん会各行個別の要望に柔軟に応えていくことを考慮しています。
【既存システムの有効活用】
約20年前に構築された基幹システムを、ラッピング技術を用いてSOAのサービサーとして活用する予定です。
【ESB構築・共通サービス化】
ESBを導入することにより、接続の容易性を確保するとともに、共通業務をサービス化して、複数システムから利用可能な基盤として整備します。具体的には、顧客情報照会、財務分析などの共通機能や印刷レイアウトのようなシステム機能などをサービス化し、ESBを経由してSOAベースの相互連携を実現する予定です。
【チャネル統合】
従来は155店舗に設置していた350台の営業店端末のサーバーを4台のチャネル統合サーバーに集約。システムの安定稼働やセキュリティーの向上を目指します。ATMゲートウェイについても、ATMネットワークのTCP/IP化に合わせて、同様にチャネル統合サーバー基盤上に集約予定です。
【融資稟議の高度化】
融資稟議の仕掛けは、Business Process Execution Language(BPEL)を利用したダイナミックな連携を実現しています。従来は基幹システムを利用して稟議データを本部へ送るかたちで実現していましたが、本格的にワークフローを導入。支店の体制や決裁権限の変更などに合わせた回付先や合議先の変更に柔軟に対応できる仕組みをつくっています。
【SOA活用への開発手法の確立】
開発手法は、IBMのSOAソリューションを構築するための開発方法論である「Rational Unified Process® for SOA」をベースとして、自行の開発形態に合った開発成果物と開発工程を独自に定義しています。

図.共同化範囲の拡大
(483KB)
以上の取り組みの結果、従来の既存ホスト・システムの共同化の領域が、分散系を含めた領域に拡大することになります[図]。
今後、営業支援、業務支援についても共同化参加行が容易に導入可能な環境を整えていく予定です。
将来につながるSOA活用のメリット
SOA活用のメリットとして、八十二銀行が挙げているのは、次の5点です。
- じゅうだん会各行へのシステム提供範囲が広がること
- SOA化に取り組む過程で業務分析を行う結果、業務の可視化、あるいはボトルネックの把握ができること
- 従来の個別ゲートウェイによるメッシュ型の連携に比べて、システム間連携がはるかに効率化できること
- 既存のシステム資産を有効に活用できること
- 従来型の開発よりも開発期間の短縮が図れること
基幹システムの開発においては、将来にわたって使用可能な部分をSOAの考え方でサービスとして有効活用することが可能です。一方、先進技術を導入したいフロント・システムやインターネット・バンキングなどはApplication Service Provider(ASP)の利用が進んでおり、それぞれの事業者との連携にも有効です。共同化の領域では、新規開発する業務をSOAベースで構築しておけば、参加行が利用するしないを柔軟に選択できる、ということもメリットになります。

八十二銀行
システム部副部長
佐藤 宏昭氏
「個別ゲートウェイによる接続はできていましたが、なかなかスピード感や開発コストなどは満足いくものがありませんでした。しかし、今回のSOA/ESBあるいはチャネル部分でのチャネル統合サーバー基盤により、問題が解決できるのではないかと考え、取り組みを開始しました」と佐藤氏。
「今後は事務の業務改革を進めるとともに、行内に存在する多数の業務システムのサーバーを仮想化技術で統合し、運用負荷の削減や、障害対策のレベルを高めたい。また、環境問題に積極的に取り組んでいる八十二銀行としてはシステムのグリーン化の推進もしていきたい」と抱負を語りました。
※じゅうだん会 八十二銀行が開発した基幹系システムを利用する銀行グループで、メンバーは八十二銀行のほかに、山形銀行、関東つくば銀行、武蔵野銀行、阿波銀行、宮崎銀行、琉球銀行から成る。
この7行が日本列島を縦断する仲間であるといった意味合いから、「じゅうだん会」と命名された。各行は共同化システムに順次移行しており、現在6行で稼働している。
※当記事は、2008年11月5日に「IMPACT AUTUMN 2008」で行われた講演内容を基に作成したものです。
本事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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