掲載月 : 2009年12月
企業の「コスト削減」がうまく進まない要因として、顧客に近いところから行っているケースが少なからず見られます。自社の利益構造を十分に把握しないまま「コスト削減」を行えば、減収・減益につながり悪循環に陥ってしまいます。これからは「勘と度胸の経営」ではなく、利益構造を透明化
し、リスクを最小限に抑え、小さくとも成功を積み重ねることが必要な時代になります。
ここでは保険業界の不変のテーマである経済性と迅速な対応に焦点をあて、収益管理、業務改善において即効性の高い手法を紹介し、さらにこの分析結果を活用した新しいオペレーション・モデルの確立を実現する具体策について説明します。
業務量を定量化し、利益構造を透明に

図 保険業界向けビジネス・プ
ロセス・マネジメント(I-BPM)
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IBMでは、業務オペレーションを最適化する施策「I-BPM(保険業界向けビジネス・プロセス・マネジメント)」を用いたコンサルティングを行っています。この手法は、まず営業、事務部門を対象に業務量調査を行い、これをデジタル化された数値で把握します。そしてこの数値を経営判断指標として活用し、収益管理あるいは業務改善を図っていくものです(図)。
まず、事務部門など、現場でのヒアリング調査などを通じて現状の業務量を把握します。一つひとつの活動が何を目的に行われ、1回当たり何分かかっているか、年間でその活動が何回発生しているか、これに事務担当者の時給を掛け合わせれば、活動ごとのコストを数値化できます。同時に、商品や特約ごとの事務コストを割り出すことも可能です。
例えば、「この商品はコストがかかっている割に、業績に貢献していない」といったことの可視化が可能となり、数値に基づくデジタルな経営判断ができるようになります。これにより、商品別の採算管理や特約、サービスの取捨選択などの適正な収益管理が実現できるようになります。既存の商品、特約、サービスの採算管理に加えて、新商品開発時のシミュレーションにも応用することができ、どれくらいの人数、プロセスが必要かなどを割り出す上でも役立てることができるでしょう。
役割分担を見直し、人材配置を最適化
さらにI-BPMの重要な側面の一つとして、業務改善に向けた役割分担の見直しがあります。
現状では、業務の難易度やリスクの程度とチェック者の職位(年次)などが整合していないケースが多くみられます。つまり、難しい業務を時給の安いスタッフや適切でない職位レベルが担当していることがあり、その逆のケースも多々あるのです。その場合、職場のモチベーション管理も容易ではありません。
専門性が求められるような難しい業務はベテランが担当するといった本来の形に改めれば、ミスを減らして事務品質の向上を図ることができます。また、業務の難易度に応じた適切な人材を配置することでトータルでの人件費を5~10%程度圧縮することが可能です。これは、要求レベルを相当上回る高いスキルを持つ人材の多くが事務部門に配置されているからです。
こうして事務部門のリソースを適正化した上で、適切な人材を営業部門などに配置転換するケースも多く見られます。組織の効率性を高め、売上増に向けた布石を打つ上でI-BPMは、即効性の高い、実践的なアプローチと言えます。こういった作業を自力で行うお客様も多いのですが、半年~1年など長期間を費やしてしまうというのが課題です。アイ・ビー・エムビジネスコンサルティングサービス株式会社(IBCS)には、バリューチェーンの定義、活動分類・分析のためのテンプレートなど、約10年かけて蓄積されてきたノウハウがあります。これに基づき、3カ月程度で一定の効果が期待できます。従来の「この業務は作業負荷がかかる」などの感覚的な不満や視点による業務改善ではなく、業務量をデジタルに数値化して表すことができることから、ボトムアップで業務量を調査して改善を促し、経営側がこの結果を見てアクションプランを考えるという、現場と経営サイドが合わさることも大きなメリットと言えます。
小さな成功からスタートし、オペレーションの最適化を実現
この手法を活用したプロジェクトを開始するにあたっては、あらかじめ、どこまでの業務範囲を対象にするかなど、程度や範囲を定めるのが第一の関門となります。
さまざまな面での変革が求められている保険会社のお客様にとっては、まずは小さな投資で小さな成功を着実に手に入れていただくことが重要だと思われます。一つの成功の経験が組織の文化に好影響を与え、変革への意識を育てます。そして保険会社の社員は、より重要で専門性の高い業務に集中することが可能になります。
上述の変革をさらに抜本的に行うのがIOF(Insurance Operations of the Future)という、IBCSが提唱する事務プロセスのフレームワークとソリューションです。
IOFは、これまで新契約や保全、保険金支払といったビジネスラインごとに進められてきた事務プロセスをまとめて、入力管理からワークフロー、出力管理までエンド・ツー・エンドでカバーする仕組みです。これにより、業務の属人性を最小限に抑えることが可能となり、ミスの防止や効率向上の実現だけでなく、一連の業務プロセスの可視化も同時に実現します。IBMでは、今後さらなるシステム化が求められる保険事務プロセスにおいて、コンサルティングと実装を既に提供開始しています。
数年前までなら、保険業界はときどきマイナーチェンジすることで時代に対応できたかもしれません。しかし今、変革の能力はスタンダードとして求められており、各保険会社にはその能力を組織に埋め込む努力が必要です。一過性の変革なら、コンサルタントに依頼するのも合理的な判断でしょう。ただ、業務プロセスの変革などは継続的に行うべきものです。繰り返し実行される類の変革についての能力は自社内で育てる必要があります。
例えば、I-BPMの手法はかなり高度なスキルを要するため、そのノウハウを一般の企業が習得するのは難しいところがあります。そこで、一度コンサルティングを受けた後で自社内だけでPDCAサイクルを回せるような支援ツールも開発しており、これを変革のDNAとして組織に埋め込むために活用することができます。こうした提案活動を通じてIBMは、保険会社のチェンジ・マネジメントそのものをご支援しています。
掲載されている情報は2009年12月現在のものです。内容は事前の予告なしに変更する場合があります。
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