掲載月 : 2010年12月
世界的な金融危機をきっかけに、先進国の金融当局が中心となった規制の見直しが進められ、2018年にかけて段階的に新たな規制の枠組みの導入が計画されています。
金融機関は今後、リスク管理態勢の高度化が求められますが、規制要件への対応だけでなく、経営に資する情報を収集・分析・管理していくIT基盤の整備が重要だとIBMは考えます。
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リスク管理規制の強化と金融機関の経営への影響
提案されている規制の内容を簡単に振り返ると、バーゼル銀行監督委員会では、まず銀行セクターの強靱性を高めることを目的として、自己資本の質の強化やリスク捕捉の強化などを提案すると同時に、「流動性リスク管理規制」の強化を公表しています。
従来は流動性リスクというと市場流動性の意味合いが強かったのですが、2008年の金融危機以降、重要なリスク管理の要素として、資金流動性管理を強化する必要性が顕著となりました。
これはバーゼル
では重視されていなかった分野であり、今後は流動性カバレッジ比率(Liquidity Coverage Ratio、以下LCR)と安定調達比率(Net Stable Funding Ratio、以下NSFR)という2つの指標を開示・報告をしていくことが求められます。
LCR計測の目的は、流動性需要に対応できる高品質の流動資産を、短期間(30日間)のストレス状態下であっても保持していることを証明することです。そのためには、資産や負債、オフバランスなど、金融機関内のあらゆるところに散在している多岐にわたる経営情報をタイムリーに収集、検証し、報告する必要があります。
また、NSFRについては、向こう1年に必要となる資金需要と現在利用可能な調達手段のミスマッチを抑制し、安定的な調達能力があることの証明が求められます。算出に必要な情報の多くは、LCRと重複しますが、計測期間の基準が1年であり、中長期にどのような資金の需要があるのかを予測するために、より長期のキャッシュフロー生成が必要となります。
このように、今回の流動性規制の強化は、金融機関の中で情報を集め、分析し、それを報告としてまとめていくような仕組み、あるいは体制強化の必要性が求められていると言うことができます。
従来のリスク管理の課題 リスク情報の収集、分析、報告の一元管理化
次にリスク管理における今後の対応として、業務情報とシステムの視点で課題を検討してみます。
業務情報の視点
各部門、あるいは事業部により、発生するリスク情報の鮮度や粒度、精度がまちまちであることが多い。特に大規模金融機関では、国内のみならず海外部門や関連会社など、発生する情報を全社横断的な視点で俯瞰することが困難である。
システムの視点

図1 リスク管理情報統合の
必要性 (501KB)
リスク管理に必要なデータが、多種多様なシステム上に手作業で蓄積・管理されており、データの形態が不統一なために統合して分析する障害となっている。先行きの予測を含む分析をタイムリーに行い、内部管理水準を高めるためには、データ収集の効率化に加え、キー体系の統一化や欠損データの補正などを経て、信頼性の高いデータベースを構築しなければならない(図1)。
ここで重要なポイントは、既存のシステムを全部入れ替えるという検討をすることではなく、リスク管理に必要な一元化された統合的な情報格納庫を定義し、フロントの情報や個別のリスク管理システムの情報などを標準化し、必要なところは補正するプロセスを構築して、リスク管理者や経営者がすぐに把握できる仕組みを確立するということです。
IBMが考える統合リスク管理のフレームワーク「Integrated Risk Management(IRM)」
では、具体的にどのようにこの「仕組み」を構築していけばよいかをご紹介します。IBMは、お客様に管理体系のグランドデザインを描いていただくために、あるべきリスク管理の体制・プロセス・ITなど、機能コンポーネントを定義した統合リスク管理のフレームワーク「Integrated Risk Management(IRM)」を活用して、機能要件を整理することを提唱しています。
このフレームワークの目的は、単に規制強化への対応だけでなく、本質的に金融機関の内部管理としていかにリスク管理態勢を高度化していくべきかという点に軸足を置き、現状分析と今後の課題を導き出し、プロジェクト計画を策定することです。
IRM概要

図2 IBMの考えるリスク管理
のフレームワーク(Integrated
Risk Management) (730KB)
IRMは、データ収集と蓄積、分析と最適化されたリスク計測、そして、レポーティングとビジネス・プロセスに関するフィードバックのアウトプットという3つのコンポーネントから成るエンド・ツー・エンドのフレームワークです(図2)。
簡単に流れをたどると、データ収集と蓄積の役割は各金融機関が持つデータ源(図2、0)からデータを抽出して必要な形に変換(1b)し、データマートまたはデータウェアハウスを構築(1a)します。 次に、それらデータを活用するために、分析・最適化を行う計算エンジンの機能(2)が定義されています。そして最後が業務へのフィードバック(3b)と、内外へのレポーティングを行うアウトプットの役割を担うコンポーネント(3a)です。このフレームワークに具体的な機能や要件を定義して、必要なシステムや人的手当てを考え、目標とするリスク管理ソリューションとしてとらえていきます。
システムとして大事な点はまず、信頼性の高いデータを維持するため、完全性や正確性が保証されたデータをリスク分析のための一元的なソースとして蓄積する仕組みが必要だということ。また、多様化したリスク分析に対応するために、実績のあるパートナーのソリューションとIBMの技術を融合させシームレスなユーザー・インターフェースを提供すること。そしてアウトプットのところでは当局または経営者に対し、できるだけ柔軟なレポートを作成できる機能が必要です。このようなシステムでは、リスク管理情報や分析機能を統合することで付加価値の高いデータ活用を進めると同時に、データの二重管理や整合性のチェックなどの負担軽減の効果をねらっています。
すでに、欧州の金融機関では、IRMのフレームワークの一部を使ったシステム構築事例があります。英国FSA(Financial Services Authority)の流動性リスク管理規制に迅速に対応するために、自前でシステム構築をするのではなく、必要なツール類に実績のあるパッケージを採用し、データ収集・蓄積機能、および加工・分析機能を実装しています。
まとめ
リスク管理は非常に範囲が広く、ほとんどの金融機関はすでに何らかのシステムを構築されているため、部分的にデータベースを拡張したい、あるいはリスク分析を高度化したいといった追加的なご要望が多いと思います。IBMでは、コンサルティング・サービスからシステム構築まで、データベース構築からレポーティング・ツールの導入まで、ご要望に応じた組み合わせで、リスク管理サービス・ソリューション(図2、1~3)をご提供します。
特にコンサルティング・サービスでは、前述のIRMフレームワークに則って、リスク管理の高度化を検討している金融機関に対して、プロセスや組織、システムの機能や要件、投資範囲を見極めるためのコンサルティングを実施させていただいています。
このために、グローバルに展開するIBMのリスク管理サポートチームがご支援した先進的なプロジェクトでの知見・ノウハウを、有形無形のアセットとして共有化しており、お客様への付加価値の早期実現に役立てています。
掲載されている情報は2010年12月現在のものです。内容は事前の予告なしに変更する場合があります。
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